思い立ったが吉日
今更ですが、両方の原作を読んだ方がこの作品をお楽しみいただけます
「……まぁ、そりゃあ普通の冒険者な訳無いよな」
俺のスキル【神眼】を使えば障害物があろうがどこからでも見れるので、宿の中からハヤトを見ていた。
「服装が変わったかと思えば、あのチンピラ共が裸になったのには驚いたな。……向こうも俺を探してるみたいだし、出向いてみるか。」
宿から出て、ハヤト達の後を追った。
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追った、と恰好つけてみたが宿の前を二人が通りそうだったので、タイミングよく宿を出ただけである。
「さて、俺を探してるみたいだが何の用だ?」
「チヒロさん、えっとですね……そのこの世界の歪みを直したいんで、協力してくれませんか?」
「…………ちょっと時間をくれないか?三十秒でいい。」
ハヤトから申し訳なさそうに言われた。
まぁ、違和感はあった。いきなり服装が変わるなんてのは、この世界じゃ初めて見たし、なんか職がどうのこうの言っていたし。
俺だって元は日本人なんだし、ハヤトも日本人で二回目の異世界転移とかになってるんだろうな。んで転移して来た理由はこの世界が歪んでて、このアルカナ……でいいんだよな?んでアルカナは、直そうとしたけどハヤトだけじゃ無理そうだから俺のとこにきた。
大体こんなとこだろ。
「…………分かった。大体事情は理解した。引き受けよう。」
「え?本当ですか?」
「あぁ。」
「……物分かりがよくて助かるわ。」
一応、予想を話す。
「凄いっすね……日本人の時って何してたんですか……?」
「六大学の四年生だったなぁ……彼女の為にって料理作ってたらさ、俺死んじゃってさ。その死に様があんまりにも面白いもんだったらしくて、ここで人生やり直せることになった。……ま、それが世界を救えるきっかけなんだ。まさか『世界を救う』なんて馬鹿げた夢が叶うなんて思いもしなかったよ。」
「……凄いですね……俺の話は聞きます?」
「いや、いい。大体アルカナが絡んでるんだろ?」
アルカナのほうを向いてそう言ったが、ハヤトのほうにプイっと顔を曲げた。
「……それじゃあ出発ね。」
「…………聞きたいんだが…………ハヤトは頼りになるのか?」
「大丈夫よ。これでも私が選んだ冒険者だから。」
「そうか。」
「あー!デレた!俺を認めてくれた!」
直後ハヤトに向かってアルカナが、思いっきり殴りかかった。
まぁ、寸止めだったが。
「何か言うことは?」
「調子に乗りました。すいません。」
「よろしい。」
なんとなく、同郷以外の理由で優しくしてやろうと思った。
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ハヤトとアルカナを掴んで空を飛んで、ダンジョンへと到着した。
「「「………………人が多い」」」
王都近くにできたダンジョンだけあって、冒険者が多い。
「アルカナどうするんだ?普通に入るのか?」
「いや、近くに大規模な集団で攻略しようとするグループがあるはずよ。その集団に混ざるわ。」
アルカナの言った通りで、冒険者が集まっていると思っていたところに、鎧を着ている一団がいた。
どうやら結構なところの騎士らしい。
「皆の者!是非聞いてほしい!私は王都から派遣された騎士、ウィルズ・ハイルだ!今回のダンジョン攻略の指揮を執ることになった!」
ここまでは、「なんだよ騎士が横取りしに来やがった」とか呟いていた。が、次の一言で誰一人そんなことは言わなくなった。
「最も活躍したものには褒章がでる!この場にいる全員が、全力を賭してダンジョン攻略に臨め!」
そして、周りにいる冒険者は一気にダンジョン攻略へとやる気を出した。
「準備はいいな!それでは、行くぞぉおおおおおおお!!」
「「「「「おおおおおおおおおおお!!!!!」」」」」
人数が三百人前後だが、ダンジョンの出入り口は横幅は4人分程しかなく、入るのに手間取っている冒険者もいた。
おおかた静かになったところで着地する。
「アルカナ、ここで間違いないんだな?」
「ええ。行きましょう。」
「チヒロさん?なんでさっきから俺には聞かないんです?ねぇ?ちょっと?」
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ダンジョン一階層
だだっ広い平野。地平線まで限りなく芝生が広がり、空を見上げると当然のように太陽が真上で輝いている。そんな爽やかな景色など心に留める間もなく、魔物が次々に襲い掛かって来る。
「切っても切っても切っても切っても!なんなんだこいつらぁ!!!」
大量の動物型魔物が、草原を埋め尽くす程に、というか埋め尽くしている。
魔物を倒しても魔石のみに変化するので、景観は血まみれの地獄とは化していない。
「こんだけの魔物は地獄絵図に決まってんだろうがああああああああ!!!!」
そんな風に叫ぶ大剣の使い手は、集団を飛び出し魔物を次々に切り伏せていく。だが、魔物は尽きることなく襲ってくる。
そしてそのうち、彼は疲れたのか魔物の中に埋もれて、姿を見せなくなった。
こうしてリタイアしていったのは五十人程度だった。
「〈特殊スキル〉詠唱省略ッッ!!!」
ハヤトは賢者に転職し、
空に巨大な魔方陣ができたかと思えば、その魔方陣から目を瞑ってもなお眩しい光が、轟音と共に魔物達に降り注ぐ。
「これでどうだぁああああああ!!!」
その光は、広範囲にわたって降り注ぎ魔物の数を一気に半分以下まで減らした。その結果、ハヤトの視界は地平線まで開けた。
地平線の向こうから魔物が来ていることに気付いたが、また別の事にも気づいていた。
「ん?あの辺だけ魔物がいない……?」
俺は、息を切らすことも無くただただ魔物が持っている剣を、奪っては投げ奪っては投げを繰り返している。
剣が飛ぶ方向にいる魔物は死ぬ。なんというか……ピーラーでジャガイモの皮をむいた時を想像してくれればいい。
「…………しかしゴブリンが多すぎるな。湧き出ているところから直接叩こう。」
そう思って、空を飛んでみると見渡すかぎりに魔物だった。ダンジョン入り口を背にしているから前方百八十度の地平線を見やる。
魔物はハヤトの頑張りもあって半分以下に減っていて、青い芝生がよく見えた。
地平線の彼方に、微かに魔物が見えない場所があった。
「蜃気楼じゃないことを祈って、あそこに賭けてみるか……。」
魔物が見えない所まで、色付きの障壁のトンネルを創る。
そして、魔物が気絶するように魔力を叩きつける。
「こっちを見てくれ!!戦闘を辞めて一旦こっちを見てくれ!!……出口だと思いたい場所まで、トンネルをつくった!できればトンネルを通って早く出口があるかを探してくれ!!」
結局トンネルを通って行ったのは、このダンジョンの攻略を指揮するらしい騎士と、その団員達と、その周りで戦ってた冒険者だけで、あとの冒険者ハヤトが倒した魔物の魔石を拾い集めていた。
魔石拾いの冒険者は無視して、トンネルを通った先にあった二層目へと降りる入口へと入っていった。