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無能と天才の終着点  作者: ゆい&ゆー
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002 恩恵、それは人を変える力

恩恵(ギフト)、それは生きる物全てに一つ与えられる不思議な力の事だ。これには数え切れない程存在し、効果も様々ある。

例えば......。


「その速度に最初に選ぶ行動が馬鹿みたいな真っ直ぐな突進となると......」


一気にエイジのすぐそこまで来た少年のエイジの顔目掛けて放たれたグーをきっちりと受け止める。自分の渾身の一撃をあっさりと受け止められた事が信じられないのか、目の前の男の顔が間抜けな顔になる。エイジはその隙を見逃さず、突っ込んできた少年の腹に蹴りを叩き込む。


「ぐはっ」


蹴りの衝撃は物理法則に従い、体をくの字にして吹っ飛んでいく。後ろに控えていた他の少年達は狭い路地で回避できず、ピン倒しのように飛んできたそいつらを巻き込まれて倒れる。


「うがあああぁ」


痛みに悶えながらゴロゴロと動く少年とその姿に狼狽える少年達にエイジはコツコツと歩み寄る。


「その様子だとやっぱ豪快って恩恵持ちなのかな?」

「な、なにっ」

「図星か?」


豪快は珍しくもなんともない普通の恩恵で、効果としては筋力の上昇と思い切りがよくなるという効果だ。

恩恵にはレア度と恩恵ランクというものがあり、


レア度1 どこにでも現れる特に取り立てる必要の無い普通の恩恵。

レア度2 レア度1の上位互換の恩恵。

レア度3 国に1人など現代に数名程度しかいない恩恵。

レア度4 過去の偉人達の持っていた恩恵。

レア度5 記録上存在しない未知の恩恵。


恩恵ランク1 全く使い物にならない恩恵。このランクの者を『無能力者』とバカにされる事がある。

恩恵ランク2 日常生活に役立つ程度の恩恵

恩恵ランク3 戦闘時に役立つ程度の恩恵

恩恵ランク4 その恩恵がないと街や国が回らなくなるような必須となる恩恵

恩恵ランク5 人類に必要な恩恵


という風に分類される。この突っ込んできた少年の豪快ならレア度1 恩恵ランク3に分類される。


(全く面倒だな......)


改めて倒れている少年達を観察する。

恩恵は15歳から16歳の間に与えられるので少なくともエイジに攻撃を仕掛けた少年は15歳以上ということになる。周りの奴らも同年代だと思われる。服装はいかにも街の住人と言った感じで良くも悪くもないので、この街に住む平民だろう。


......特に問題は無さそうだ。


「で? 女の子1人に寄って集って集団で追い詰めるとか何して......」

「このっ!」


エイジが言い終わる前に後ろの方にいた少年が立ち上がってエイジに石を投げる。その速度は凄まじく、ビュウッと空気を斬るような音が聞こえた。恐らく顔、いや目を狙ったのだろう。石は真っ直ぐにエイジに飛んでいくが、


「ほい」


何をされたのか悟った瞬間にエイジは顔を横にずらし、剛速球を綺麗に躱す。石を投げた少年の「え?」って顔が面白い。


「お、お前何者だよ!」

「こ、こいつ冒険なんかよりよっぽどやばい恩恵持ちだ!」

「やべぇ奴に遭っちまったぞ」


自分達の恩恵が歯が立たない事を目の当たりにしてうろたえ始める。中には逃げ出そうとする者もいた。


「おい、人が話してる時に何してんだ? あぁ!?」

「「「......」」」


先程までのひょうひょうとした態度から一変、ドスの効いた声に何もしていないで騒いでいた少年が口を閉ざす。逃げ出したくても足が震えて動けないようだ。


「で? お前らは何してんだ?」


エイジが右手をグーにしてしゃがみ込むと素直にサラサラと話し出す。


なんでもこいつらはこの街のヤンキー的な困らせ者で日常的に旅人や弱そうな護衛をつけてない商人に絡んではお金をせしめているらしい。それを昨日、さっきの女の子のお姉さんが邪魔をしてこいつらを懲らしめたらしい。お姉さんはえらい強いらしく、挑んでも返り討ちに合うことが目に見えたので妹の方を標的にしたらしい。


「なにしてんだお前ら?」


エイジが呆れ半分、蔑み半分で呟く。あまりの馬鹿馬鹿しい話で逆に目の前の少年達のアホさに感心してしまう。


「あの!」

「はい? ってうわー」


後ろを振り向くと先ほどの女の子がエイジの方に走っていきその後ろには、


「よくも俺の子分を痛めつけてくれたなぁ! え?」


大柄の男が槍のような物を持ち、その後ろには何人もの男が立っていた。


(そういえば1人抜けていった奴がいたな)


よく見ると後ろの方に先程見かけた少年がいた。その少年はエイジの前に倒れ、震えている彼らを見て驚いていた。


エイジは女の子を庇うように自分の背中に移動させる。


「ほう? 女を庇うとはかっこいいねー」

「だろ? もっと褒めてもいいんだぞ?」


大柄の煽てを綺麗に返す。エイジのそんな態度に腹を立てたのか、槍を持つ手に力が入る。


「あーそれ出来れば使わない方がいいぞ?」

「あっ? ってそりゃ武器を見たらびびるわなー」


ヒヒヒと下品な笑いを浮かべ、ビシッと槍先をエイジの方に向ける。


「おいてめぇ、命が欲しけりゃ金目の物を、出せ。そしたらフルボッコだけで......」

「おおぉ、悪人の名セリフ初めて聞いたなー。実際に言う奴初めて見たわー」


感心したようにエイジがほうほうと頷く。エイジとしては煽りなどの下心はなく、素直に驚いただけだったのだが男の方はそうはいかなかったようだ。


「このガキがぁっ!」


そう言い、顔を真っ赤にしてその巨体を動かす。鈍く光る槍がどんどん近ずいく。


それに対しエイジは身動き一つしない。ただ、目の前の男達を憐れむように見るだけだ。


「一応言ったからな? どうなっても俺知らないぞ?」

「うるせぇ!」


エイジの静止を無視し、槍をエイジの心臓めがけて伸ばす。恩恵の力が働いているのかその動きは早く、さっきの石の投擲、いやそれ以上の速さだろう。音速並みの速度で槍先が近ずく。


それを見てなおエイジは動かなかった。


「後悔するなよ」


エイジは冷静に近ずいてくる槍先を見ながらこれから起こるであろう事に、そう言わずにはいられなくなり悲しく呟いた。


そう呟いた直後、槍先はエイジの胸を貫通し、鈍い音と悲鳴が路地に響いた。

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