第4話 裸と盾と馬鹿
フィオナとナイトの冒険が始まりはや2日。ようやく村にたどり着いたようです。
今回はちょっと勉強したのでいつもよりは少し読みやすくなっているかもしれません。
村の門を抜けた先には、王都にはないのどかさのある村が広がっている。国境付近、異国の文化が取り入れられたその村は、私達の目には珍しく映る。そしてその村の村人たちの視線は皆一様にこちらに向いている。
「ここが『オオキ村』か。」
ナイトは村人の視線など気にも留めない様子でいる。
(いや、「ここが『オオキ村』か。」じゃないんだよ! 村人さんたちみんなこっち見てるよ!?)
村人たちの視線が痛い。
「ねえ……あれって」
「ええ、噂の勇者様ね」
「しかも裸で……」
村人たちのコソコソ話が聞こえてくる。私は気恥ずかしさに顔を赤くしながらナイトに尋ねる。
「ねえナイト」
「宿をとりに行きましょうよ。……ね?」
「うむ。そうd――」
私はナイトが言い切るよりも先に、腕をひったくるようにして宿へ向かった。
「着いたわよ。ナイト」
「ああ」
いつものように単調な会話だ。
ナイトはいつも「ああ」や「そうだな」のように一言しか話さない。会話から殆どの無駄を取り除いた最低限の返事だ。
「とりあえず、まずは宿に入りましょう?」
私がそう言うとナイトは、無言でついてこいと言わんばかりに宿の中に入っていった。私はナイトを追っかけるように宿の扉を跨いだ。
宿の扉をくぐった先には、少々年季は入っているようだが温かい雰囲気の空間が広がっている。
受付には人は居らず、『お声がけください』とだけ書いてある。私は書いてあるとおりに声を出してみる。
「すみませーん!」
すると、店の奥の方から勢いよく走る音が聞こえてくる。
「 お待たせしましたぁ!」
走ってきたのは10歳にも満たないくらいの幼い少女だった。そしてその少女は、私の隣にいる勇者の格好に驚いて固まっている。
「ええっと、大丈夫?」
そう聞くと少女はやっと脳の処理が追いついたようで、
「ありがとうございます。お部屋にご案内しますね!」
と言い奥の方へ進んで行く。
「それでは。ごゆるりと!」
少女は私たちを部屋に案内したあと、慌てた様子でカウンターの方へ戻っていった。
案内されたお部屋は温かい雰囲気のお座敷だ。部屋の中央には小さな机があり、その横には2つの布団が敷かれている。
「ねえナイト!」
「どうした」
「私達。やっとお布団で寝られるんだわ!」
「そうだな」
いつものように単調な会話が続いてゆく。話していても楽しいのだか、楽しくないのだか。私がそんなことを考えていると、ナイトは意外にも自ら口を開いた。
「よく休んでおいたほうが良い。相当疲労がたまっているだろう」
その言葉はただの仲間にかける労いの言葉だった。でも、それは初めてナイトが自分から私に話してくれた日常会話だったのだ。
「ナイトも、ゆっくり休んでね!」
「そうだな」
ナイトはいつものように最低限の言葉で返したのだった。
空の色が茜色になった頃。私は薬草やポーション、そしてナイトに着せる服を買うために街の雑品屋に来ていた。
私が回復物品の棚を見ていると、それに気づいた雑品屋の店主が聞いてくる。
「おうお嬢ちゃん。何を買いに来たんだい?」
「薬草とポーション、それと服を一着買おうと思いまして」
私がそう言うと店主は「任せときな!」と大きな身体を軽やかに動かしながら、衣服売り場に案内してくれた。しかし、私が連れてこられたのは女性服コーナーだったのだ。
「えっと……あの、すいません」
「どうしたんだ? お嬢ちゃん」
「男性用の服って、どこにありますか?」
私が尋ねると、店主は少し肩を落としながら笑う。
「なんだ、お嬢ちゃんが着るんじゃなかったのか……」
(この人はいったい何を期待していたんだろう……)
私は内心でそうツッコミながらも案内された男性服売り場の商品を眺めた。
ナイトに似合いそうな服はたくさんある。しかし当の本人がそれを着ようとしないのであれば話は別だ。多少似合わなくても着せやすそうな物を買うことにしよう。
「これください」
私がそう言うと、店主はニコニコしながら買ったものを袋に詰めてくれた。
「ポーションに薬草、あとは服が一着ね。合わせて2750マノンだよ」
私はお財布から2750マノン取り出し、支払った。私のお財布はナイトの服の料金によって軽くなっていく一方なのであった。
私がお店を出ると、誰かがこちらに近づいてくる。男だ。背丈はナイトより一回りほど小さいようで、大きな盾を持っている。それに半裸だ。
「よう。アンタがこの村に来てるって言う勇者の仲間か?」
男が私に顔を近づけてくる。
「そ、そうですけど……何か?」
ナイトが変なことをやらかしたのではないかと私の背筋が冷える。だがそれは杞憂だった。
「会えて嬉しいぜ!」
「俺はブラム・シールドハート」
「ここらへんで魔物を狩って暮らしてる」
「アンタの名前は?」
「私の名前はフィオナ・アステリオンです」
私がそう返すとブラムの顔は神妙な面持ちに変わる。何か刺激するようなことを言ったのではないかと私は内心あせる。
(え? 私、名前しか言ってないよね?)
「フィオナって言うのか……」
「いい名前だな!!」
一瞬怖がった私の気持ちを返してほしい。目の前でニコリと笑う男を見て私は気づいた。
――きっとこの人はバカなんだ。
ハッピーニューイヤー。




