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201.中央探索の騎士である彼女の話-3
宰相の執務室を出た2人の騎士はいく人かの国の重鎮と面会し、騎士の館に戻った。
騎士になったばかりの2人の部屋は、まだ荷物も少なく閑散としている。
他の騎士達は既に宮殿か任地に赴いているため、他に人の気配もない。
彼女の兄であり東方執政の任にある騎士は荷物を纏めると、彼女に短い別れの言葉をかけ、自分の任地に戻っていった。
騎士の館に残された彼女は、面会したばかりの国の宰相をはじめとした重鎮達とのやり取りの記録を纏めると、中央探索の任に必要な準備を再開した。
まだ春の訪れのない、ある冬の霧の日のこと。
彼女は小さな手荷物を抱えて、彼女の最初の任地へと旅立った。
彼女を見送る者は誰もいない。
彼女の手元には、彼女がこれから赴く任地について、先だって調べたノートがある。
そこには先任の中央探索の騎士が、彼の短い任期の中で訪れることができなかった場所が列挙されていた。
”まずはこの国からね。
どのような人達との出会いがあるのでしょう。
楽しみだわ“
彼女は微笑を浮かべながら、自分の祖国を後にした。