リストの生家
そこまで丁寧に調べてないです。
旅行の次の日の朝。
「んーー!」
僕は大きく伸びをする。そして、旅行に行っていることを思い出す。
「ああ、そうだ、ハンガリーに来ているんだった」
僕はまず顔を洗い、母を揺り起こす。
「母さん、起きて。」
母は、一旦伸びると、むくりと起きて来た。
「潤、早いのね……」
「いや、母さんが遅いんじゃない?」
時計を見る母さん。
「あら! もう8時ね……」
母さんは、ちょっと笑うと、言った。
「さあ、朝ごはんを食べに行きましょ。お父さん、入り口で待ってるわよ」
「え?」
扉を見ると、父さんが待ちくたびれたように立っていた。
「おー、豪勢!」
父さんが言った。
ホテル内にあるレストランは、ビュッフェ形式で、色々な物を食べられるようになっていた。
「お父さん、いくらなんでも取りすぎ」
母さんが父さんを冷たい視線で睨んでいる。
か、母さん……いくらなんでも怖いよ、こっち見てなくても威圧感が……
僕の心情を察したのか、母さんは表情を和らげた。
「おい、潤が怯えてるぞ、どんなだけ怖ええんだお前は」
父さんが笑いながら言った。
母さんも、ふふふと微笑んだ。
「あなたが怯えることないのよ」
朝ごはんを食べ終わると、母さんが促した。
「さあ、観光に行くわよー」
計画では、これからリストの生家に行く予定になっている。
何があるかとても楽しみだ。
タクシーに揺られて数時間。リストの生家に着いた。
「おおー」
思わず声をあげてしまう。
自然豊かな中にある銅像や、白くて綺麗な家。
この中に入るのかと思うと、胸が高まってきた。
「し、失礼します」
おずおずと中に入る。
お父さんが含み笑いをしていた気がするのは嘘だろうか。嘘であってほしい物だ。
「おおー、凄い」
またもや声をあげてしまう。でも、中には様々な物、ピアノなども飾られていて、とてもこじゃれた雰囲気だった。
そこで、今までの緊張とか全て吹っ飛んでしまった。
中に入り、様々な物を見学した。
これをリストは使ってたんだなと思うと、胸が熱くなってくるのを感じていた。
この気持ちは何なのだろう。リストとその曲が、今まで以上に好きになった気がする。
あ、そっち系じゃなくて。
それは置いといて。
この素晴らしいものを見学しているうちに、ピアノが弾きたくなってきたりした。
もちろん我慢しましたよ? でも、ハンガリー狂詩曲第二番は、絶対に完成させようという気持ちになれた。それは、大きな収穫だと思う。
……と、親とはぐれてしまった。
なんてドジなんだろう……
結果的にはすぐ見つかったが、なにか釈然としない……
この年ではぐれるんだしね、あはははは。
まあいいや。
「母さーん、そろそろ帰ろうか」
母さんに声をかける。
「ええ、そうね。お父さん、帰るわよー」
「あ、ああ。帰るか」
お父さんも大丈夫な様だ。
またタクシーに揺られ、僕はホテルまで帰った。
あ、もちろんその後ピアノ弾きまくりましたよ? エッヘン。