第14話 完全全裸
――え? ちょっとちょっと……なにやってるの? 怖い。え? 私は心の中心から末端にかけて戦慄し、震え上がっていた。なぜならば、ナイトが急に自分の皮膚を剥がし始めたからだ。私だけではなくブラムも、そして目の前の化物ですら状況の異常さに気がついている。
「ナ、お前。ナニをやってイル?」
「勘違いするな。これは生皮ではない」
「普段から力を解放していては、日常生活すらままならなくなってしまうからな」
「0.01mmほどの厚さの、ボディスーツを着ていたのだ。」
――そうまでして全裸にこだわりたいの!? 普通に上着とかでよくない? て言うか! よくよく考えたらまだ本気じゃなかったの!? あのステータスですらあり得ないレベルなのに!? 私は驚きの連鎖に息を荒げながら、もう一度、ナイトを鑑定する。
ナイト Lv49
HP:18700/17600 MP:23400:22800
耐久力:3000 腕力:64573 脚力:32240
敏捷性:11123
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――うわ……なにこれ。私は正直、ドン引きしている。目の前の化物を超える腕力に、獣人顔負けの脚力。しかも全裸。この人はもしかしたら原始人なのかもしれない。
「ナニかと思エバ。服を脱イダだけじゃナイカ」
「期待ハズレダヨ」
「そう思うのならば、殺せば良い」
「そうサセてモらうヨ」
化物は自慢のとんでもない腕力でナイトに殴りかかる。然しナイトは化物以上の腕力に、常人の目には追いつけない俊敏さを持った勇者だった。
「遅いな」
ナイトは化物の攻撃を避け、肘で顔面に一撃食らわせた。
「イダイ! いテテテテ」
「『真の力』などと言うから本気を出してみたが。『期待ハズレ』だったな」
「グ。グォォァァァァァアッ!」
ナイトに煽られた化物はもう一度ナイトに殴りかかろうとする。だが化物はその行動を取ることはできなかった。化物が拳を振り上げたその時、ナイトは化物の頭部に踵落としをお見舞いした。ナイトは同じような手に何度もかかるような勇者ではない。
「行動が単調だ。それ故簡単に軌道が掴める」
「グヌヌヌヌ……!」
化物のグチャグチャになり、表情など関係なくなった顔の表情は憤怒に満ちていると、それは迷わずに分かる。然しナイトはそんなことなどお構いなしに、どこかから取り出した剣で、化物の体中を切り刻んでいく。辺りは血に塗れ、腕は何本か飛び、残ったのは息も絶え絶えの化物だった。化物は固唾を飲み込んで、話し出す。
「コレは最終手段デシた。」
そう言った化物は最後に残った腕の一本にある指をパチンッ! と鳴らした。すると、天井も壊れ、雨ざらしになった医務室の入り口から、一目見ただけで、兵士と分かる格好の魔族が入ってくる。縛り付けられた子供も一緒だ。
よく見ると連れてこられたのは、ブラムに毒を盛った少年と、船に乗る前私達についてきた少女だった。首に剣の刃を当てられた子供達は号泣している。
「うわーん! おいら、もう悪いことしないから許してー!」
「ヒッグ、ヒッグ……お金盗んじゃって……ごめんなさい」
「コノ子供を殺サレタくなかっタラ。剣をオケ」
「ほう。人質か」
ナイトは一瞬、子供を真顔で見つめた後、剣を地面に置こうとする。
ちょっとちょっと!! 何やってるの?? 理論的に考えて、相手の思うつぼじゃない!?
「ナイト駄目! 理論的に考えて」
「ここであなたが死んだら、魔王は、世界はどうなるの?」
ナイトは私のそんな言葉を無視して、剣を地面に置く。
「子供の命ヲ選んだカ。ダガ、その決断ハ痴カだゾ?」
「ああ。そうだな」
「――問題ない」
そう。ナイトが剣を置いた瞬間、兵士が子供の喉元に向けた剣を緩めた一瞬をナイトは見逃さなかった。ナイトはいつの間にか、魔族の兵士の前に立っていた。そして、さっきまで生きていた魔族の兵士はこの一瞬で、自分が死んだことに気づかないまま、死体へと変わっていた。
「期待ハズレな『真の力』を解放した上、最後にやることが、人質とはな」
「な……ナゼ、ナゼお前ハそんな一瞬で生物ヲ殺すコトは不可能だ!」
「俺は、魔王を倒しに、旅をしている勇者だ」
「そんなコトは聞いテいない! ナゼお前はコの一瞬で、そんな事ができた!?」
ナイトは自分で地面に置いた剣を、拾い上げ右手に、持ち替える。右手に持ち替えた剣を今度は、化物の頭部に向けた。
「相手に手札を見せるマヌケがどこにいる?」
ナイトが化物への返しに使った言葉……。それは化物がブラムに対して言った言葉と同じものだった。ナイトは、化物にトドメを刺そうと剣を振り上げる。
「ヤメロ! オレを殺せバ、外に待ツ兵士ガ乗客全員をコロすゾ」
「安心しろ。そいつらなら、すでに殺してある」
その言葉に、表情が分からないはずの化物の顔は、絶望に歪んでいる。歪んだ顔をさらに歪めるようにナイトは技を放った。
「勇者奥義・其の一」
「ヤメロ! やめてクレ! 殺さなイデ」
「ブレイブスラッシュ」
「イヤだ! 死ニタクナイ!」
その場に残ったのは、化物の残骸の一部と、耳をつんざくような断末魔だけだった。
「私ハただ。お遊ビ、したかった、だけな……の……に」
その断末魔に、虚空に向かって、ナイトは返事を返す
「人間はお前のおもちゃではなかったのだ。仕方がないだろう」
――ナイトの返した声は、雨音とともに、海の底へ消えていった。
ピエロさんの設定を活かせず仕舞いだったので、ほかの四天王戦はもっと、見応えを作れるように頑張ります




