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死神さんと……ゲーム 前編

 さて寝るかと歯を磨いていると、インターホンが鳴り、来客だと伝えられた。

 時計を見ると、もうすぐ日付が変わる時間だった。

 玄関に向かいスコープを覗くと、三人の黒い服を来た女の子達が覗き返してきた。


 なにも言わなくても解ります。

 死神さんが訪ねてきました。

 鍵を確認して、ダッシュで報告に。


「死神さんが来ました。あのですね、顔は可愛らしいですが、ドアが壊される前にお願いします」


 出費が多すぎて、もう家計は火の車です。


「前も言いましたが、顔は聞いてません」


 レンズが眼鏡を外し、立ち上がった。

 眼鏡を受け取り特徴を話した。

 カタナが余裕だなと、化粧を落としていた。

 クックは欠伸をしながら目を擦っている。


「行って参ります」


 凛としたレンズさん、カッコいいです。


 5分もかからずレンズが戻ってきた。

 凄すぎですと、キラキラした目でレンズを見ていると、後ろから着いてくる人達が。

 あの、レンズさん?

 その人達は死神さんですよね?


 入って来た3人の死神は、目や雰囲気がよく似ていて姉妹のように見える。

 とっても可愛いですね。

 レンズさんの視線が痛いです。


「すみません、ゲームをする事になりました」


 ゲームですか。

 なんでしたっけ、あのルーレットの出た色に、手とか足を置くゲーム。

 あれ、一回やってみたかったんです。

 思いっきり胸を反らすカタナが……

 妄想の世界への扉は、レンズの言葉に固く閉ざされた。


「真面目に聞いて下さい。私達がこのゲームに勝てば、もう貴方を狙うのは止めるそうです」


 その言葉に、俺は息を飲んだ。

 カタナが唇を舐めた。

 クックも目が覚めたようだ。

 改めて死神さんを見ると、こちらの陣営とキャラがかぶっています。

 名前を教えてくれたので、簡単に紹介を。


 長女のノワールは、クールな流し目とカタナに負けず劣らずの胸。

 次女のネロは、綺麗な銀髪と左目に片眼鏡(モノクル)

 三女のコクは、ショートカットに口の左端に白い牙。

 3人ともに目は暗い夜に妖しく光る、赤月のような色をしていた。

 ほんと、みんな可愛いですね。


 さて、ゲームのルールですが、この死神さん達はちょっと変わってました。

 なんでも、普通にやり合っては絶対に勝てないので、付喪神の力を10分1にする場所でやろうとの事です。

 ある意味、戦う前から負けを認めています。


 それはいくらなんでもと、断ろうとすると皆はそれでいいとオッケーを出した。

 いやいやと言うと、3人から引っ張られ、円陣を組むように会議です。

 カタナが真っ先に口を開いた。


「バカ、これはチャンスなんだって。あいつら、俺達の事は知らないみたいだし」


「そうですね。それに、10分1なら、なんとかなります。勝てば死神の脅威からゲット様を救えるのですから」


「お兄ちゃん、大丈夫だよ。ちゃんと作戦があるんだから」


 作戦を聞こうとすると、死神達からどうすると急かされ、3人はやると答えた。

 はあ、もうみんなを信じるしかないようです。

 ノワールが確認の為とルールを繰り返した。


「付喪神の力を半減させるフィールドで、1対1の勝負をし、先に2勝した方の勝ちで宜しいですね」


 もうそれでいいです。

 みんなも頷いてますし。

 ではと唇を歪ませ、どこから出したのか大きな鎌で床に円を描いた。

 あの、すいません、フローリング傷付くと困るんですが。

 瞬きと同じスピードで紫の光が広がり、次の瞬きで違う場所に移動したのが解った。



 そこは、薄く月明かりだけが差す、寂しくてなにもない場所だった。

 カタナとクックが膝をつき、荒い息をついた。

 かろうじて立っているレンズも、顔をしかめて嫌な汗をかいている。


「騙されました。これでは、100分1ですね」


 レンズの膝が揺れている。

 こんなレンズを見るのは初めてだった。

 これは本当にヤバいです。

 死神達が笑っていた。


「最後に確認はしましたよね、力を半減させると。その時は10分1とは言っておりません」


 ノワールが見下すように言った。


「ばーか、おめでたい奴等で助かったよ。付喪神は戦いだけは強いからな、代わりにオツムは弱いけどな」


 ネロは、なにがそんなに面白いのか、腹を抱えて笑っている。


「心配しなくていいよ、死神は契約は守るからね」


 コクは、どうして今その顔が出来るかと聞きたいくらいに無邪気に笑っている。


 ダメだ。

 辛そうな3人を見ていられない。

 こんなゲーム俺は認めない。


「ゲームは止める。いますぐ、元に戻せ」


 ノワールは冷たい目で俺を見た。


「貴方とゲームをするのではありません。それに、終わるまで出られませんよ」


 完全に向こうのペースだ。

 なにも出来ない自分に腹が立つ。

 膝をついているカタナが俺の手を取り囁いた。


「大丈夫だ。レンズが勝てば、それでおしまいだ」


 それはどういう意味だと聞こうとすると、ノワールがゲームの開始を告げた。



「ゲームの始まりです。双方ともに痛みを楽しみましょう」



 コクが細身の鎌を背負って前に出た。

 自分の背丈と同じ大きさの鎌の刀身は、禍々しい夜の色をしていた。

 小さな体で、どうやってあの鎌を使うのか。


 クックが、スニーカーの紐を解いていた。

 やはり辛いのか、手が震えている。


「行ってくるね。無理かもだけど、がんばる」


 カタナとレンズが頷いた。

 1番手はクックなんですか?

 死神殺しのレンズ先生が、死神さん達のスペックを分析してくれました。


「恐らく1番、強いのはノワールですね。次がコク、最後にネロです。ですから、私がネロと戦います。クックには悪いですが、捨て駒になって貰います」


 どうやら、確実に1勝を取りに行こうという作戦のようだ。

 もう1勝はどうするとカタナを見ると、不安なくらいに辛そうだ。


「はい、大事に持っててね」


 スニーカーを俺に差し出した。

 戦い方に関しては、特に何も言ってなかったと思い出した。

 前に教えてくれた、付喪神の戦術パターン2が頭に浮かんだ。

 確か、本体を他の付喪神に守らせ、命の危険を排除して戦うという戦術だ。

 死神達はきっと、全員動けなくなるまでやるつもりだ。

 その後でゆっくり本体をやればいい。

 だから、何も言わなかったんだ。


「黙って見てろよ、俺も我慢する」


「私達を信じて下さい」


 カタナとレンズの言葉に、俺は腹を括った。

 スニーカーを抱き、クックの背中に声をかけた。


「クック、がんばれ」


 クックは小さく頷き、コクと相対した。



「あたしね、痛くしたりするの好きじゃないの。だからね、動かないでくれるかな?痛くないように、首だけ刈取ってあげるから」


「やだよ。僕も、戦ったりするの好きじゃないから、参ったって言ってくれないかな」


 コクは小悪魔の顔でとんでもないない事を言い、クックは天使の顔で返した。


「悲鳴とか聞くのいやだなぁ」


 面倒臭そうにコクがゆっくりとクックに近付き、なんの予備動作もなく鎌を首の高さで水平に振った。

 クックは頭を下げてかわすが、下からコクの膝が上がり顔に膝がぶち当たり後ろに倒れた。


「動いたら痛いよ」


 倒れているクックの首に狙いを定め、鎌をなぎ払った。

 クックは跳ね起きてかわしたが首には朱色の線が刻まれ、血が線を太くしようと滴った。

 クックは首を抑えて、うずくまった。


「だから言ったのに」


 更にと鎌を振るい、クックはギリギリの所で転がりかわした。

 それから、一方的に同じ事が繰り返された。

 鎌をかわせば、かわした方向に拳や足が邪魔をし倒される。

 倒れた所に首を目掛けて、鎌が首をよこせと襲ってくる。

 クックが異常なほどに鎌を警戒しているのがよく解った。


「死神の鎌で切られると、とても痛いのです。クックは恐らく、死神との戦いは、今が初めてだと思います」


 レンズが怒りを抑えながら教えてくれた。

 クックの体力の限界が見えてきている。

 もう負けでいい、止めてくれ。

 コクが、立てないクックに、止めの一撃を見舞った。

 見ていられず、俺は目を閉じた。



 血が噴き、クックの声が上がった…………



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