第26話 吸血鬼と勇者の剣舞
「――カーンッ!」
鋼の剣と血で形作られた剣が衝突する。ヴェオスの血の剣は鎌のような形に姿を変え、俺の首を狙う。だが血の鎌は俺の首に届くことはなかった。大分ギリギリではあったが、避けられてよかった。俺は一歩後ろに下がる。
「チッ!」
ヴェオスの舌打ちが鳴る中、静かに奴の右腕に振り下ろされたのは俺の剣だった。ヴェオスは体を反らし回避をしようとするが、俺の技【ブレイブ・スラッシュ】は必中の剣技。相手が回避系の特技を使ってこなければ必ず斬ることができる。
「人間にとって腕を切断されることは致命的な怪我かもしれませんが、我々魔族からすると、『たかが腕か』という程度の怪我だ」
そう話すヴェオスは傷口から出た血を操り自分の腕をくっつける。
「ほう。再生能力が高いようだな」
「元来、吸血鬼は不死身の種族ですからね。血液だって、魔力変換することで半永久的に作ることができる」
まずいな。先程からポーションを染み込ませたマフラーを貫かれた脇腹に当てているが、一向に回復する兆しがない。相手は高い再生能力を持っているが、こちらは体を回復させることができない。この状態は奴を倒せば解除されるのか? そんな疑問が頭を通るが、こんな事を考えていても仕方がない。奴の攻撃に当たらないように立ち回ればいい話だ。
俺は一歩前に出て剣を構える。それに相対するように、ヴェオスは俺と逆の手に剣を構えた。俺とヴェオスの目と目が同じ直線上に向かい合った時、お互いに前へ踏み込む。
ヴェオスの剣は変幻自在、ぶつかり合ってもこちらが不利になるだけだ。奴の剣と俺の剣がぶつかった場合、直ぐに剣を引く方法を取ろう。
「バチンッ! カーンッ! バチッ!」
剣と剣がぶつかり合う音が何度も響く。重なる剣は徐々に重くなる。ヴェオスは狙う、胸に頭それに腹、どれも確実に急所目掛けて剣が振られる。一撃でも食らえば死ぬかもしれない。構えた剣には、そんな緊張が走った気がした。
「カンカンカンカンカンッ!」
ヴェオスの斬撃を【連撃斬】でいなしつつ、反撃の隙を伺う。ヴェオスは血の剣の連撃で俺の急所を確実に狙う。しかし逆にその事が仇となっている。急所を確実に狙ってくることが分かっているのなら、次に攻撃が来る場所を予測しやすい。
「カンカンカンカンカンッ!」
「ほらほら、大丈夫ですか?」
激しい斬り合いの中、俺の身体にはどんどん小さなかすり傷ばかりができていた。だが、俺もやられるばかりでは止まらない。ヴェオスが油断しかけており、なおかつ突きで俺の胸を狙ってきたこのタイミング。
「――バギィンッ!」
胸に一直線に向かった剣を弾き返した俺の剣は根元の方からバキッと折れている。
「攻撃を防ごうとして自身の攻撃手段まで失ってしまうとは、なんと愚かしい。やはり勇者と言えど、所詮は人間。期待した私がバカでした」
「ああ」
「はぁ。もういいですよね? 剣も折れてしまったことですし、そろそろ死にます?」
ヴェオスは首を傾げながら、俺を見下している。ヴェオスの顔を睨みながら、俺は言い放つ。
「ああ、問題ない」
「は? 何を言って」
――次の瞬間、俺は紅に染まった剣でヴェオスの首を切り落としていた。
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