第3話「新生トライデント!レオとジョシュの奮闘記編」
剣戟の音が、朝の空気を裂く。
トライデントの訓練場。
青空の下、砂煙を巻き上げて向かい合うふたりの男が二人。
ジョシュとレオ。
どちらも本気ではない。
けれど、その一手一手は研ぎ澄まされ、見学者たちの息を呑ませる。
レオの剣が下段から駆け上がる。
ジョシュが上体をひねってかわし、逆手に持ち替えた木刀で即座に打ち返す。
火花こそ出ないが、音だけでわかる。
これは、並の剣ではない。
訓練場の隅にいたリィナが、ぽつりと呟いた。
「パパ…かっこいい…」
戦いというより、まるで舞いのような剣のやりとり。
それは、強さへの憧れを抱く者にとって、眩しすぎる光だった。
観戦していた訓練兵たちが、ざわつく。
そこへ、一人の人物が、管理棟から歩いてきた。
背はやや低めだが、すらりとした姿。
腰に細身の剣を携え、無表情のままジョシュとレオの元へ向かう。
トレーニングスーツの胸元には、まだ新しいトライデントの徽章。
先日入った新入隊員。
何人かの訓練兵が気づき、ざわめきが広がった。
「なんだ…あいつ昨日入ったばかりで隊長と闘う気か!?」
ジョシュが気配に気づいて振り返る。
「来たか、新入り」
やや口元を緩めて言うと、レオもその方向を見る。
黒髪を束ね、鋭い眼差しの少女。
静かに礼をし、ジョシュに一言だけ告げる。
「はじめまして」
「AKANEです」
「新入隊員として配属されました、よろしくお願いします」
「訓練参加、よろしいでしょうか?」
その声音は凛としていたが、感情は見えなかった。
ジョシュは少し笑みを浮かべたまま、頷いた。
「もちろんだ」
「レオ、相手をしてくれ」
一歩、レオの方に近づき、敬礼をする。
「レオ隊長、AKANEです」
「よろしくお願いします」
「お手合わせお願いいたします」
風が一瞬止まったようだった。
レオは目を細めて、まじまじと少女を見た。
どこかで…見たことがある気がする。
だが記憶の霧は晴れない。
それでも、背筋に走る鋭い何かが、彼の警戒心を呼び覚ます。
ジョシュは、少し驚いた表情のレオに向けて肩をすくめる。
「レオ…AKANEの剣は速いぞ」
「僕でもついていくのがやっとだ」
「実力は保証する!」
その瞬間、周囲の訓練兵たちがどよめいた。
まだ名も知らぬ新入隊員。
だが、その名はすぐに知られることになる。
新生トライデントに加わった、新たな剣の申し子。
その正体を知る者は、まだいない。
けれど、彼女の瞳は既に、かつての戦場を知っていた。
トライデント訓練場。
再び、剣戟の空気が張り詰める……。
レオは構えを取りながら、彼女を見据えた。
彼女が放つ「気」の重さが気になった。
訓練場の砂が微かに流れる。
まるで、無意識に周囲を制圧するような流れを纏っていた。
レオは木剣を抜く。
「……それじゃ、いこうか」
AKANEは返事をせず、ただ一歩だけ前に出て礼をした。
「行きます…」
その瞬間!!視界が揺れた。
レオの身体が、無意識に反応していた。
ガッ…!
ギリギリの防御。
目にも映らないほどの踏み込みから、鋭い横薙ぎ。
腕が痺れる。
戦いは始まっていた。
だが、レオの中ではもう、訓練の枠を超えていた。
……早い。
それだけじゃない。
動きに、隙がない。
数合、剣を交える。
攻めようとすれば、それを先読みするようにかわされる。
そして何より、攻め手が無駄に見える。
無駄がない、ということは…隙もない、ということだ。
「……なぁ、君……」
「どこでそんな剣を?」
レオの問いに、AKANEはふっと、目線だけで答えた。
どこか、過去を見つめるような、遠い視線。
「教わったんです」
「ある人から」
「生きるための剣を」
再び剣を構える。
それは、まるで舞うような、
けれど、殺気を秘めた構えだった。
レオの呼吸が、変わる。
瞳の奥に何かを隠していることを、レオはまだ知らない。
けれど、かすかに…懐かしい痛みのような感覚が、胸に残った。
そのまま戦いは、続いていく。
訓練場に集う仲間たちは、ただ沈黙し、見つめていた。
新たな剣が確かに、ここに現れたのだと。
「くっ…俺の負けだ…」
剣戟の余韻が、まだ空気に残っていた。
レオは息を整えながら、剣を納めた。
向かい合うAKANEは、微かに汗を滲ませながらも、静かに礼を取る。
「素晴らしい剣だった」
「またやろう!」
「今度は、僕が一本取る!!」
レオがそう言えば、AKANEは小さく笑った。
「ありがとうございました」
「ぜひ、お願いします」
「では失礼いたします」
それだけを残して、彼女は訓練場をあとにした。
静かになった空間に、足音が響く。
ジョシュがいつもの落ち着いた顔で近づいてきた。
その目は、しっかりとレオを見つめていた。
「どうだった?」
「新入りの剣の冴えは」
レオは肩を竦めた。
「想像以上です…」
「あの子の剣には…覚悟があった」
「修羅場をいくつも超えてきた剣です」
ジョシュは頷く。
「剣の強さってのは、結局そこなんだろうな」
二人はしばし無言で空を見上げる。
夕陽が、淡く訓練場を染めていた。
レオがぽつりと言う。
「俺、こうやって誰かと並んで隊を作るなんて、昔は想像もしてませんでした」
「ジョシュさん…いやリーダー!」
「ありがとうございます」
もう一度、この旗を掲げたい。
レオは腰の布をそっと広げる。
そこには、かつての「トライデント」の紋章。
風が、旗を揺らした。
ジョシュはそれを見つめながら、ゆっくりと拳を握る。
あの頃の仲間たちはもういない。
だけど、志は消えちゃいない。
「次は、俺たちの番だな!」
「兄貴と青さんが残してくれたこの想い、俺たちが繋ぐんだ!」
「新生トライデントを創ろう!!」
二人の視線が交わる。
そこには迷いも、不安もなかった。
ただ…新たな物語の始まりがあった。
ジョシュがふっと笑って、肩を叩く。
「でも…まずは、メンバー集めからだな」
レオも笑い返す。
「集まってくるのは癖強のやつばかりですけどね~」
こうして、「新生トライデント」結成の物語が動き出す。
ーーートライデント本部 入隊試験ーーー
朝靄の中、訓練場には木の葉の揺れる音と、乾いた靴音だけが響いていた。
黒髪を高く結い、無駄のない動きで木刀を振るう少女の姿。
トライデント新人隊員…AKANE。
その眼差しには迷いがなかった。
彼女の動きに目を光らせていたのは、ジョシュとレオ。
そして、周囲には新たな候補者たちの姿もあった。
各自、試験に向け身体をほぐしている。
「やっぱり、無駄がないな…」
レオは、剣先を見据えながら、思わず呟いた。
「レオ隊長!」
「始めるぞ!」
「はい!リーダー」
新生トライデント…総リーダーのジョシュがレオに号令をかけるよう指示をだす。
続いて、隊長レオが集まった候補者…約40名に号令をかける。
「皆!!整列してくれ!」
「俺はトライデント隊長のレオだ」
「よろしく頼む」
「こちらがトライデント総リーダーのジョシュさんだ」
「今日は良く集まってくれた」
「新生トライデント再編に向け強い戦士が必要だ」
「思う存分に力を発揮してくれ」
続けてレオがある人物を紹介する。
「こちらは元トライデント副リーダー…」
「そして世界を救った英雄…」
「武神 月影 青さんだ!!」
試験会場が一気に歓声で沸いた…
「みんなはじめまして」
「今日はしっかりみさせてもらうよ」
「全力で頑張ってくれ!」
「青さんにも試験官になっていただく!」
レオが説明に入る。
「試験内容は1対1の模擬戦だ」
「勝てば合格というわけではない」
「誇り高きトライデントの隊員としてふさわしいかを見させてもらう」
「勝敗よりも大事なのは内容ということを各自わすれぬように!!」
「それでは各自スタンバイしてくれ!」
レオがAKANEを呼ぶ。
「AKANE…新入隊員の相手をしてもらえないか?」
「約40人くらいなんだか…行けるか?」
「……はい。了解しました」
AKANEは迷う事なく返事をした。
レオは頷く。
「ではこれより、トライデント新入隊員、選別試験を行う!」
「君達と手合わせするのは、先日入隊したばかりのAKANEだ!」
「彼女の剣技は俺やリーダーをも凌ぐ」
「皆、油断しないように!」
AKANEが木刀を持ち、中央に立つ。
湧いて来るオーラから只者ではない事が理解できる。
参加者、皆が息を飲んだ。
「それでは、番号1番から順に開始する!1番の者、前へ!!」
「はぁ〜い」
そこに、軽い足音と共にふわぁ〜と少年が歩いてくる。
赤いパーカーに黒の半ズボン、サンダル履き…そして何より、常にニコニコと笑っている少年。
「やったぁ〜!」
「いっちばぁ〜ん!」
「あ、こんにちはー」
「ボク、リクっていいます!」
「14歳でーす」
まるで緊張感がない。
ふわふわしたその少年は普通の人からみたらただの可愛い少年…
しかし、戦闘の熟練者ならわかる「気」が漂っていた…
「ジョシュ…あの子できるぞ…」
青がジョシュに耳打ちする。
「はい、青さん…」
「僕達とは違う、何かすごい気がありますね…」
当然、AKANEも感じとっていた。
万全の構えをする。
「それでは…はじめっ!」
レオの号令と共にAKANEがとてつもないスピードで斬りかかる。
初手からトップスピードだ。
「え?、、、えーーーー!」
そのスピードにリクが驚く。
…しかし、流れるように全てをかわす。
会場がどよめく…
AKANEは冷静に次の攻撃を繰り出す。
目にも止まらない速さの連撃。
「よっと…よいしょ…うわっ!」
「最後のは危なかったぁ〜…」
「せんぱーい…ズルいよ〜急にスピードあげるの〜」
「全部見えてるんだね…」
AKANEがボソっと呟く。
「避けてばっかだと、落ちちゃうから、攻撃もしなきゃ〜」
「いくよ。先輩!」
終始ニヤニヤして顔が、途端に真剣な顔になる。
AKANEに匹敵するくらいのスピードで攻撃を繰り出す。
2人の攻防に参加者は目が追いつかない…
「なら…これでどうだ!」
ドンっ!
AKANEの身体が吹き飛ばされる……が、確実に受け止めている。
「だめかーーー」
「ちっきしょー」
「本気で打ったのにー」
子供がだだをこねるように悔しがるリク。
「ねぇ、、、君」
「今のは気孔?」
「どこで学んだの?」
「そだよ〜」
「おじいちゃんが道場やってて、遊びでやってたらできるようになってたー」
「それにしても、パイセン強いねー」
「AKANEだよ…」
「AKANEさん!」
「もし、合格したら、また手合わせしてね〜!」
リクは深々と礼をすると、またフラフラ戻って行った。
「では、次の者、前へ」
その後はAKANEに全く歯が立たず一試合、1分とかからなかった。
「次!28番、前へ」
音もなく、すぅ〜と彼女は入ってきた。
異質なオーラを出しながら…
髪は長く鮮やかな赤、目に黒い布を巻いていて、武器は双剣。
手足が長くすらっとした姿はとても美しい。
「……ヨルと申します」
「よろしくお願い致します」
凍りつくような冷たい声。
しかし礼儀正しい。
「…あ…あの……」
ヨルがボソっと口を開く
「真剣で……お願いしたいのですが…」
「もちろん、相手の方に傷はつけません…」
ヨルが提案する。
「いいよ…」
AKANEが即答する。
レオが間に入る。
「互いが良いならいいだろう」
「しかし、必ず寸止めである事か条件だ」
両者しっかりうなずく。
「では!はじめっ!!」
互いに様子を見ている…
ヒリヒリした緊張感が会場を包む。
その静寂を破ったのは、ヨルだった。
交差する視線の中に、火花が散った。
刃は真剣。
空気が、変わる。
緊張が、広場を支配する。
AKANEの構えは隙がない。
流れる水のように柔らかく…
そして、一瞬で雷のように鋭くなる。
対するヨルは、両手に双剣を構えた。
踏み込みのバランス、呼吸の位置、まるで獣のように研ぎ澄まされた構え。
「いい構え…だけど…」
一歩、AKANEが踏み込んだ。
ヨルも反応する。右の剣で牽制し、左で打つ。
だが、その全てをAKANEは見切っていた。
木の葉が落ちるようにかわし、
一瞬、ヨルの右頬に白刃が止まった。
「まずは一回…」
風圧だけで、髪が揺れる。
ヨルは反撃に転じる。
双剣が舞うように交差し、縦横無尽の連撃がAKANEを襲う。
そのすべてをAKANEは受け流す。
そして、逆に踏み込んだ瞬間。
二太刀目が、喉元で止まった。
「二回…」
ヨルの背に汗が伝い顔がひきつる。
「これが……」
「次元が違うということか」
だが、引かない。
むしろこの圧に、闘志が沸き立つ。
「はあぁッーーー」
冷静沈着だった彼女が雄叫びとともに、一気に間合いを詰める。
刃が風を裂き、地を蹴る。
一太刀。二太刀。三太刀。
連撃の先に、確かに届く気配を感じる。
「…遅い」
三太刀目、AKANEは横に流しながら体を捻り、
背後に抜けると、背中に寸止めの一閃。
「これで三回…」
3度目の寸止め。
「君…戦場なら…三回、死んでるよ」
その瞬間、ヨルの両膝が地に落ちた。
「……参りました……」
声は震えていた。
だが、それは敗北の悔しさではなかった。
圧倒的な強さを目の当たりにした者だけが知る、
次への確かな渇望だった。
土の上に、静かに頭を垂れた。
風が止む。
広場が静寂に包まれる。
AKANEは刀を納め、ふっと口角を上げた。
「合格かどうかはまだ分かんなけど…」
「でも僕は嫌いじゃなよ君みたいなタイプ」
「君は確実に強くなれる」
そう言い残すと、AKANEは背を向けた。
風が、再び吹き抜ける。
静けさの中に、確かに残ったものがあった。
いよいよ、新入隊員試験も最後の番号となった。
「次!43番、前へ」
しかし、43番は一向にでてこない…
「帰ったか……」
「では、これで……」
と、その時…
「遅れたァーーーッ!!!」
「すんません〜」
「道に迷っちゃってしまいました〜」
地響きがなるような巨漢の男。
機械仕掛けの右腕。
その男は、汗だくで笑っていた。
「あ、ワシ、ガンマでーす!」
「どうぞよろしく!」
AKANEは木刀を持ったまま、きょとんと首を傾げた。
ジョシュがため息をつきつつ、それでもわずかに口角を上げた。
レオがガンマを一喝する。
「君、遅刻だぞ!」
「試験は受けるのか?」
「ホントすんません…」
「ワシ、田舎モンなんで道がわからんくて…」
「試験…受けさせてください」
レオがジョシュの顔をみる。
ジョシュは笑いながら頷く。
「良いだろう」
「準備してくれ!」
「いつでも行けますぜー」
「よし…では…」
「ちょっと待ちなさーい!」
ある人物が乱入してきた…
「ちょっと!」
「あんた達!!」
「アタシに声かけないってどういう事よ!!」
「……兄貴……」
そこに立っていたのは、ジョシュの双子の兄。
トライデント前リーダー macoto。
ジョシュが慌てて説明する。
「兄貴はBARの仕事が大変だから声を…」
遮るようにmacotoが…
「うるさい!バカ弟!」
「青も同罪よ!」
「レオは後でお仕置きね!」
「さて……」
macotoがAKANEの前に立つ。
「お嬢さん」
「ここはこのオカマに譲ってくれないかしら?」
「…えっ!?…」
「あ……はい…」
AKANEは静かに後ろに下がった。
「レオ…問題ないわね!」
「はい、リーダー」
「じゃなかった!macotoさん」
「はい。ガンマ君だったわね」
「おまたせ♡」
「全力で来ないと死んじゃうわよ」
笑いに包まれていた会場がmacotoが構えた途端に張り詰めた空気になる。
引退したとはいえその強さはまだ健在である。
「嬉しいなぁ…伝説の方と戦えるなんて〜」
「ワシ、一生の思い出ですわぁ〜」
「思い出作りの気持ちなら速攻でぶっ飛ばすわよ!」
始まりのゴングもなく、macotoがガンマに襲いかかる!
強烈な拳が何発もガンマに浴びせられる。
しかし、防いでいる顔は笑っていた。
「次はワシから行きますぜ〜」
攻防が一瞬で変わる。
「……なっ!……」
とてつもないラッシュがmacotoに浴びせられる。
「やるじやない…」
そこは百戦錬磨の男。
あっという間に戦局を覆す。
「さすが、伝説の人やね…」
「まだまだ行きますぜ〜」
「ブーストファースト!」
轟音と共に、機械仕掛けの右腕が火を噴いた。
その推進力を活かして、ガンマが一気に距離を詰める。
macotoが素早く後方へ跳びのく。だがガンマの巨体は予想以上に速かった。
「はっや……!」
macotoの頬に、わずかに風圧がかすめる。
その風の刃が髪を一房切り裂いた。
「やるじゃないの…!」
macotoが拳を交差してガード、ガンマの両腕による連打を受け止める。
だが、衝撃は地面にまで伝わり、足元の土がめくれ上がった。
ガンマは笑顔のまま攻め続ける。
「楽しいなぁ〜」
「強い人とやり合うの…最高ですわ〜!」
macotoは後方に翻ると、両腕を構えて身構える。
「じゃあ…楽しい時間は終わりにしましょ」
空気が…変わった。
それまで軽快だったmacotoの動きが一変。
無駄が一切なく、まるで流れる水のように、滑らかに、そして鋭い。
「喰らいなさい、愛のハリケーン…!」
macotoの拳が風を纏い、五連打が高速で放たれる!
一撃ごとに衝撃波が広がり、会場全体を包み込むような気圧が走った。
ガンマは受け止めつつも、一発、二発…とガードを突き破られ、最後の一撃で吹き飛ばされた!
ドォーーーーーン!!
地面を滑るように、10メートルほども飛ばされ、地面に突っ伏した。
場が静まり返る。
砂埃の中から、笑い声が聞こえた。
「いやぁ〜まいったまいった…」
「完全に油断してましたわ〜」
ガンマが立ち上がる。
右腕の装甲が部分的に壊れ、火花を散らしていた。
だが…その顔に悲壮感はない。むしろ…楽しげだった。
「こりゃ本気出さなやばいですな〜」
「…ブーストセカンド、起動っと」
再び右腕が光を帯び、今度は蒼白い光が周囲を照らす。
「うっそ……まだ上があるの……!?」
macotoもわずかに目を見開いた。
ジョシュが小さく呟く。
「兄貴が…少し焦ってる」
「兄貴が本気を出すなら、それを見る価値はあるな…」
再び、二人が交差する。
火花と衝撃がはじける中、ガンマの動きは先ほどより数段早い。
macotoもまた、本気の構えへと入っていた。
蒼白い光を帯びた右腕が唸る。
それに合わせ、ガンマの全身が空気を裂くように駆ける。
macotoは迎え撃つ。
二人の打撃が衝突するたび、空間が震えるような轟音が響いた。
拳と拳、体術と体術。
誰も言葉を発せず、ただその凄まじい攻防に息を飲んでいた。
ガンマが飛び上がり、空中から回転しながらの裏拳。
macotoがそれを地面を転がることでかわし、起き上がりざまに足払い。
見事にガンマの足をとらえるが、体勢を崩したガンマは逆さまのまま肘を振り下ろした!
「おっとぉ!」
macotoが一歩下がってかわす…その瞬間、ガンマの右腕が一瞬、音速を超えた。
「ブースト・ラッシュ!」
蒼白い閃光が、稲妻のように横一線へ会場の土煙が一気に巻き上がる。
視界が一瞬、真っ白に染まった。
誰もが息を呑んだ…
静寂のあと、砂塵の向こうからゆっくりと姿が現れる。
先に立ち上がってきたのはmacotoだった。
だが、その肩はわずかに揺れていた。
「まいったわ…まさか、ここまでやる子がいるなんて」
一方、ガンマは仰向けに倒れ、右腕のブースターは完全に沈黙していた。
しかし…その顔には満面の笑みがあった。
「ワシの…負けですわぁ〜」
「伝説の人は…やっぱりスゴかった……」
macotoがそっと近づき、手を差し伸べる。
「いい試合だったわ、坊や」
「見どころありすぎて…惚れちゃいそうよ」
ガンマが笑いながら、その手を取る。
「ありがとさんですわ〜…」
「ワシ、もっともっと強くなりますんで…!」
立ち上がった二人を見て、会場から拍手が沸き起こった。わ
macotoが口元に手を添え、クスリと笑う。
「……面白くなってきたわね、トライデント」
「あーー楽しかった〜」
「みんなBARで待ってるわねー」
そう言うと軽やかに手を振りながら、macotoは背を向けて歩き出す。
その後ろ姿は、まるで嵐が去った後の静けさを運ぶ風のようだった。
誰もが無言で見送る中レオがぽつりと呟いた。
「やっぱり…恐ろしいな、macotoさんは」
ジョシュも小さく笑いながら頷く。
「でも、あれが本物なんだよ」
そして彼は、試験を終えたガンマに目を向ける。
「ガンマ君、よくやった」
「いやぁ〜…褒めてもらえるなんて嬉しいっすわ〜」
汗だくのまま、ガンマが頭をかきながら笑う。
その隣で、AKANEが腕を組んで小さく頷いた。
レオが試験結果の名簿を見ながら、前を向く。
ここに、新たな戦力が集った。
かつての伝説を継ぎ、新たな物語を刻むために。
トライデント、再始動の刻は、静かに、だが確かに動き始めた…
陽が傾き、試験会場を包んでいた熱気がようやく落ち着きを見せ始めた頃、ジョシュの号令が響き渡る。
「以上で、全ての試験を終了とする」
そこかしこでホッとした表情が浮かび、重苦しかった空気が少しずつほどけていく。
「では、合格者の発表だ」
レオが進み出て、数名の名前を読み上げた。
リク、ヨル、ガンマ、そして、数人の精鋭たち。
「以上の者が、新生トライデントへの加入を認められた」
場が静まり返る中で、ジョシュが一歩前に出る。
その目には、覚悟と誇りが宿っていた。
「おめでとう!」
「そして、ようこそ」
「君たちは今日から、俺の…俺たちの仲間だ」
「この組織を、未来を、命を懸けて共に守る」
「その覚悟がある者だけ、俺についてこい」
拍手が再び起こる。
中には嬉しさに涙ぐむ者の姿も。
「……これより、初任務を伝える」
レオが言葉を継いだ。
「ある村で奇妙な影が目撃された」
「被害はまだ確認されていない…」
「AKANE、リク、ヨル、ガンマ他数名で現地に向かってもらう」
「調査・報告をよろしく頼む」
「任務名は影追い」
AKANEがすっと顔を上げた。
リクは目をキラキラさせている。
ヨルは無言のまま小さく頷く。
ガンマは気合十分だ。
「行動は明朝から開始だ。それまでは自由時間とする」
「以上!解散!!」
その夜…トライデント本部近くの中庭に、ぽつぽつと焚き火が灯る。
ヨルが静かに剣を研ぎ、
AKANEは本を読みながら、周囲をちらちらと観察している。
ガンマは丸太に座りながら、笑顔で肉を焼いている。
「どうぞどうぞ!焼けてますよ〜」
「ありがとう」
リクと名乗った少年が受け取りながら、にっこり笑う。
「ねぇ、ガンマって何歳?」
「ワシ?32歳やでぇ」
「おっさんやけど、まだまだ元気ですわ」
「へー!じゃあおじさん、よろしくね!」
「おう、よろしくなぁ〜」
どこか噛み合わないが、不思議と悪い空気ではなかった。
しばらくして、ジョシュが現れた。
火を囲む新メンバーたちを見渡して、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「トライデントってのはな……」
「ただ強けりゃいいって集まりじゃない」
「命を預けられる仲間になれるかどうか」
「それがすべてだ」
「今はバラバラでも……信じて進めば、きっと一つになれる」
静かな口調に、焚き火の揺らぎが呼応する。
リクが空を見上げ、ぽつりと呟く。
「あの人みたいになれるかなぁ……」
その目に浮かんでいたのは、青の姿。
ヨルがブツブツ1人事を呟く…
「AKANEさんに勝つには……」
ガンマが真剣な顔で…
「肉食って今より強くなったる」
AKANEが思い詰めた顔をしている。
「あの時のお礼をしなきゃ…あの人の剣になるんだ」
各々が次のステージに向かい真剣な眼差しをしている。
遠くに座っていた、リィナと青が微笑ましい顔で新入隊員を見ている。
「おじいちゃん、良かったね!」
「頼れる仲間が増えて!」
「あぁ。またさらに強くなれそうだな」
「リィナも負けてらんないなぁ〜」
「あのね…おじいちゃん……」
「あのAKANEって子…」
「心を見たのかい?」
「そうか…リィナも気づいたか…」
「姿形が変わっても、人の「気」は変えられないんだよ…」
「わかってる」
「おそらく、ジョシュも気づいている…」
「レオは何か言ってたかい?」
「うん。似てるって……」
「だから私、話そうか迷ってて」
「リィナ、きっとAKANEは何か事情があるんだよ」
「だから、今はそっとしておいてあげよう」
「うん!」
「おじいちゃんが言うならそうする!」
新しい力が…
新しい絆が…
新しい想いが…
この地に集まった…
新生トライデント……
ここに、始動す!!
狭間の暁 ―After the Fall―
「新生トライデント!レオとジョシュの奮闘記編」完