四章 聴取―3―
それから二分ほどしてようやく出てきたのが赤羽裕である。赤羽裕はポケットに手を突っ込んだまま、土手を降りてくると、紗綾達の姿を見つけてここまで聞こえるくらいの舌打ちをした。
「赤羽さんですね」
「おい、何の用だよ。警察ごっこか」
なるほど、最初からいい印象はない。
「ま、そんなところです」
「だったらそれは警察に聞け。さっきもう話したから」
「そうですか……。それじゃあ、無理にいろんなことを聞くのはやめます。おっしゃる通り警察ごっこみたいなものですから」
「分かってんじゃん。じゃあもういいよな」
赤羽裕としては早々に切り上げたいようで、そう言いながら椅子から腰を浮かせている。周りで見ていた舞もこれには苦笑いせざるを得なかった。
「ああ、でも一つだけ聞かせてください」
「あ?」
「赤羽さん、ここに来るのは二度目だって凛さんからききましたけど、その時泊まったのって、ひょっとしてあの四号バンガローじゃないですか? そうでないにしても、昔起きた包帯男の事件について、何か知りませんかね?」
赤羽裕にとってこの質問は予想外だったらしい。ちょっと戸惑ったようで宙を仰いだ。
「ああ、前泊まったのはあのバンガローだよ。他と違って好き放題できるからな。凛は知らねぇだろうけど、そん時はそん時でだいぶ楽しませてもらったよ。だけどその噂は知らねぇ」
赤羽裕はそう言い捨てるとそのまま自身のバンガローへと戻って行った。
「ああいう絵にかいたような感じの悪い人間って本当に存在するんだね」
赤羽裕がバンガローに入るのを見届けると、舞の口から本音が漏れた。
「まあ、ああいう人もいるよ」
「でも凛さんもよくあんなのと一緒にいられると思わない?」
「そりゃ人の好みだから、私たちがどうのこうのいえる問題じゃないよ」
紗綾と舞がああだこうだ、他人の人間関係について言い合っていると、山中警部がやってきた。




