200.中央探索の騎士である彼女の話-2
国の宰相であり、国一番の魔術師でもある彼女は、新しく騎士となった王の2人の子ども達を迎え入れた。
“国の宰相であり、この国の時を司る魔術師殿よ。
はじめまして。
貴女との邂逅を嬉しく思います”
“時の女神と言われる、この国の宰相様。
はじめまして。
貴女との邂逅を心待ちにしていました”
王の2人の子供達は、それぞれ宰相である彼女に対して口上を述べる。
国の宰相である彼女は2人の様子を微笑みを浮かべながら見つめていたが、やがて口を開いた。
“はじめまして。
新しく東方執政の任についた騎士と、中央探索の任についた騎士よ。
…あなた達2人には、私から伝えなければならないことがある”
国の宰相である魔術師は、2人にいくつかのことを伝えた。
2人は沈黙を保ったまま宰相の話に耳を傾けていたが、話が進むにつれ、その顔は強張っていく。
宰相の話が終わると、2人は短いお礼の言葉を述べて、宰相の執務室を辞した。
2人が退出した後。
国の宰相であり魔術師である彼女は、執務室の椅子に深く腰掛け、頬杖をついた。
彼女の手元には、東方執政の任にある騎士から手渡された報告書があり、彼女はそれに目を通していた。
彼女は大きなため息をついた。
“かつての王と同じく、あの2人の王の子も生まれながらにして不運に遭い、その親でなく他の善なる者に育てられることになった。
このような結末は誰もが望んだ訳ではない。
かつての内戦時に起こった悪意が未だ続いているだけだわ。
そしてそれは彼らだけでなく、この国に生まれた皆に降りかかる禍いとなっている。
彼らはその運命を変えられるかしら。
彼らの親である王や王妃が変えることができずにいる、かつての内戦がこの国に齎した悪意を、別の何かに変えることができるかしら。
私にはその時を待つことしかできない。
それは私の時の魔術ではどうにもならない、人の宿業によるもの。
どうかこの国の騎士となった彼らに、時の幸運を”