9/37
207.北の果ての国-5
ある国境付近の街に、ミサイルが飛んできた。
彼は何処から飛来したものであるか、探すために北の果ての国を彷徨い歩く。
辿り着いたのは砂漠の真ん中で、周りに人影がなく、ミサイルの発射装置だけが空の状態で放置されていた。
そこはかつて綿花が栽培されようとしていたが、失敗し放棄された土地である。
青い空と照りつける太陽の、雨のない場所に置かれたそれは、鈍く光っていた。
彼は呟いた。
“戦争とはこのようなものか。
人を殺す兵器が飛び立った横には、それを使った人の姿すら見当たらない。
あまりにも奪われる人の命が軽すぎて、戦争の意味すら、金銭を稼ぐ手段としか見えなくなっているようだ”
この戦は未だに終わらないのか、と彼は何事もないかのように広がる、青い空を見上げた。