ぐびぐび酔っ払い
「この出会いに、かんぱーい!」
大分クサい台詞を言いながらグラスを持ち上げる遥さん。俺も軽く上げ、一気に煽る。
「っはー!やっぱりビールは美味しいねえ」
おっさん臭い事を言う遥さんに、俺は苦笑いを返した。ビール缶をグラスに注ぎ、ぐびぐびと消費していく。酒が強いと言うよりは、呑兵衛っぽいなあ、と思いつつ俺もビールを消費していく。
「ねえ、慶珸君は何で家出したの?」
会った時よりも少し上機嫌で明るい遥さんに絡まれた俺は、無言で缶ビールを飲んだ。
「んー…家出じゃなくて、実は勘当されたんすよ」
この台詞を言ってから、しまったと思った。
(一晩泊めてもらうだけの人だから言ってみたけど…なんか、悪い気がする)
勘当されたから彷徨って、泊めて貰って。恩恵受けまくりなのに、何の恩返しもせず暗い話だけをして寝てまた彷徨う。そんな思考を巡らせ、思わず
「すんません、今の忘れてください」
なんて、墓穴を掘るような言葉を言ってしまった。
「…勘当かあ。なんだってそんな風になったの?」
だが。遥さんは気にせず続きを促した。思ったよりも酒がまわってるのか、少し顔が赤い。
(酔った勢いで忘れてくれればいいなあ…)
そんな事を思った俺も大分酒がまわっているのか。事実をありのまま話した。
「勘当された理由って…俺の性癖に関係あるんすよ」
「性癖い?なに、女子高生のパンツでも食べるの?」
「それも大概酷いっすね。っつかどんな発想でそれが出てくるんすか…」
ケラケラと笑う遥さんに呆れる俺。この人、絡み酒の人だ。明日にはもう別れるけど、覚えておこう。絡み酒の人とは関わりたくない。
「俺…実は、バイなんすよ」
「バイってことは、あれか!同性愛者かあ」
「そうすね。ゲイよりのバイですね」
「おおー。初めて見たよぉー」
更にビールをグラスに注ぐ遥さん。どんだけ飲むんだこの人。
「バイだってバレて、勘当されたんだ。可哀想に」
本気で哀れむような声を出す遥さんだが、イカをつまみながら言われても全然説得力がない。
「まあ、彼氏がいたんで、折角だし同棲しようと思ったら」
「逃げられたんだあ」
「……はいっす」
正確には、俺は騙されていたわけだ。全財産を貢ぐだけ貢いで、ぽいされたのだった。それは言わないでおく。
「可哀想な慶珸君!これからどうするの?」
「バイト増やして、給料日まで待ってから賃貸探しする予定っす。それまではどこかふらふらしときます」
「ふーーーん」
グラスに注ぐのが億劫になったのか、ビール缶にそのまま口につけてグイッと飲むと、ヒヒヒと笑って言った。
「じゃあ、家が決まるまで、家にいればいいじゃーん!」
「…は?」
酔っぱらった遥さんの声は陽気で、俺の声は果てしなく間が抜けていた。




