第6話 さらなる戦闘
4人の男を倒した二人は意識の有無を確認するためにそれぞれの男に近づき様子を観察する。意識がないのを確認すると二人は顔を見合わせうなずいた。クリラはリュウにギュッとしがみついたまま離れない。
「クリラちゃん、もう大丈夫だよ。悪い奴らはやっつけたから。」
レイカはそう言って少女の頭をなでる。それを聞き少女は抱き着く力を少し弱めレイカの顔を見る。
「お母さんはどこ?」
「ごめんね。まだ見つからないんだ。でも必ず会わせてあげるね。」
「うん。お願い。お姉ちゃん、お兄ちゃん。」
レイカが再び彼女の頭を撫でた。
「しかし、クウォルトルーラさんすごいですね。奴らを一撃で倒してしまうなんて。」
「アルメリアさんもすごいですよ。クリラちゃんを抱いたままあんなに動けるなんて。」
「ははは、ありがとうございます。」
レイカに褒められて、リュウは恥ずかしそうに笑った。しかしレイカはすぐに険しい顔つきになって言った。
「しかしお母さんの居場所が分からない。まだほかに仲間がいてそこにとらわれている可能性があります。」
「さっき、男が言ってたことですか? しかし本当にこの路地にいるんでしょうか。」
「います。必ず。」
そう断言するレイカにリュウは不可解だという面持ちで見ていた。
「まあ、いるにせよいないにせよ応援を呼ぶのが得策では? さっき打ちあがった雷で騎士が気付いているかもしれませんし。」
「いえ、このまま探しましょう。私たちがここを離れるうちに逃がしてしまえばそれはまずいですから。応援はさっきの雷を見たならそのうち来るでしょう。」
「それなら…」
リュウがそう言いかけた時路地の曲がり角の先から声がかかる。
「おい、ジェスタ。終わったか?」
リュウとレイカは向かい合ってうなずき合いすぐに角へ向かいその先の通りを見る。
通りの奥にある扉から二人よりも頭一つ分以上大きい大柄な男が現れた。そして3人と角に倒れる男を見ると途端に厳しい顔になり叫んだ。
「お前ら! くそが! やられたのか!」
男が言い終わる前にレイカが動き出した。瞬時に男との距離を詰める。それに気づき男もすぐに応戦した。
「風掌!」
「硬皮!」
「クリラちゃんまたしっかりつかまっててね。」
そういうと男とレイカの体が青白く光りレイカの拳には風がまとわりつき、男の体は隆起し服を破く。そこから見える皮膚はごつごつとした形状をしている。レイカのまっすぐ突き出した掌と男の体の前に構えた肘がぶつかり激しい音を立てる。レイカの手は男の体に当たるとはじかれてしまう。その隙に男はレイカに向かって拳を振るう。レイカはその拳を後ろに下がることで避ける。すかさず男が片足を上げ振り下ろす。
「地震」
あたり一帯が大きく揺れる。この揺れでレイカはほんの少し体制を崩してしまう。その隙を突き、男の拳がレイカの眼前に迫る。
『しまった!』
「水弾」
レイカの後ろからリュウの放った水の弾が男の顔面に直撃し男は大きく体を仰け反らせる。レイカはすぐさま距離を取った。
「ありがとうございます。」
リュウがうなずいた雰囲気が感じられた。
『この男強い。さっきの男たちとは違って戦い慣れている。こちらは人数が多いが彼はクリラちゃんを抱えているし、連携もとれない。どうする。』
「この餓鬼ども!隆起」
男がそう言うと道の一部が隆起し路地がでこぼこになる。レイカの片足がある部分で隆起が起こり強制的にバランスを崩される。男が再びレイカに殴りかかる。
「水弾」
すぐさま男の顔面向けてリュウが援護する。しかし男はそれを避けレイカに攻撃を続ける。レイカはバランスを崩しながらも腕を組んで拳が急所に直撃するのを防ぐ。
「キャッ!」
男の拳はたやすくレイカを吹き飛ばし壁に直撃させる。すぐさま男はリュウに向って駆ける。リュウは距離を取ろうと一歩下がる。
「逃がしはしない。地壁!」
通路に地面から壁がせり上がりリュウたちの逃げ道をなくす。にやりと笑った男がリュウの顔めがけて拳を振るう。
「滑水」
そうリュウが言うとリュウの周りの地面に水が広がっていく。そこに男が踏み込むと滑って転倒した。リュウはすぐに上へ飛び上がり壁を伝ってレイカのそばに降り立つ。レイカはさっきの攻撃では意識を失わなかったらしく起き上がっていた。
「水針」
針状の水が数本リュウの周りに形成される。その針が勢いよく男の全身に向って投擲される。
「地壁」
再び地面から壁がせり上がり水の針を防ぐ。この隙にリュウがレイカに小さくつぶやく。
「大丈夫ですか?」
「ええ」
「俺があの男の動きを止めます。そこに強烈な攻撃をお願いします。」
「分かったわ。」
「地盤沈下!」
男の声が聞こえるとガラガラと男の前の壁が崩れさらに3人のいる場所が揺れながら沈んでいく。そして男が突っ込んできた。
「滑水」
男に向って水が広がっていく。男はその領域に入る前に飛び上がった。3人がいる場所めがけて突っ込んでくる。
「風弾」
レイカの放った空気弾は男の体に当たるも跳ね返る。
「くらえ!」
男の拳がリュウを捕らえようとする。その時リュウの体が今まで以上に青白く輝き術を行使した。
「粘水捕縛」
リュウと拳の間に水が生じ振るわれた拳にまとわりつく。水の量は増えていき男の腕をほとんど覆ってしまった。この水によって男の拳の勢いは殺され拳を出した格好で男は止まった。
「今だ!」
リュウは男から距離を取るように後ろに後退した。リュウの声に合わせてレイカは構えを取り体が青白く光りだす。男はまだ空中で姿勢を変えようにも腕に水がまとわりついていてうまくできない。
「烈風爆拳!」
風をまとった拳が男のガードをすり抜け顔面に直撃し、その直後盛大に爆発した。男は腕の水ごと吹き飛ばされ派手な音を立てて壁にぶつかり白目をむいて動かなくなった。それを確認するとレイカはホッと息を吐きリュウに向いてうなずいた。リュウも少し笑いうなずいた。その時3人が連れてこられた方向から数人の足音が聞こえてきた。