第9話 全裸乗船
早朝、村の村長からドラゴン討伐依頼の報酬を受け取ったあと。私達は村を発ち、港に向かっている。魔王の居所である『魔王城』は、今私たちのいる国の一つ海の先へ渡らなければ行くことのできない場所にあるらしい。
「おい。見ろよフィオナ!」
「海が見えるぞ! 俺、海って初めて見んだよ!」
「そう。よかったわね」
海を見て燥いでいるブラムに私が返した返事は、どこか全裸の男を彷彿とさせる。もしかしたら少しだけ私も影響されてるのかもしれない。私はそんな事実に気づきながらも、そんなことはないと自分に言い聞かせた。
「フィオナ。気をつけろ」
ナイトはそう言いながら、視線を後ろの方にやっている。つけられた時のサインだ。私はこっそりと【死角を確認する魔法】を発動させる。
私たちをつけていたのは魔族でも、怖いおじさんでもなく、小さく見窄らしい姿の幼女だった。大きい声のブラムは海に夢中で気づいていないので、私はナイトの耳元でコソっと状況を伝える。
「小さい女の子だったよ」
「何のためについてきてるんだろう?」
「問題ない。粗方予想はついている」
ナイトはどこかから銅貨を1枚取り出し、わざと地面に落とす。落ちた銅貨から私たちが少し離れたところで、少女は銅貨を回収した。そう……物乞いだ。
「やはり物乞いだったか」
「どうする?」
「別についてこさせても問題ないだろう。放っておいてやれ」
「わかった」
別に私達に不利益はないので、放っておくことにした。ちなみにブラムは海に夢中とか関係なく、少女のことに気づくことはなかった。
港に到着した私たちは外から少し見える船に期待を寄せている。定員200人ほどの客船だ。私とブラムが船を眺めている中、ナイトが無言でどこかに行こうとするので、呼びとめる。
「ちょっと待ってよ。どこ行くの?」
「交渉だ。無料でこの船に乗る」
「この船はよく利用している。それにこの船の船長も俺のことは少なからず耳にしているだろう」
「待ってよ。私もついてくから!」
私は船の近くで跳ね回っているブラムを引っ張ってナイトを追いかける。ナイトはどうやら船員と話しているようでその会話が聞こえてきた。
「ええっと……あなたは一体?」
「どうして裸なのでしょうか? ぜひお答えいただけると嬉しいのですが」
「俺は魔王討伐に向かう勇者だ」
「それはそれは、勇者様でしたか。ところで乗船券はお持ちでしょうか?」
「持っていない」
「そうですか。では申し訳ありませんが、あなたを当艦にお乗せすることはできかねます」
「俺は魔王を倒しに旅をしている勇者だ」
「ですから、あなたを当艦にお乗せすることはできかねます」
「俺は魔王討伐を任命された勇者だ」
「あの? 話……聞いてます?」
「俺は魔王を倒し、世界を救うため旅をしている勇者だ」
そんな平行線な会話を私とブラムで見守ること10分弱。会話が終わり、戻ってきたナイトの手には3枚の乗船券が握られている。ナイトは自慢げに、
「乗船券が手に入った。さっさと行くぞ」
などと言っている。そんなナイトに対してブラムは、
「お前、いろいろとなんかすげーな……」
そう、ドン引きしていた。
そんなこんなで、私達の数十時間に渡る船旅は幕を明けたのだった。
――しかしこの時私は忘れていた。自分が船に乗ったことが無いということを
投稿遅れてすいません! 休みの日はめちゃくちゃ書きますんで許してください!




