ふらふらホームレス
秋の気だるい日。俺は一人で道をふらふらと彷徨っていた。
(あー、ヤベーな。家、どうすっかなあ)
事の重大さを良くわかっている筈なのに、軽く考えてしまう。家が無いなんてシャレになんねえぞ。ホームレスかよ。俺、一応大学生なんだけど?
そんな事を思いながら、ふらふらと歩き続ける。荷物は軽い方がいいと、リュックとキャリーバッグだけを持っている。見た目はただの旅行者か何かだが、今の俺はそこら辺に寝転がってるオッサンとそうそう変わらない。
混雑した道を足りない脳みそで思案しながらひたすら歩く。
(金はねえしなあ。バイト代、全部アイツにやっちまったし。不動産屋は金のねえ奴は相手しないよなあ…)
ぐちぐちと考えながら、歩道をひたすら歩く。
がこん。きゃっ
「ん?」
声のした方を振り向いてみる、と。
「どうしよう…」
物凄く背の低い女性が、困っていた。
人混みは彼女をシカトして前へ前へと進んでいる。都会に来て3年足らずな俺は、その女性の方へと歩を進めた。
「どうかしま…」
したか。と言おうとした。けど、言えなかった。
人混みに紛れていて、全身までは見えなかった。
「あ、すみません。車輪が溝にはまっちゃって…」
物凄く背の低い女性は、実はそうではなく。
車いすに乗った女性だった。
「あー、それは大変ですねえ」
俺が。
(いやあ、まあ、まさかだよなあ。車いす。車いすって。こんな若い女の人が?車いす?てっきりヒールが嵌っちゃったのかと思ったよな。あーあ。)
脳内では冷めきった俺だが、表面上は優しくて紳士的な俺。
「車輪、出しますね」
「ごめんなさい」
「いえいえ」
表面に仮面を張り付けながら、車いすの車輪を溝から出してやる。
(早くここから逃げたい)
なんでだかはわからない。でも、なんだか嫌なのだ。
「ありがとうございます。出来れば、お礼をしたいんですけど…」
「ああー、いいですよ、別に。気にしないでください」
できれば、あんまり関わりたくない。それが本音だ。
「…旅行か何かですか?」
「ええ、まあ。でも、金なくて。今、泊めてくれる人を探してるんです」
それで忙しいから、さようなら。
なんてことにはならなかった。
「じゃあ、家に来ますか?」
ジーザス。アメージング。
「え、でも、悪いです」
「いいんですよ。こんな身体じゃ、家も広くて、気持ち悪いんです。お礼もしたいし、ダメですか?」
「いや、ありがたいんですけども、その」
俺たち、一応男女ですよ?
「こんな身体の人に乱暴をしようとする男の人が、こんな道の往来で歩いてるわけないじゃないですか」
いやいや、わかりませんよ。案外、近くにいたりするもんですよ。
そんな事を思いつつも、仮面をつけて微笑む。
「…じゃあ、一泊だけ。すみません」
「いいえ。じゃあ、家に案内しますね」
そう言って女性は車いすの車輪を両腕で目一杯押す。俺もそれに続く。
「わたし、山口遥。よろしくね」
「大谷慶珸です。よろしくっす」
俺はこの時は呑気に、ラッキーとしか思わなかった。
この車いすの女性をと、あんな事になるなんて、全くの予想外だったのだった。
短編連載で御座います。本当はただの短編にしたかったんですよ^p^
前5,6話ぐらいの予定です。本当に!
今日はもう無理なので、また後日。




