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三の舞

私は、こんなに早く走ったのは初めてかもしれない。

ものすごい勢いで、私は学校に向かっていた。

学校に行けば、何か分かるはず…そう信じて。



学校の正門の前に、誰かが立っている。

言われなくても分かる。

――あの関西人だ。

なんであんなところに立っているのだろう。

まるで、私がここに来ることを知っているかのように感じた。

ふと、関西人と目があった。関西人はにかっと笑った。

「やっぱり来よったわ」

「…何でここに来るってわかってたの?」

「なんやろうな…俺の勘って奴やな」

――何をいっているんだこの関西人は。

私は大きくため息をついた。




「あんたは刑事か何かなわけ?」

勘って何よ・・・と私はため息をついたけど、関西人は、ただ楽しそうに笑うだけだった。

「どや?思い出したか?」

「おかげさまで。」


そう、私は上原雪乃。そして楓。

楓はお母さんで、お母さんは私で。


でも、思い出したって分からないことがある。


「何であんたは私が『楓』で『雪乃』だって知ってるの?」

関西人は笑ってるだけで答えてくれない。

心眼を持ってない私でも、こいつが何かを知ってるのが分かる。

絶対知ってるんだろうけど・・・・でも教えてくれない。

「ま、そこは企業秘密っつーわけや。」

「意味分かんない。」

唇に人差し指を当てて言う関西人を、私は睨みつけながら軽く殴った。

何だが今すぐ帰って寝たい気分になってしまった。

あんたのせいだ、関西人。


でも・・・・「いたー乱暴やわー。」とか何とか言ってる関西人の目が、私を見ているんじゃないって気がついたとき。

私の後ろにある、何かを見ているんだって分かった時。

何故か私は、その「何か」がとても気になった。家に帰るとか関西人のこととか全部吹っ飛ばして。

だから振り返ろうとしたのに――


「お~っと!まだあかん。」


・・・目の前がまっくらになった。というか、目隠しされた。

関西人の手か。

「ちょっと、外してよ。」

「あかんあかん。まだお前には早い。」

何がだよ。

心の中でそうツッコミながら手を外そうとするけれど

やっぱりそう簡単に外れる訳なくて。

「・・・・・・もう後ろ向かないんで外して下さい。」

「はいはい。」

やっと視界が明るくなった時、私は関西人と向き合っていた

こいつ・・・私に目隠ししてる最中に回りこんだな。

結局後ろにあったものは見えず、ただ目隠しされただけか・・・

ていうか、目隠しって・・・・・。私は何恋人同士みたいなことやってたんだろう。

今更ながらに顔に熱が集まっていくのが分かったが、それを悟らせないように背筋を伸ばして、私は聞いた。


「何で、私のことを知ってたの。」


質問というより、詰問に近い口調。

でも関西人はめげることなく、笑っていた。


「そうやな・・・・じゃあ月曜日に学校に来ぃや。

 ええもん見せたるわ。」


月曜日は創立記念日で休みだ。

何でわざわざそんなに日に?何があるの?

疑問は多々あった。だが――


「めっちゃきっれーなもんやから、楽しみにしとき!」


そう言う彼の笑顔が

誰かにすごく似ている気がして

私はつい頷いたのだった。


そして日曜日。彼との約束の前日である。

私の心はいろんな気持ちを抱いていた。

不安、緊張、焦り、そして喜び。


でも。もう逃げようとは思わなかった。

すべての謎が解き明かされるー

そんな日を待っていたのかもしれない。


当日。月曜日。

関西人は何時と言っていなかったけれども多分大丈夫だよね。

彼の事ならなんとかなる。


その予想は当たった。

私が着いた時、すでに彼はあのソメイヨシノの下にいた。

もうじき、桜も散り終わる。


「やっぱり来たか」

関西人がつぶやく。

冷静な顔つきをして。


「洗いざらい、すべて教えてもらうまで帰らないわよ!」

つい怒り口調になってしまう。

速く真実を知りたい。その一心だった。


「じゃあ話そうか。」

といって関西人は話し出した。


お前は一年前、「上原楓」という名前で俺に会った。一人称が「僕」で、最初は男と自分を思っていた。

でも俺が矯正した。そうだろ?

でもな、通常みんなも覚えているだろ。「楓と同じような奴が名字が同じで来ている」と。

が、みんなはそれを覚えていない。そんな質問なかっただろ。

さらにだ。 戸籍登録上はお前は「上原雪乃」なんだから、クラスで楓と名乗れるわけがない。

どう考えたってそれは無理だ。

でも、制服は完全に女子の物だったし、ほとんどその時に誰ともあんまりしゃべってなかったからな。

お前はかなり外見変わったよ。

あのちびっこくて140あるかないかのミドルヘアーですこしぽっちゃりしててロリコンに受けそうなお前が。

いまや165に近いほっそりとしたロングヘアーの「お姉さん」キャラ。

顔もかなり変わったし、大体普通男子でもそんな成長しない。

まさかそんな奴が同一人物だとは誰も思いもしねーよ。

が、俺は一つだけ共通点を見つけた。

お前の眼だった。

お前の優しくもありキリッとしたその眼。

俺は、それが大好きだったよ。



急に関西人に鏡を差し出された。

「?」

覗きこんでみると、そこには人の姿。

私ではない。私にそっくりだが、ちょっと違う。

後ろを振り返ってみると、女の人の姿があった。

「お、お母さん…?」

昔写真で見たことがある。

「お母さん!!」

必死にお母さんのもとに走る。

でも。体がすり抜けてしまう。

何回やっても。何回やっても。

「お母さん、何で触れないの!?」

そこでお母さんが初めて口を開く。

「雪乃、落ち着きなさい。私は貴女にもう一回あえてうれしいわ。」

「うん、私も! でも、どうして?」

「雪乃はわたしがいなくてさびしい?」

「おばあちゃんや周りのみんながいるからさびしくはないけれど、お母さんやお父さんがもっといたら…」

「そう、よかった。お母さんはすこし様子を見に来たのよ。でも、もうすぐ戻らないといけないわ。」

「え、ちょっと待ってお母さん!」

「さよなら、雪乃。お母さんは空から見守っていますよ。」

「待って!!」

その願いは叶わなかった。お母さんは塵となり、風に乗って消えてしまった…。


関西人が呆けている私に言う。

「な、金曜日目隠しした訳が分かったやろ。」

「分かったけど…。 なんであの時私に教えてくれなかったのよ!せっかくもう少し会えたのに!」

「どうせ会える時間はいっしょなんや。そしたら教えたらおもろーないやろ。」


そんなじゃれあっている中、最後の桜吹雪が流れて行った。

もう、春も終わり、夏。

結局分からない事もあったけど、それはあえて聞かないことにした。



そんなこんなで二年間。

卒業式の日まで、最後まで分からなかったことがあった。

「なぜお母さんはあの時来たのだろう? なぜあれ以来会えないのだろう?」

「関西人はいったい何者なんだろう」

この二つだ。


この美しい国の北側に位置するこの都市の特徴でもある、雪解けの水。

この雪解けの水がこの都市を農業で有名にした。

そしてこの桜。

この桜も雪解けの水を使って大きくなったのだろう。


その下に、あの関西人がいた。


「おーい!」


私は関西人のもとに駆け出して行った。


fin.

読破お疲れさまです。いかがだったでしょうか。感想書いていただけるとうれしいです。




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