表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/112

金縛りと……呟き

 初めての敵をクリアしてから一夜が開けた。

 特に何もしてないから、いまいち実感が薄い。

 俺がやった事と言えば、呟き掲示板に、俺だけお寿司を食べられなかったなぁと、書き込んだくらいだ。

 フォロワーが2人しかいないし、ぐう~となる腹がとても淋しい。



 なにか食べるかとキッチンに向かい、冷蔵庫を開けると、中は3つの物でぎゅうぎゅうになっていた。


 お酒と飲むゼリーとレトルトのご飯。

 ええと、これはなんですかね。

 買った覚えがありません。

 冷蔵庫の前で考えていると、カタナが濡れた髪を拭きながらやってきた。


「冷蔵庫を開けっぱにすんなよ。温くなんだろ」


 そう言って、冷蔵庫の中からビールを取った。

 お風呂上がりのカタナは石鹸の香りがして、とっても色っぽい。

 女の子のお風呂上がりっていいですね。

 大好物でございます。

 俺の顔を見て、カタナはニヤリと笑った。


「レンズはいないし、クックは寝てるから丁度いいな。おまけに、風呂上がりだ。ほら」


 カタナは誘うような顔で胸をはだけさせた。

 そして、両手で胸を持ち上げる。

 とっても柔らかそうで重そうです。

 胸の重さ=幸せという式が、男の子なら知ってますよね。

 男の子なら、我慢とか出来ないですよね。

 はい、出来ません。


 俺はいそいそと服を脱いだ。

 よしと、トランクスに手をかけると、カタナの言葉に凍りつく。


「俺は大きさとか気にしねえから。あんま気にすんな。昨日のお礼だからさ」


 はい?

 あの、なんの話でしょうか……?

 もう脱ぐに脱げない。


「ほうら、早く」


 更に胸を持ち上げ、色気たっぷりにカタナが急かしてくる。

 よし、考え方を変えよう。

 これはチャンスなんだ。

 ありがたい事に、相手が気にしないと言ってくれている。

 それに、ここで止めては女の子に恥をかかせてしまう。

 やったると決め、トランクスに手をかけると、カタナの後ろに立つレンズと目が合った。



 あの、いつからそこに?

 レンズの冷たい目が俺を金縛りにする。

 カタナも俺の様子に気付いたのか、振り返り驚いた。


「き、気の効かねえ奴だな。終わるまで帰ってくんなよ」


 なんとなくカタナも焦っている。

 俺は金縛り継続中だ。

 レンズはおでこに手を当て、ため息をついた。

 やっと、レンズの冷たい目から解放された俺は、いつから見てたのとか、ごめんなさいと言うしかなかった。


「私がいない時に、その下品な胸で、ゲット様を誘惑するなと言いましたよね」


 レンズさん怖いです。

 俺はまた金縛りに。


「お風呂上がりだから丁度良いとか言って、誘ったのでしょう。女の子に恥をかかせてはいけないという、ゲット様の優しさを利用するなんて最低ですね」


 すいません。

 なんとなく合ってますが、俺もっと最低です。


「それに、大きさの事を本人の前で言うのは可哀想です。貴方には常識がないのですか」


 ああ、そんな前から見てたんですね。

 もう逃げ出したいです。

 黙って聞いていたカタナも、チッと舌打ちをして言い返す。


「言ってやった方が本人の為だろ。それに、下品な胸ってなんだよ。胸なしの嫉妬か、あっ、小さいから大きさの話で怒ってるのか。大きくてごめんなー」


 自分のペースを取り戻したカタナは、ドヤ顔でレンズを挑発した。

 レンズはキッと歯を食い縛った。

 そして、真面目な顔で俺に聞いてきた。


「小さい胸は、お嫌いでしょうか?あと、私はゲット様の大きさなんて気にしません。だって眼鏡にアレするのに、大きさなんて関係ないですから」


 恥ずかしそうに言うレンズは、顔も耳も真っ赤だった。

 なんですか、このギャップは。

 めちゃくちゃ可愛いです。

 上目遣いのレンズと見つめ合ったまま、動けない。

 さっきとは違う金縛りだ。

 やがて、レンズはどうぞと言い、目を瞑り座った。

 自然とトランクスに手をかけた瞬間に殴られた。


「ざけんな。なんだこの雰囲気」


 カタナが喚いてレンズを立たせた。

 俺もレンズも正気に戻される。

 カタナの声に起きたのか、クックが目を擦りながらやってきた。


「おはよう。なんか楽しそうだね。僕も混ぜて」


 クックは無邪気に笑っている。

 今更に、気付いたけど、クックはスニーカーを履いたままだった。

 あの、一応、土足はちょっと禁止しているのですが。

 俺の視線に気付き、ほらとスニーカーの靴底を見せてくれた。


「ほらほら、大丈夫。綺麗だよ。お外では履かないから」


 けんけんしながら、片方ずつ見せてくれるクック。

 なんでしょうか、この可愛らしい生き物は。

 目が離せず、また金縛り。

 クックはにっこりと笑い、いいよと足を差し出した。


 自然とトランクスに手をかけ、カタナとレンズから殴られた。

 クックが楽しそうに笑った。


「お兄ちゃんが小さくても、僕は気にしないからね。クンクンするのに困らないもんね」


 八重歯を見せて100点満点の笑顔だけど、またサイズのお話ですか。

 この子達はいつ、俺のサイズを確認したんでしょうか。

 もう止めて下さい。

 なんてやり取りをしていると、カタナとレンズの言い争いが始まっていた。


「お前が帰ってこなきゃ上手く行ったんだよ。出てけよ、胸なし」


「いいえ、良いタイミングだったと思いますけどね。それに、私が本当に怒っているのは、大きさの話です。」


 あーあと。

 どうやって止めようか考えていると、仕方ないなぁと呟き、クックがすたすたと二人の間に立った。


「お兄ちゃん困ってるよ。止めないと怒るよ」


 カタナとレンズがビクッと動きを止めた。

 二人はぎこちなく何度か頷き喧嘩を止めた。

 うん?

 俺の方からはクックの顔は見えなかった。

 クックさん、なにしたんですか?


「二人とも止めてくれたよ。良かったね」


 振り返り、また100点の笑顔を見せるクック。

 まあいいかと、クックの頭を撫でてお礼を言っておしまいに。



 それから、三人が謝りたいとの事に。


「ああと、器が小さいとか言って、ごめん」


「ゲット様、器のお話は撤回させて下さい」


「お兄ちゃん、ごめんなさい。でも、僕は本当に気にしないからね」


 ああ、器の話だったんですね。

 なんか良かったです。

 でも、なんで器が小さいと思われたんですかね。

 うーん、まあいいかと、呟き掲示板を開くと、答えありました。



【旨かった、ごちそうさん。絶対に守ってやるからな】


【高価なお寿司、本当にご馳走さまでした。何に代えてもお守り致します】


【おすし美味しかったよ。また食べたいな。お兄ちゃんは、僕が守るからね】



 フォロワーの数が、2人から5人になってました。

 誰が増えたか、アイコンなんか見なくても直ぐ分かります。

 器の小さいと思われた呟きが恥ずかしくて消したいですが、返ってきたリプが嬉しくて消せませんね。

 色々と考えましたが、沢山の気持ちを込めて、ありがとうと呟きました。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ