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漆黒の刃 月白の剣  作者: アフリカツメガエル
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第3話 試験1日目

 空は晴れ、教室の窓から太陽の光が入ってきている。カリカリと教室のあちこちで受験生たちがペンを動かす音が響いている。空気は緊張状態が保たれており、少し息苦しくもある。しかし彼らはは自分の限界まで力を出して目の前の問題に取り組んでいる。その様子を教室の前で立っている試験官リリィンが静かに見守っている。


リンゴーン、リンゴーン


 重々しく鐘の音がなる。受験生たちはペンを机の上に置く。その顔はやり切ったと自信を見せる者、しょぼんと落ち込んだ様子のもの、終わってほっとした様子の者、逆にまだまだ試験は終わっていないんだと緊張を解かない者、または結果をまるで気にしていないような何も考えていないような者と様々なようだ。


「終了だ。今から答案を回収するので各自席にて待つように。」


 リリィン試験官が各々の席を周り解答用紙を回収していく。全員分の答案用紙を回収した彼女は教室の前に戻ると答案用紙を整える。そこに一人の男性が入室してくる。リリィン試験官から答案用紙の束を受け取ると代わりにわきに抱えていた箱を彼女に渡す。リリィン試験官はその箱を受け取ると教卓の上に置いた。


「入学試験前半の学科試験お疲れ様。このテストで今日の試験は全て終了だ。これから明日の実技試験の順番を決めるくじ引きを始める。各々くじを引いたら自分の席に戻って待機するように。朝に説明をしたが教室ごとの順番が決まってから帰ることができる。それまではこの部屋で待機するように。帰る準備をしてくれてもかまわない。ではくじ引きを始める。前列から前に来てくじを引くように。くじを引いたら私に見せてくれ。こちらで記録する。では一番窓側の人から順に前に来てくじを引いてくれ。」


 そう説明があると最前列一番窓側の少女が恐る恐る立ち上がり緊張した面持ちでくじを引く。そこから順番にくじを引いていく。引いた受験生はどう反応すればいいのかわからず少し戸惑った様子だ。

 そして黒髪の少年の順番になった。すこし気怠そうな様子で前へ行きくじを引く。次に白髪の少女の順番になった。凛々しく立ち上がり前へ進む。教卓の前について一度息を吸った後くじを引いた。

 少女がくじを広げてみるとそこにはD-49と書かれていた。試験官にくじを見せると少女は席に戻る。この教室に入るとき入口の上に教室Dと書いてあったのでDの意味は教室を指しているのだろうと考えられる。そして49番とはどれくらいの順番なのだろうと気になり始めて教室を見まわしてみる。するとこの部屋の受験生の数は50人であった。後ろから2番目か、と認識すると少女は今までと同じようにまっすぐと前を見てじっと終わるのを待つ。

 そんな折、少し気になって隣の黒髪の少年を眼だけで見る。少年は何も興味ないといった雰囲気で窓の外の様子をぼーっと見ていた。この学院を受験するものはそれぞれ野望や夢をもって来ている。そのため受験生の目や体からは明確な意思ややる気が感じられる。しかし少年からはそう言った覇気が感じられなかった。そんなにもこの学科試験の手ごたえが悪かったのだろうか。そのせいで気力がなくなってしまったのだろうか。黄昏た雰囲気が少年から流れていた。そんなことを考えていると全員がくじを引き終わったようだ。


「では教室ごとの順番を決める。D-1を引いた受験生は私とともに来てくれ。それ以外のものはトイレ休憩などをしながら私たちが帰ってくるのを待つように。問題がなければ大して時間はかからずに終わるだろう。気を楽にしていてくれ。ではD-1を引いた受験生は前に来てくれ。」


 そういうと最前列の窓際の少女が立ち上がり試験官は彼女を連れて外へ出ていった。教室は弛緩した空気が流れる。中には近くの受験生とテストの出来を話す子もいる。少し騒がしくなった教室で黒髪の少年と白髪の少女は特に動く様子もなく時間が経つのをじっと待っていた。周りの受験生も彼らの容姿からか気後れしてしまって話しかけづらい雰囲気であった。

 時間が経つにつれて教室の騒がしさが増してくる。そして誰かの笑い声が教室に響いた時ガラッと扉が開いて先の少女と試験官が入ってきた。すると教室はまた引き締まった空気に変わる。試験官は少女に席に戻るように促すと話し始めた。


「先ほどのくじの結果が出た。このD教室は一番最後の順番となった。午前の潜在霊気試験、実技霊術試験ともに一番最後の順番となる。しかしこの教室に来る時間は今日と変わらない。くれぐれも遅刻しないように。」


そう言うと黒髪の少年の方を見た。少年は少し肩を竦めた。


「さて教室ごとの順番がどうであれ明日の試験には待ち時間が結構できてしまう。その時間をつぶすためにそれぞれ本などの時間つぶしの者を用意しておくように。あと試験で使う霊具を忘れないように。これくらいで説明を終わりにするが何か質問はあるか。」


誰も手を挙げない。それを確認すると試験官は少し緊張した雰囲気を解いて言った。


「では王立リュートレイ学院試験一日目の日程を終了する。解散。皆、気を付けて帰るように。」


それを聞くと受験生たちは立ち上がり各々教室を出ていく。少女も少年も立ち上がり教室を出ていく。このようにして試験の1日目は終了した。


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