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賢者様、極大魔法程度では沈まない

異世界モノの、もう少し教訓めいたものを書こうと思ったら、ただのスケベじじいの話になってしまった。今のとこは。でもちょっと抑えの利かないお嬢さんは出てきたので今のところはまあ良し。いや、若いのに極大魔法までおさめた頑張り屋さんなんですよ。

 私の住まうここ、ドレファス神聖王国には、古来勇者の伝承が伝えられ、その勇者と共にこの地を、世界を救ったという聖女様が厚く信仰されている。この国の初代国王陛下は、名高き聖女ドレファスと共に幾万の魔族を退け、魔王を打ち破り、そのくびきから罪なき民衆を救い出し、ここに、神のしろしめす王国を打ち立てたのだ。それ故に神聖王国。勇者はそのまま聖女と婚姻を交わし、王家の礎を作ったのだという。そして聖女は、代々国が荒れるとき、異界より渡り来るのだという。異界、ここではない場所。そこから来た聖女は、様々な異界の知識で、病人やけが人を癒し、その聖なる力をもって奇跡を行ったという。普段の生活から、政治経済に至るまで。軍事面にすら長けたその才能は、遍くこの地に、今も鳴り響いている。各地域にある神殿の聖女像にその姿を遺す神々しきお姿は、若い娘たちの、時には若者たちのあこがれと崇拝の対象であり、何人たりとも犯しえない神聖なる存在である。

 私自身も聖女様に憧れ、その教えと言われる様々な教会の逸話を日曜学校で神父様よりお聞きするが楽しみだった。普通なら、父母が日ごろのお祈り等の際に子供たちに語って聞かせる事だというのだけれど、私にはその父母がいない。生活の面倒は、一緒に暮らすおじいさんが、と言うよりおじいさんの周りの人が、みてくれた。うちのおじいさんは・・・。


 今を去ること10年ほど前、ドレファス神聖王国の北方、かつて魔王の城があったと伝わる深い山の奥に、突然、巨大な城と多くの魔物が現れ、近燐の村々が襲撃されるという事件が起きた。魔物どもの咢が麓の町に伸びんとしたその時、天空より神の声が響き渡り、一閃の雷が轟いたかと思うと、その後の地面に降り立つ影があった。それが現聖女であるサツキ様である。魔物どもを迎え撃たんとした国の第一王子たるリチャード様と彼が率いた王国の精鋭たちともども、盛んなる士気と類まれなる統率力、そして突然降臨した聖女の勇気ある言葉と聖なる力に支えられ、王国軍は瞬く間に地域の支配権を取り戻し、魔物どもを一掃したのであった。その戦いには、多くの王国兵と冒険者ギルド、魔術師ギルドの精鋭も参加し、一体になって国の防衛と魔物たちの討伐にあたり、多大な戦果を挙げたという事だ。その中にはおじいさんもいた、という話なのだが、どうにもその辺が判然としない。戦いに参加した多くのものがその後も一線で活躍する、官軍なら王国騎士様に、民間人なら著名な冒険者になった例は数多あるのだけれど、魔術師であるといううちのおじいさんは、今も訪う人はあれども、国からの褒章を頂いているという事もなく、冒険者・魔術師の各ギルドの所属者リストにすら実はその名が載っていない。これは長じて王国の官吏になることが出来た私が手づから調べて確認した事実である。おじいさんは、戦いに赴き、手傷を負ったため、動けなくて寝たきりなんだと、事あるごとに私に話して聞かせてくれた。時折やってくるおじいさんの知り合いと称する幾人かの人々も、いつも最初は驚いた表情を浮かべるものの、いつもj否定も肯定もせず、おじいさんを称賛するのみで、いつも何らかのお土産を持ってきてくれるものの、昔の戦いについてついぞ話してくれることは無かった。だから私は、そう、幼少の私はこのおじいさんを守って生きて行かなくちゃ、とずっと思って生きてきた。いつもベッドに横たわり、幼い私に色いろなアドバイスをくれるひと。本当の肉親ではなくて、戦場で取り残され、泣いていた私を拾ってくれてここまで育ててくれた大恩人。そんなひとを放って自分だけ幸せな家庭を営むことなど出来るわけがない。日曜学校の神父様にお願いして、勉強も武術の鍛錬も欠かさず、出来る限りの努力は惜しまずに、ついにはうちの村から唯一お城勤めを許されて、任官したその日に、おじいさんは言ったものである。「そんなことして、何になるんだ?」と。「それで幸せになれるのか?」と。だから私は意地になって、「立派な女官になるもん!」といって家を出て、3年ほど王都の寄宿舎に身を寄せながら、城勤めをしてきたのだけれど、ある時、私たちが住んでいた村の代官で、時折おじいさんの元へも顔を出していた人物に再会して、気になることを言われたので、そっと離れていた我が家を除きに行ったところ、近郊の飲み屋の踊り子然とした綺麗な人がおじいさんのベッドに腰かけて何か迫っているようだったのを目撃してしまい、勢いのまま邪魔に入り、そのまま勤めを辞めて、おじいさんとまた同居を始めたのである。お城の給金は意外なほど高く、突然の退職であったにもかかわらず退職金なるものまで頂いてしまい、何と年金まで頂けることになってしまった。おじいさんは良い顔はしなかったけれど、わざわざ来てくれた城の経理担当官様が説得に協力してくださって、しぶしぶという感じで帰還を認めてくれて、また以前のように二人で暮らすことと相成ったのである。帰宅後数週間は引継ぎなどのためお城と我が家とを行き来する生活が続いたけれど、それまでの同僚が目端の利く優秀な女性だったこともあり、無事雑事全般をこなし、晴れて育った村に帰ってきたものである。それなのに、ああ、それなのに。おじいさんは例によって普段からベッドの上で寝たきりだし、私がせっかく用意した食事には手を付けようとせず、あの時初めて会った踊り子然とした綺麗な人が持ってきてくれる食事ばかり口にしている。時々は手づから食べさせてもらったりして。何か嬉しそうで釈然としない。私は何?あなたが拾ってくれた、命を救われた女の子じゃない。一度そんな不満をぶつけたことがあったのだけれど、その日、考え込んだ、思いつめたような表情をしたおじいさんは、次の日から盛大なセクハラじじいに変貌したのであった。朝、起しに行くと、挨拶をするようにお尻に触ってきて、あろうことか撫でまわす。お風呂に入れないためお湯を汲んで身体を拭いて上げようとすると、にやっと笑って、「見るか?」などと布団をめくって見せようとする。少なくとも、お城に上がるまではそんな事をする人では無かったのに。あの踊り子さんのせい?私が邪魔をしたから?良くわからない。そんな生活が基本になってしまったある日、私たちの運命は大きく変わってしまったの。思いがけない形で。

 

 それはともかく・・・、私はベッドサイドで物思いに耽っていた私のお尻に手を伸ばしていたおじいさんの手を取って、両手で握りしめて思いきり、といっても自分では愛情を込めたつもりで捻り上げて、布団の上で知らんぷりをしているこの人に、にっこりと微笑みかけた。

「何を、してらっしゃるのですか?」

狼狽えるでもなく横たわったままで、にこやかに答える、大事な、でもとってもスケベなおじいさま。何年も寝たきりの筈なのに、意外と強い力で、私の腕に反抗してくる。もう、この人は。

「いや、のう。目の前にぷりちいなお尻があれば。触ってみたくなるのが男と言うものだよ。だから、もうちょっと優しく・・・見逃してくれんかの?」

私は少し怒気を込めて返答した。この人に、私の作るご飯を食べてはくれないこの人には、飯抜きとかそういうのは通じない。だから、これは仕方のない事なのよ。どうせレジストされるし。「しろしめすもの、炎。汝我が求めに応じて顕現せよ・・・以下略。場所は目の前のこの人。極大魔法フレア。」

「あ、こりゃ。いつの間に詠唱短縮なんぞ。ワシは教えとらんぞ。こりゃ、な  」

一瞬、眩い閃光が当たりを白く染めたと思うと、立ち昇る熱気。光が収まったその先に、普通なら生きとし生けるものは存在しえない。でもやっぱり。

「ふう。近頃の若いものはどうも、短気でいかんのう。ちと教育、間違えたかの。」

ほら、ぴんぴんしている。これだからこの人は。でもあれ、なんというか、何故、ズボンをはいてないの?え、え、

「おじいさん、なんで下半身すっぽんぽん?」

目のやり場に困るわ。なぜこんな。

「みんな燃えちゃったからのう。ふう、どうにも若いものは加減と言うものを知らぬ。お前もまた宮仕えをする時のため、なお研鑽を積むのじゃぞ。」

良い顔をしてサムズアップするおじいさん。でも大事なところはとても涼やか。もう、もう。

「おや、泣くのではないぞ。これ、悪かったから、この通りじゃ。反省するから。」

よよよ、と倒れ込む私を後ろから抱きしめてくれるおじいさん。でも・・・。

「うむ、やはりかわいいお尻だの。よくぞここまで・・・。」

これが無ければ良い人なのだけど。不安はどうしても尽きない。でも、とりあえず。

「わかってて、変なとこだけ変な風にレジストしないでよ。でないと、グーが出ちゃうよ。」

はいはい、と適当に返してくれる日常おじいさん。こんな日でも、永遠に続いてくれるならと思ってしまう私が、確かに居た。

思わず続き物にしてしまった。まだ起承転結の起ですらない。全体像は出来たんだけど、まずは書き進めんと。

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