毒の沼
続き
「ヨシヒコ!セルス!おるな?」長老のばあちゃんこと試験官が大声で呼んだ。
「はい!」
ここは試験会場前と言ってもなんの変哲もない森だ。でも鬱蒼としていて気味が悪かった。
「ようし!注目!ここは開かずの間ならぬ開かずの森じゃ。聞いておるだろう。必要な時にしか開けようとせん。怠け者でな。」
「怠け者ってやっぱり頭おかしいのですか。長老?」セルスは呆れながら言った。
「いや、でも長老の顔本気だぞ。生きてるんだこの森は。」
「その通りじゃ。さて森を起こす前に試験の内容について説明しておこうかの。森に入ってすぐに二つの道がある。お前たち二人はそれぞれ一つ道を選んで進む。あとは最終地点に辿り着いてこの石を取れば合格じゃ。」
そう言ってキラキラ光る楕円の青い石を見せた。
「おぉ!ばあちゃんくれよ、その石!」
「うむ、いいじゃろうってなるかーどあほ!ヨシヒコ、人をバカにするのも大概にせいっ‼︎」
「ちっ、分かったよ。やるしかないかぁ」
「そろそろ目覚めさせるぞ!...出でよ。森の守護神よ!我々の前に姿を現したまえー!」
ゴゴゴゴゴー‼︎
凄まじい地響きとともに森がこんもりとした形から段々と四本の足が生えて、顔だと思われる部分には真っ暗な二つの目が現れた。
「ふぁぁぁぁぁ よく寝た〜♪ ん、試験かね。まってね。はいよ、ここから入ってね。」
と森の四足歩行の生物は大きなブラックホールのような口を開けた。
「これは食われろと言うことですか??」
セルスはドン引きしていた。
「ああ、そうじゃな多少口臭がきついが大丈夫じゃよ。」
「行こうセルス。俺たちは勇者になるって決めたよな⁉︎」
「ヨシヒコ...うん。行こう!口臭に負けるものか!」
ヨシヒコとセルスは森の口の中に入って行った。森の中は異臭と薄紫の煙が立ち込めていて、静まり返っていた。
「ん?敵が出てこないじゃないか!なんだ楽勝だ〜!セルスさっさと行って青い石を取ってこようよ」と言ってヨシヒコは突然走り出して行こうとした。
「駄目だ!よく見るんだ、毒の沼だぞ!」
セルスはヨシヒコの腕を掴んですんでの所で彼は助かった。
「うわぁ!本当だ!セルス、ありがとう。助かったよ。でも、困ったなぁ。どうやって抜けるかなー。俺たち空飛べないし。」
「そうだね。ヨシヒコ...今こそ真の力を見せる時だ!自分を覚醒させて、魔法を使うんだ!毒の沼を消して見せてくれ!君は勇者だ、できるさ!」
「ああ!分かった!......我が真の力お見せ致しましょう!おりゃーーー‼︎
.........ってできるか、バカー!俺はまだ魔法つかえねぇよ。勇者じゃないし...。」
「そりゃそうだよね。勇者になったら晴れて魔法解禁か〜。楽しみだな〜。」
「勇者の見習いはやること制限されてて肩身が狭いよなー。さて毒の沼を渡らなきゃなぁ...ん?セルス、左のあれよく見てみろよ。石板があるぞ。」
ヨシヒコの指差した先には石板が立っていたが幸いにも毒の沼には埋まっていなかった。
「何て書いてあるんだろう。さすがにこの毒の沼から出てる薄紫の煙のせいで文字がよく見えないね。足元の毒に注意しながら、ゆっくり進もうか。」セルスはこう言うと足元を確認しながら進み始めたので、ヨシヒコも一緒に注意しながら進み始めた。無事にたどり着くと石板にはこう書かれていた。
どうにかなるさと
くだらないことを考えて
のんびり過ごす日々
ぬけだしたいと思った
まだまだこれから先があるのに
はばたきたい
うしろを振り返らずに
そしてどこまでも
「セルス、何だろうこの文章?長老が用意したことは確かだろうけど...。でも、元勇者だから魔法使えるし、いつでも好きな時に色んな場所行けるだろうにな〜。」
「そうだよね...。これと毒の沼と何の関連性があるんだか...。完全に長老の願望。」
「でも、セルス。この中の『まだまだこれから先があるのに』って言う文は流石に変だ。他に読み方があるんじゃないのか?縦に読むとか...どくのぬま!」
「はうそ!どくのぬまはうそだ。つまり偽物なんだよ!」
「それって今見えている毒の沼は僕たちが見ている幻覚ってことか!もうこれは飛び込んで確かめてみるしかないな!行くぞセルス!」
「えっ、ちょっと待ってヨシヒコ!」
ヨシヒコとセルスは走って自ら毒の沼に飛び込んでいった。
3で正式にこのシリーズを終了します。