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第5話 裸の勇者と半裸の戦士

「ええっと、ブラムさん……」

「ん? なんだ?」

「近いです。どいてください」

その言葉でブラムは、私との今の位置関係が近いことに気づいたようで、

「ごめんな。怖がらせちまったか」

と言い私から少し、マジで少しだけ距離を取った。


「でだ。本題の勇者様ってのはどこにいるんだ?」

「えっと、それは――」

「ここだ」


私が口を開こうとした時、どこかから声が聞こえてきた。気がつくと、いつの間にかナイトがブラムの後ろに立っていた。


――気配が全く無かった。いつの間に、て言うか何時からここにいたの? 私が口をあんぐりさせながら固まっていると、ブラムは動揺しながらも自分を勇者だと言う目の前の男に話しかける


「あんたが、勇者様……なのか?」

「そうだ。」

「俺はずっと世界を救う勇者に憧れてたんだ! 仲間に入れてくれ!」


唐突な申し出にナイトはジト目でブラムを一瞥し、一呼吸置いてからナイトは、

「断る」


――そう、断ったのだ

ブラムはお世辞にも理論的な人間とは思えない、断られても仕方がない。

断られると思っていなかったのか、ブラムは驚きの表情を全面に押し出している。


「俺結構強いし、ドラゴンとかも倒したことある! これでもだめか?」

「駄目だ」

「金だって、ほら結構あるぞ!」

ブラムはお金がパンパンに入った袋を取り出し、大きな身体に似合わない上目遣いでナイトに視線を送っている。しかしナイトはブラムを仲間にするつもりはないようで、


「必要ない」

と冷ややかに返した。そう言われるとブラムは腕を振りかぶり大声を出す。


「なんでだ! どうして俺をそんなに仲間にしたくないんだ!」

「ちょっ、ブラムさん! 落ち着いて」


周りはブラムを鎮めようと焦っている中、ナイトは「はぁ」と大きなため息を漏らしている。少し落ち着いた様子のブラムを前に、ナイトは少し腹が立った様子でブラムを睨みがら話し出す。


「初対面の人間にいきなり仲間になれと言われても即決などできるわけがないだろう」


――これ少しどころじゃない……! これ完全に怒ってますわ。ナイトは眉間にシワを寄せながら次の言葉を吐き出す。


「それに、先程お前は自分を魔物狩りだと言ったな。見るからにお前は重戦士職だ。素早く動き回る必要もないだろう、しかしお前はなぜ上裸なのだ? 鎧やチェックアーマーの一つでも身に着けていれば防げる攻撃もあるのではないか? この露出狂が。そこがお前の油断の表れでもあり、俺がお前を仲間にしない最大の理由だ」


(いや、「この露出狂が。」ってそれあなたが言います!?)

(全裸の人に言われても説得力がないと思うんですけど。)


その後もナイトの長い長い説教が続き、ブラムの表情はどんどん曇っていった。辺りが月明かりに照らされた頃にはブラムはすっかり熱が冷めたようで、両膝をつき、額に両手を当てながら少し鼻をすすっている。


「ナイトさん? さすがに言い過ぎじゃ――」

「問題ない」


ナイトは食い気味に「問題ない」とだけ言って、宿屋の方へ去っていったのだった。その場には両膝をつきメソメソと泣いている男だけが残されている。私はハンカチだけブラムに渡し、宿へ戻った。


「えっと……あの、これ使ってください」

「くっうあううっ……ありがとよぉ……ヒック……!」

「それじゃあ!」


――森での野宿よりも疲れる一日だった。

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