第11話 死
「あなた方をサツ害サセていただきマス」
道化の男が私とブラムを交互に見つめながら、ニヤリと不快な笑みを浮かべた。その笑顔には背後から冷気が這い上がっているような、そんな不気味な感覚がする。
「やってみろよ。俺の盾で防いでやる」
「属性盾!」
ブラムが私と道化の間に立ちはだかった。ブラムは盾を構えると、【属性盾:氷】の特技を発動させる。瞬時にブラムの盾の周りに、魔力の冷気が集まった。
「面白い技デスネ。氷の盾デスか」
「デスが。相手に手札ヲ見せルのは、あまりよろしクありまセンヨ」
――何かまずい!
私がブラムにそう伝えるよりも先に、道化が攻撃を仕掛けてくる。
「――お遊びノ時間。ダヨ」
道化は私達の方向に三つの球を投げつける。その球の色は前から順に緑、青、赤。ブラムが一つ目の球を盾で受けると、その球から大きな木の根っこのような物が解き放たれる。解き放たれた根っこは盾に絡みつき、ブラムから引き剥がそうとしているが氷の盾で根っこの表面が凍結し、盾を取り上げるには至っていない。
続き、青い球が私の方に迫ってくる。【攻撃魔法】で球を破壊すると、中から水がものすごい勢いで噴射される。放たれた水は、私の後ろのベッドを容易に切断する。
(回避が遅れていたら、きっと無事では済まなかった。)
次にはブラムめがけて、赤い球が放たれた。一直線に向かうその球を私が【攻撃魔法】で粉砕すると空中で爆発を起こす。ブラムに直撃しなくてよかった。
「助かったぜ!」
ブラムが引き剥がした根っこを【火炎魔法】で焼き払う。道化はいつの間にか持ってきていたポップコーンをつまみながら、私たちを嘲笑している。――完全に舐められている。
「どうする? あいつ、俺らより圧倒的に格上だぜ?」
「あの道化が私たちを舐めているうちはきっと大丈夫なはず。」
「ナイトが戻ってくるまで私達で耐えしのぐわよ」
私が瞬間的に思いついた作戦をブラムに話していると、ブラムの顔色は青白くなっていき、足取りもおぼつかない様子で、しゃがみ込む。
「悪ぃが……無理そうだ。」
「身体が震えてよ、うまく足が動かねぇんだ」
ブラムの呼吸は荒く、ガクガクと震えている。――まさか、毒が効いてきたんじゃ!?唇を噛み締めながら鑑定を使うと、ブラムの状態には【麻痺】と表示され、その後すぐに【気絶】に変わった。
(まずい、この状況で一対一は本当にまずい。)
私は焦りで身震いしながらも、杖を構える。道化も同様に球を構えて、私の顔をみながらニヤニヤと口角を上げている。
「今にモ、逃走しタいでショウ。ナノにアナタは立ち向かっていル」
「私アナタを気に入りました。ナノで、せめて苦しまなイヨウに殺ガイしてあげまス」
道化は四つ同時に球を投擲する。私はそれを全て撃ち落とすと、反撃に出る。
「マジックショット!」
然し、道化は私の撃った魔法の弾丸を全て軽快なステップで回避していく。気がつくと道化は私の眼前にいる。
「爆発シテ消えチャいまショウ」
「紅蓮球」
道化は私の目の前に、一つの球を浮かせ一歩後ろに引く。瞬間的に思考能力が加速し、私の理論には一つの結論が導き出された。圧倒的な力には勝つことはできない。
――私、死ぬんだ。




