悪役令嬢謝罪と初めての友達
「お嬢様!申し訳ございません!バカな息子どもが大切なお嬢様に大きな傷をつけてしまったと。何とお詫びをして良いのか・・・」
男性は大きな体を折り、床に手をついて頭を下げた。おそらく双子の父親であろう。
(えっ?えっ!?土下座!?)
「本当に申し訳ありません。どうか息子たちの命の代わりに私の命を・・・。私が罪を償います。」
双子の母親らしき人も男性に習い、床に手をつき懇願した。
(えっ!?命!?な、なんで!?)
男の子たちも黙って床に手をつき頭を下げた。
「ほら、アドルフとアルヴィンも謝罪なさい!」
母親に叱責され二人の体はビクッと震えた。
「ご、ごめんなさいっ!ほ、本当にっ!ごめっ!」
一人は号泣しながら謝った。嗚咽をこぼしながら泣く彼を見てこちらの方が申し訳なくなる。
「っ!ごめんなさい」
もう一人は涙をぐっとこらえながら頭を深く下げた。
(同じ顔してるのに性格は全く違うのねぇ・・・。)
そこで、はたとどこか聞いたことがある二人の名前に引っかかった。
金髪蒼眼のアドルフ・・・アルヴィン・・・
アドルフ・・・アルヴィン・・・
そして意地悪令嬢ミーシャ
(ここはもしや私が大好きな乙女ゲーム「永遠のプリミエール」の舞台なのでは・・・。なーんてね。そんなわけないか!!)
私は少し痛む身体を動かしベッドから降り、震える双子のそばで膝をついた。
「顔をあげてください。そんなに謝らなくても大丈夫よ。ほらみて、私はこんなに元気。命で償うだなんて言わないでくださいな。」
ニッコリ微笑むと四人は驚いたように顔をあげたが母親はすぐに額を床に擦り付けるように頭を下げた。
「でも嫁入り前のお嬢様を傷物にしてしまったとお伺いしました。この命で償っても償いきれないことでございます。」
(こんな擦り傷1つで人を殺めると思われるとか・・・私はなんて人間だったんだ・・・。まぁ、やりかねない勢いはあったが)
「傷って言ってもほんの少しよ。それも頭だったから髪の毛で隠れてしまうし。だからなんにも心配ないわ。それに、あなたが死んでしまったら子供と旦那さんはどうやって生きていくの?あなたの存在はとてもとても大きいはず。命を投げ出すようなことは言わないでくださいな。」
安心させるように再び微笑むと母親は大きな瞳から涙をこぼした。そんな母親を見て双子もわんわんと声を上げて泣き出し、私にありがとうとごめんなさいを繰り返した。
(なぜかいい話っぽくなったが、そもそもここまで大げさにする話でもないのよね。あっ、でも)
「でも、もし罪を償う気があるなら・・・私とお友達になって?私同じ年頃のお友達がいないの。二人がお友達になってくれるととても嬉しいですわ。」
(そう、私には本当に友達がいないのだ。こんな性格だし、友達なんて悪い噂が経てば手のひらを返すくだらない存在だと思っていたのだから仕方がないのだけれど・・・
というか、5歳でここまでの境地に至るって凄いな)
二人は大きな瞳をさらに大きく見開き、私を見た。
キラキラと涙がこぼれる。
(あっ、綺麗。宝石みたい)
「友達になってくれる?」
もう一度尋ねると二人はコクリと頷いた。
(こんな傷1つで天使みたいに可愛い男の子と仲良くなれるなんてラッキーだわ。)
そんなこと思ってしまう私はやはり性格が悪いのかもしれない。
私がにこりと微笑むと、二人もふわっと微笑んでくれた。
(うわっ!やばい!美少年スマイルってこんなにも眩しいんだ!破壊力が凄い!)
こうして私は可愛い可愛いお友達を手に入れたのだった。