ピエロットの独白
レディース、エンド、ジェントルマン!!
皆様、よ~こそ、ピエロの館へ。楽しんでおりますか?
私、『ピエリス』を名乗っております、どこにでも居るピエロでございます。
小さな花を咲かせる木々からお借りしている名前です、ほんの少し毒があり、皆様も見た事があるかもしれません。
おや、ご存知ないですか?ちょっとお調べになれば見つかりますよ。検索をかけてみませんか?すぐに出てきますよ。
おっと、さっさと始めろ?時間が無駄?
さてさて、仕方ありませんね。本当でしたら皆様を笑わせて場を温めるのが仕事なのですが、生憎と私はその辺りは苦手でして。
ですのでこれから私は――質問ですか?なら何故ピエロをやっているのかって?
良い質問ですね。
簡単な話、私は化粧が得意でして。
やはりこういう場、どれほど頑張ってもトラブルは起きてしまうんですよ。そういう時に場をつなぐために、私が休んでいても叩き起こされてるんです。
ほら、カメラさん寄って寄って。……はい、そうですそうです。分かりますか?これ寝ぐせ。さっきまで寝てたんです。
それにこれ、凄いでしょメイク。
先ほど急に呼び出されて、30秒ぐらいで慌てて塗ったんですよ。それでこの出来、凄いでしょう?
それで急いで準備をすると、こういう場が重い状況で呼び出されて盛り上げろと言うんです。団長も無茶言いますよね。
――化粧がおかしくないか?
素晴らしいご質問です。ピエロにお詳しい方ですか?
その通り、この化粧は『クラウン』と呼ばれるモノです。皆様ご存知のピエロはこのクラウンの一種。
大雑把に分けさせていただきますが、クラウンは笑っていて、ピエロは泣いているんです。
――場に合わない?
おかしな事を言いますね。私の仕事は悲しかったり重苦しい場面を笑えるようにする事です。
場に合わない、違うと言われようと、場の空気を換えるのが仕事なのです。損な立ち回りだと思いませんか?
……ここ、笑う所ですよ。ほら皆さん、ちゃんと笑ってください。
それじゃ失笑みたいじゃないですか。ここ笑う所ですよ、心の奥から笑いましょうよ。
さて、場も盛り上がって来ましたね。そろそろ私の出番も終わりでしょうか。
――そちらのあなた、質問ですか?
……先ほどの演者?大丈夫ですよ、病院に向かっております。
気にする事ではありません。私たちはこうなっても大丈夫なよう、普段から訓練をして、最悪を避けるように頑張っておりますから。
だからそんな質問をして湿った場にする必要はありません。ここは非日常を楽しみ、笑い、感動する場でございます。
失敗は忘れ、どうぞ次の成功を笑ってください。
それが難しいなら、私を指差して笑ってください。それが私めの仕事です。
――悲しくないのか?不安ではないのか?
私を見てください。笑っているように見えるでしょう?例え悲しくても辛くても、笑い笑われるのが仕事でございます。
この化粧は表情を隠すためなのです。
……もう、変な事聞かないで下さいよ。笑わなければいけないのに、場が重くなってしまうでしょう。
――はいはい?分かりました。こちらも大丈夫です。
……皆様、大変お待たせ致しました。次の演者の準備が完了したそうです。
はい、残念ながら私の出番はこれでおしまいです。のんびり休憩に入らせて頂きます。
それでは。
こんなどこにでもいるピエロの雑談に付き合って頂きありがとうございました。
場も明るくなりましたね。笑い声も聞こえます。
良いですよ、良いですよ。良い空気になりました。
では私はこれにて失礼させて頂きます。そろそろ席を外さないと、お給料以上のお仕事になってしまいますからね。
残業しても残業代を出してくれないんですよ。酷いと思いm――団長、舞台の端からこっち見ないでくださいよ、冗談ですから。
それでは、次の担当へとお替りします。
短い間でしたが、こんな怪しいピエロの雑談にお付き合いいただきありがとうございます。
それでは、繋ぎのピエロの事など忘れてこれから始まる本番を、
どうぞ、お楽しみください。




