和解?と決断
「大体母さんだって父さんだって僕の実力あんまりわかんないんじゃないの?」
父、母「あ・・・」
「ほらみろ!そういうことにいちいち口出ししないでよ!こっちには迷惑なんだよ!め・い・わ・く!」
父「う~ん」
お父さんもお母さんも黙って腕を組んでいる。う~ん・・・さすがに言い過ぎたかな?
・・・
母「じゃあいいわよ。後で無理~って泣くのはあなたなんだからね!潤!」
父「うむ!」
ふぅ~。何とか聞いてもらえたよ。けれど、素直に聞いてもらえてはないな。半分投げやりな感じだったからね。
なんとなく居心地が悪かった僕は、さっさと部屋を出て、ピアノがおいてある自室へと向かった。
ふぅ~。落ち着いてと・・・
タターン・・・ ピアノの音は響く。どこまでも・・・
~次の日のレッスン~
先生「あら?なんかうまくなったんじゃない?オクターブもしっかりしてるし、強弱もいい感じよ。この調子でがんばってね。」
「先生!ありがとうございます!」
キタ~!先生にほめられた!昨日のことがあったからなぁ~。
先生「そうそう、ここはもっとこうでここもこうでここももうちょっとこんな感じに・・・」
うぐっ!やっぱり先生は先生だった・・・。
この先生はやたらこだわるのです。
帰るとき
先生「じゃあ、頑張ってね。あなたならできるわ。信じてる。」
うげっ! いつでもどこでもこうなるなぁ・・・
でも、みんなの期待に応えたいな。頑張ってみよう。もう悩まない。僕が、あの曲を弾くんだ。
僕は、絶対に弾く。あの大曲をノーミスで・・・
その日から毎日時間が許す限り練習した。そして、すごく弾けるようになった。そう、まだ発表会が、
7ヵ月後
だということも忘れて。
そして・・・
先生「まだ7ヵ月後なのに、すごいわねぇ。あと一曲、弾けるんじゃない?そうだ!あなたがこのスピードでいけるなら、あれも弾けるわよ!リストの超絶技巧練習曲集の第六番「主題と変奏」!」
うぐっ!せ、センセイ・・・ひどい・・・
「い、嫌ですよぅ・・・」
先生「じゃあ、リストの超絶技巧練習曲集第三番「マゼッパ」とかは?」
センセイ~(泣)
「無理です~」
先生「じゃあ、自動演奏のためのサーカスギャロップ・・・」
「先生、それは人が弾く事を前提にしていません!」
先生「じゃあ、ショパンのエチュード作品十全部とか!」
「先生、それは覚え切れません!」
先生「じゃあラヴェルの水の戯れ?」
「えぇ~・・・」
先生「じゃあ、ケージの4分33秒・・・」
「先生そういう意味じゃ・・・」
・ ・ ・ ・・・・
先生「じゃあ何がいいのよ?」
じれったそうに先生が言う。
うっっ・・・正直わからん・・・
「う~ん・・・」
よし。
「先生。僕はほかの曲を弾こうなんて夢にも思いません!」
しばしの沈黙の後、
先生「えっ・・・それはどういう・・・」
と、先生は言った。
先生の顔は思いっきりひきつっている。
「つまり、この、『ハンガリー狂詩曲第二番』を極限にまで鍛え、誰もが目を見張るすばらしい演奏をするということです!」
先生「う~ん・・・」
先生「ほんとにあなたはそう思っているの?」
「もちろんです!」
微妙な空気が流れる。
先生「そこまで言うなら・・・わかったわ。」
「ありがとうございます!」
先生「そのかわり・・・悪魔の修行が待っているわよ・・・!」
ぐぇっ! センセイ怖い・・・。
先生「じゃあ・・・あらいけない。もうこんな時間・・・じゃあ、さようなら!次は・・・しごき特訓するわよ!」
「は、はあ」
といって、僕は部屋から出て行き、家へ帰った。