悪役令嬢の噂
お腹が満たされた私とアルはなおも食べ続けるアドルフを見て苦笑を浮かべた。
「うまいな!こんなに美味いものがこの世にあったなんて!!」
本当に幸せそうに食べるアドルフを見てこちらも嬉しくなるが・・・見ていて胸焼けしそうになる程食べる。
「それはよかったわ。遠慮せずに沢山食べてね。」
私の言葉にアドルフは大きくうなずき食べるペースを上げる。
「アドルフほどほどにしなよ。また、お腹壊すよ。」
そんなアドルフに慣れているのかアルは適当に止めていた。
「うるせぇ、こんなご馳走一生食べれないかもしれないんだぞ!」
アドルフは完全にアルを無視して食べ進める。
「はぁ、これじゃあ誰の誕生日だかわからないじゃないか。」
頭を抱えるアルの肩をポンっと叩く。
「私のことは本当に気にしないで。料理だって残されるより、幸せそうに食べもらう方がずっと嬉しいだろうし。」
私が笑みを浮かべると、アルもつられて笑顔を浮かべる。
「ミーシャは本当に優しいね。噂と大違い。」
「前も言っていたけど、その噂ってなんのこと?」
尋ねるとアルはハッと口を押さえる。
「ワガママ、自己中心的、身分とお金と権力が全てで平民のことなんてゴミ屑としか思ってないようなクソ女。それが世間一般のお前のイメージ。」
公爵令嬢にクソ女とは・・・
「アドルフ!」
アルが止めようとするけれどアドルフはどこ吹く風
「だって本当のことだろう。だからそれが事実かどうか確かめるためにパーティーに忍び込んだんだ。だってお前は後々この領土を納めるものだろう。」
アドルフの目は見定めるように私を見ていたが、すぐにニッと笑った。
「でも違った。噂なんてただの噂だ。お前は平民である俺たちを友達だと言ってくれた。傷つけたのに笑って許してくれた。」
私はこの領土を納めるものになる・・・
当たり前のことのように言われたとても重い言葉。
そうだ・・・
忘れていた・・・
私はもっと知らなくてはならないし、学ばなければならない。
この領土で暮らす人々が何をしているのか、何に困っているのかを・・・
そのためにはまず暮らしを知るところからかな。