出会い1〜アルヴィン
僕、アルヴィン=リロンドは双子の弟として生まれた。
寡黙だけど尊敬できる父さんと優しく愛情深い母さん。
うるさいけれど、いざという時に頼りになる双子の兄。
そんな平凡な家族。平凡な暮らし。
不満なんて特に無かった。
ある日、兄のアドルフが噂のワガママ令嬢の誕生日パーティーがあるという話を持ってきた。
美味しい料理はもちろんだが、今後この領地を収めるであろう彼女を一目見たいと思い、兄を止めることもできずパーティーへ忍び込んだ。
パーティーはとても華やかで僕たちは雰囲気にのまれてしまい、目当ての料理はほとんど食べられなかった。
そんな中、同じ年くらいの女の子と目が合い、慌てて外へ逃げようと兄の背中を押した。
ほんの一瞬目があった女の子は美しい黒髪に白い肌、大きなつり上がった緑色の目を持っていた。整った顔立ちというのもあり、きつそうで冷たい印象を与える子だ。きっとあの子が噂の令嬢、ミーシャ=ヴェロナだろう。
バルコニーから木を伝って下に降りる際、ガシッと手が掴まれ、上を見上げると怖い顔をした先ほどの女の子がいた。
慌てて手を払うと女の子が僕の横を通り、落下していくのが見えた。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
慌てて下へ降り、女の子に謝るも返事はなく、頭から血を流す姿みて目の前が真っ暗になる。
そのあとどうなったのかはよく覚えていない。ただ屋敷の人に捕まり、アドルフと一緒に部屋へ案内された。
その後両親がその部屋に迎えにやってきた。二人とも血の気の引いた真っ白な顔をしていた。
父さんも母さんも怒りもしなければ泣きもせず、ひどく強張った顔をしていた。
その顔を見てやっと自分達がとんでもないことをしでかしたということに気がついた。
僕たちは殺されてしまうかもしれない。そう思うと寒くもないのに体が震えた。
2日後女の子が目を覚ましたと聞き、すぐに面会を申し出た。
まだ会える状態ではないと言われたが、すぐにでも謝罪しなければと思ったのだ。
許可がおり、少女の部屋に向かう途中、母さんの手が震えていることに気づいた。
本当にごめんなさい・・・
僕は心の中で謝った。
部屋に入ると父さんが床に手をつき頭を下げた。
「お嬢様!申し訳ございません!バカな息子どもが大切なお嬢様に大きな傷をつけてしまったと。何とお詫びをして良いのか・・・」
尊敬する父さんに頭を下げさせてしまったことがショックだった。
続いて母さんも頭をさげる。
「本当に申し訳ありません。どうか息子たちの命の代わりに私の命を・・・。私が罪を償います。」
母さんが僕の代わりに死んでしまう。
僕は謝らなければと思うのに体がうまく動いてくれない。
その場に縫いとめられたように固まってしまった。
「ほら、アドルフとアルヴィンも謝罪なさい!」
母さんの声で慌てて床に手をつき謝罪する。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
後から後から涙が出て、嗚咽が溢れる。
母さんが・・・いなくなるかもしらない・・・
僕が、僕のせいで・・・