悪役令嬢と訪問の約束
「ミーシャ、やっぱりまだ体調悪いの?なんだか変だよ?」
アルが心配そうに覗き込む。
「ぜ、全然大丈夫よ!それよりももっとお話ししましょう!アルやアドルフが暮らしている場所のことを教えて。」
危ない危ない。
完全に自分の世界に入っていた。
フラグを折ったからって私が殺されないとは限らない。
攻略対象であるアドルフとルートから外れてはいるが要注意人物であるアルに目を光らせておかなくては!
バッドエンドを回避するためにも、正しく領地を収めていくためにもこの世界についてきちんと知る必要があるし。
「俺らが住んでいるのは下町の商店街。」
アルと私が二人で話し込んでいたのが面白くなかったのかアドルフは私とアルの間に無理やり椅子を持ってきてドカッと座った。
仲間外れにされたと思ったのかしら?
それを見たアルも顔をムッとさせ、反対隣に椅子を移動し座った。
話をしやすいように私を真ん中にしてくれたのね!
可愛い上に気がきくとは・・・この先モテまくり人生ね。
「僕たちの家は花屋を営んでいるんだ。」
花屋・・・
以前会った二人の父親を思い浮かべる。
あの大きな体と手から繊細な花を扱うイメージはなかった。
顔は二人に似て整っていだけれど体はゴツゴツと大きく、寡黙なイメージだった・・・
「その顔から言いたいことはなんとなく分かるぞ。分かるが、父さんの作る花束はどこにも負けねぇくらい綺麗なんだぞ!」
「そうなんだよ!街一番の花屋なんだよ!」
二人が必死になってお父さんのことを話した。
「あの大きな手から魔法みたいに花束が出来上がるんだぞ!」
「花も育ててるんだけど、父さんの育てる花はどれも綺麗なんだよ。」
二人の必死さから父親への尊敬と愛情が伝わってきた。
「母さんの作るお菓子は世界一だしね。」
「そうだぞ!すげぇ美味いんだ!」
我先にと自慢したがる二人を見て笑みがこぼれる。
素敵な家族なのね。
子供のために命を差し出そうとした母親を思い浮かべる。
恰幅がよくて凛とした女性だった。
肝っ玉母さんそんな言葉がよく似合う人。
「一度二人の家に行ってみたいなぁ・・・」
ポツリとこぼすと二人は食いてきた。
「なら来いよ!」
「おいでよ!」
こうして3日後私はリロンド家を訪れることを約束しパーティーをお開きにした。