ゲーセン対決と……死神さん 前編
ゲームセンターでの対決が決まり、3姉妹の準備をする事に。
ちゃんとした、お風呂にも、しばらく入ってないと言うので、カタナがお風呂を沸かした。
「女なんだから、キレイにしてなきゃ損するぞ」
カタナは、なんとなく楽しそうだった。
「そんな余裕が、ありませんでしたので。ネロとコクだけでも、そうするべきでしたね」
「お前もだよ。ほら、入ってこいよ」
テキパキと、タオルと着替えを用意した。
3人で一緒に入ろうとするのを止めて、カタナがアドバイスをする。
「風呂はな、女を磨く場所なんだよ。久し振りなんだろ。1人で時間をかけて入ってこいよ」
オロオロとするノワールを、慣れた手つきで脱がせ、お風呂に放り込んだ。
ネロとコクの目には、尊敬の色が浮かんでいる。
「次はネロだからな。コクはどうする」
「は、はい。頑張ります」
「1人で入った事ないけど……はいる」
それでこそ女だと、2人の頭を撫でるカタナは、頼りになる姉のようだった。
ノワールがカタナの服を着て出てきた。
体型が似ているせいか、良く似合っている。
やっぱりというか、必然というべきか、胸に目が行ってしまう。
レンズは爪を噛んでいた。
「本当に感謝いたします。なんだか、生まれ変わったような気分です」
ノワールの雰囲気が柔らかく感じる。
きっと、これが本来の姿なんだと思えた。
少し後にネロが、さっぱりした顔で、レンズの服を着て出てきた。
なんだか、胸の辺りを気にしている。
「下着が小さくて、あの……もう少し、大きいのは、ないですか?」
レンズが、ガリガリと爪を噛んだ。
まぁまぁと、なだめてコクを待っていた。
コクは、にっこりと笑いながら、クックの服を着て出てきた。
「姉様、1人でお風呂に入ったよ。一人前のれでぃだよー」
ノワールが頭を撫でて誉めていた。
さて、行くかと言うと、カタナにまだだと止められた。
「女をスッピンで外に出すのかよ。もう少し待ってろよ」
カバンから鏡と、沢山の化粧品を広げた。
「化粧はな、女に許された魔法だからな」
そう言って、鮮やかにノワールとネロを魔法にかける。
鏡越しに見つめる、ノワールとネロの目には、カタナが魔法使いのように映っていた。
「あたしもー」
コクがお願いすると、カタナはニヤリと笑って教えてあげた。
「コクはな、化粧をしなくてもいい、唯一の年頃なんだから、笑ってな。それが一番の化粧になるからな」
よく解っていない、コクの首元に、薄く香水をつけた。
甘い香りに、コクは嬉しそうに笑ってみせた。
その後、カタナも手早く化粧をして、とっくに準備の出来ていた、俺とレンズとクックに、オッケーが出た。
対抗心があったのか、レンズはいつもより、化粧に気合いが入っているように見えた。
女の子を6人も連れて歩く俺に、周りは微妙な目で見てきます。
もっと、気分の良い物と思っていたのですが、現実は違うんですね。
みんな凄く可愛いので、釣り合ってるはずがないのも解ってます。
現実の厳しさを感じながら、ゲームセンターに到着です。
みんな楽しそうに、はしゃいでいます。
ゲーセン初心者の3姉妹の為に、俺がブレインとして付く事になりました。
さあ、ゲーセン対決の始まりです。
お互いにフェアにやろうと、約束していたので、俺が適当に決める事に。
簡単にルールを説明すると、3姉妹がレンズに勝つまでやる、レンズだけ、サドンデス状態対決です。
フェアって何でしたっけ?
ややこしい事になるので、このまま忘れていようと思います。
まずは、落ちゲーでもやって、3姉妹のゲームのレベルを見てみる。
あっという間に勝負がついた。
結果はレンズの圧勝だった。
「ワンコインで、閉店まで粘った事があります」
明らかに、ゲーム慣れしているレンズに、3姉妹は、がっくりと肩を落とした。
「つ、次いこう」
作戦を考えなければと、プライズコーナーにいた、カタナとクックに、レンズの苦手な事を聞いてみる。
「あー、なんだろな。あいつゲーセン好きだから」
「ごめんね、わかんないや」
役に立つ情報は得られず、代わりに真逆の情報を教えてくれた。
「あいつ、ゲームが好きすぎて、ゲーセンで働いてるからな」
あぁそうですか、貴重な情報を、ありがとうございました。
気になっていた、レンズさんの仕事が解って嬉しいです。
はい、困りました。
勝ち目が、とっても薄くなりました。
こうなったら、数撃ちゃ当たる作戦で行く事に。
音ゲー対決。
「えっ、えっ、えっ……」
ノワールが、胸を揺らしながら、テンパりまくり、曲の最後まで行けずに終了。
レンズは恨めしそうに、揺れる胸を見ながら、パーフェクトを決める。
どうして、画面を見ずに出来るのか。
「譜面を全て暗記してます」
レンズが、ふふんと、なにかの恨みを晴らしたように笑う。
「私は、なにも出来ないダメな死神です……」
ノワールは暗い表情で呟いた。
ガンシューティングゲー対決。
「この、この、なんで。これ照準あってないですよ」
照準のせいにしだすネロは、けっこう上手に見える。
最後の方は、コツを掴んだようで、かなりいい線まで行った。
レンズは、お風呂の件で言われた、下着のサイズを気にしていたのか、ネロの胸を冷静に観察しながら、パーフェクトを決めた。
だから、どうして、画面を見ないで出来るのか。
「ターゲットの出現するタイミングを暗記してます」
ギリギリ自尊心を保てるサイズだったレンズは、余裕な顔で笑った。
「負けたけど、楽しかったです」
照準の癖すら計算に入れるレンズに、ネロは素直に負けを認めた。
プライズ対決。
「お兄ちゃん、ドクロさん欲しい」
コクは景品を指差し、俺に取ってくれと、お願いをする。
よし、お兄ちゃんが取ってやると、クレーンを10回くらい動かし、なんとか景品を取り、コクにプレゼントした。
その隣で、レンズは山のように景品を積み上げている。
「ここのプライズは、設定が甘いです。良いお店ですね」
見たこともない、取り方をしてるレンズは、うんうんと、頷いた。
「かあいい。お兄ちゃん、ありがとね」
俺が取った、ドクロのぬいぐるみを、大事そうに持ってコクが笑ってる。
よし、俺の勝ちと。
パンチ力測定ゲー対決。
レンズが首を振った。
パンチ力には自信がないのかもしれない。
やっとチャンスが来たと、俺と3姉妹は喜んでいると、レンズが機械の注意書きを指差した。
そこには、危険行為の禁止等と一緒に、レンズ禁止と書いてあった。
機械を壊してしまうレンズは、この手のゲームは、お店から禁止されているらしい。
3姉妹を見ると、震えながら抱き合っていた。
ほんとに、困りました。
敵に回すと、とても恐ろしい相手だと、死神さんが気の毒になりますね。
レンズさんに勝つには、どうしたらいいか、見当もつきません。
とりあえず、もう一度、作戦を練りたいと思います。