出会い2〜アルヴィン
スッと誰かが近づいてくる気配がした。
顔はあげられない。
すると、そのとき頭上で小鳥が歌うような美しい声がした。
「顔をあげてください。そんなに謝らなくても大丈夫よ。ほらみて、私はこんなに元気。命で償うだなんて言わないでくださいな。」
恐る恐る顔を上げると、先日見た女の子が優しく微笑んでいた。
以前見たときと全く別の印象を受ける。
こんなに可愛い子だったんだ・・・
こんな時だというのに馬鹿みたいなことを考えてしまった。
「でも嫁入り前のお嬢様を傷物にしてしまったとお伺いしました。この命で償っても償いきれないことでございます。」
母さんは驚きつつも深く頭をさげる。
「傷って言ってもほんの少しよ。それも頭だったから髪の毛で隠れてしまうし。だからなんにも心配ないわ。それに、あなたが死んでしまったら子供と旦那さんはどうやって生きていくの?あなたの存在はとてもとても大きいはず。命を投げ出すようなことは言わないでくださいな。」
パパッと手で傷を隠し、あっけらかんと言った女の子を見て母さんは涙をこぼした。
そんな母さんを見て僕もアドルフも我慢ができず大泣きしてしまう。
「でも、もし罪を償う気があるなら・・・私とお友達になって?私同じ年頃のお友達がいないの。二人がお友達になってくれるととても嬉しいですわ。」
僕とアドルフに向けられた笑顔に戸惑ってしまう。
傷つけたのに・・・
一言も責めないどころか、友達になってほしいだなんて・・・
この子は天使かもしれない・・・
女の子の綺麗な緑色の瞳から目がそらせなかった。
「友達になってくれる?」
もう一度尋ねられるも、声が出ず、コクリと頷いた。
噂なんて全くのデマだった。
こんなに可愛いくて優しい子がワガママで人を見下す子なはずがない。
この子は何も持たない僕たちと友達になって欲しいと言ってくれたのだ。
僕はトクトクといつもより早い心臓の音に戸惑いながらも女の子に笑って見せた。
この子に恥じないようになろう。
この子に友達になってよかったと思ってもらえるようになりたい。
この子の隣に立って、胸を張って歩けるようになりたい。
そう強く思った。