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漆黒の刃 月白の剣  作者: アフリカツメガエル
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第1話 出会い

 アスラメスク1の大国リーズリュート、その王都であるトーレの玄関口に一人の少女が佇んでいた。玄関口である門は人の何倍もある高さで重々しくそこに立っている。その先には白いレンガで造られた家々が並び中世の西洋風な建造物が見渡す限りあり、なんとも壮麗な風景が広がっていた。都の中心部にはひときわ高く目を引く建物が建っている。この地の象徴、王城アスレイ城である。少女は他の人とは違った容姿をしていた。少女の腰まで伸びた髪は純白で太陽の光を反射させ煌めいていた。その顔に浮かぶ二つの眼は白目よりも少しくすんだような乳白色でまっすぐその都を見つめていた。門では商人たちがひっきりなしに出入りしており、活気が満ち溢れていた。しかしその少女はそんな喧噪とは離れ、自分の世界にいるようだった。


「ここがトリーズリュートか。私は必ずここで大成してみせる。私の誓いのために。」


静かにつぶやいた彼女は街の喧噪とともに中へと歩いて行った。


 ◆ ◆ ◆


 この世界では全ての人に霊気と呼ばれる力が備わっている。そして人はこの力を以て世界の事象に干渉することができる。その技術を人は霊術と呼んでいる。霊術は習得すること、行使することが難しく各々の才覚に左右されてしまう。しかしこの力を使えば国や民に降り注ぐ脅威に対抗する力となる。世界の国々はこの霊術を効率よく学ばせ霊術の使い手『霊術師』をより多く育成するために霊術の専門学校を創設し、子供たちの教育する環境を整えた。才能に左右されやすい霊術師は絶対数がどうしても少なくなってしまう。そのため霊術師になればその人は多大な恩恵を得ることができる。裕福であろうと貧しくあろうと多くの人は霊術師になること、家族が霊術師になることを望み、そのために子供をその専門学校に通わせたい、自分が通いたいと願っている。


 ◆ ◆ ◆


 リーズリュート最大の霊術教育機関が王立リュートレイ霊術学院である。毎年数千人が入学試験を受けそして選ばれた数百人の子供たちが学院に通うことができる。学院は王都の西側に位置し広大な敷地を有している。2の月中旬まだ外は寒く息が白く人々の口から出ている。今日は入学試験の日である。学院に入らんと願う者たちが大勢正門から学園内に入っていく。

 その中に真っ白な髪をした少女がいた。その容姿はひときわ目立っており周りは何か噂するようにざわめく。しかし少女は気にする風もなく建物内へ入っていく。建物へ入った生徒は各々指示された部屋へと向かい指定された席に座ってこれから行われる学術試験の用意をする。少女も指定された部屋へ向かい前と後ろ、2つあるドアのうち後ろのドアから入室し、席に座る。

 入室時その物珍しい容姿を見て室内が一瞬鎮まる。しかし無礼と感じたのかすぐに元に戻る。そこで試験を待つ者たちは様々な形で過ごしていた。霊術関連の本を読み漁るもの、お守りらしきものを握って願っているもの、きょろきょろと周りの人たちを見まわし落ち着かない様子でいるもの。少女はじっと前を見つめ静かに時間が来るのを待っていた。そして前のドアが開き二十代と思われる青い髪と青い眼のきれいな女性が入ってきた。教室は一気に静まり引き締まった空気が流れる。その女性が口を開いた。


「これから王立リュートレイ霊術学院の試験を始める。最初に試験についての説明を行うんだが・・・」


そこまで言うと少女の左隣の席を見る。そこにはいまだ受験生が座っていなかった。


「もう少しで時間になる。時間に間に合わなければ不合格確定なのだが。」


 そんなことを言っていると突然後ろのドアが勢いよく開いた。そこには息を切らした少年が立っていた。


「時間、間に合ってますか?」


そう少年が問う。


「ギリギリだが間に合っているよ。席に着きなさい。これから試験の説明を行う。」


「はい」


 安堵した少年は少女の隣の席へと歩いていく。ふと少女がその少年を見る。そして少し驚いた表情をした。少年の髪は男としては長めのまっすぐな髪を持ち、その色はまるで夜のような黒だった。そして瞳も闇を溶かし込んだような黒だった。そして何より左目のところには黒い布製の眼帯がしてあった。片目が見えないのだろうかなどと少女は気になってしまう。

 少年と目が合い、気まずく思った少女は目をそらす。少年が席に座ったのを確認すると前に立つ女性が話を始めた。

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