紙飛行機が頭にあたった縁で
「痛てっ」
優雅に一人、中庭にあるベンチで昼飯をゆっくりと食っていると頭に何か当たった。
あたりを見まわしてみると、紙飛行機が落ちているのに気づく。
「なんの紙で飛行機を折ったのかと思えばこの前あった小テストじゃん。うわぁ、こりゃひどい点数だな。こっちは20点だし、こっちなんか5点だよ」
辺りには小テストの解答用紙で作った紙飛行機が2機落ちている。ご丁寧にも名前のところは消しゴムで消してあったが、犯人は筆圧が高いようで名前はしっかりと分かった。
「えっと、冷泉寺紅葉……あいつか。へー、意外だな」
冷泉寺といえば才色兼備な美少女として有名なはずだけど、このテストだけ見ると才の部分はそうでもないような気がする。
美化委員としてゴミのポイ捨ては許しがたいので紙飛行機を拾って教室まで戻るとその足でそのまま冷泉寺の元まで向かう。
「冷泉寺、ちょっといいか?」
「なんでしょう? 山吹くん」
「これについてなんだけど」
紙飛行機を彼女に見せる。
「わ、わわわ、わかりました。あっちでお話しましょう」
明らかな動揺を見せて、彼女は俺の腕を取り教室の外まで連れ出していく。あまりの勢いと力強さに有無もいえずに引きづられるように廊下を進む。
「ど、どこまで行くんだよ?」
「静かにして。すぐ着くわよ」
程なく校舎の端のほうにある空き教室の一つに連れ込まれる。
密室に可愛い女の子と二人きりだけど全然色っぽさのかけらも見受けられないのはなぜだろう。
「その答案用紙は誰かに見せた?」
「いや」
「でも点数は見たんでしょ?」
「そりゃね。名前も透けて見えていたし」
頭を抱えて蹲る冷泉寺はもうだめだとブツブツ呟いている。
「多少勉強ができないくらいは愛嬌があっていいんじゃないか? 完璧超絶美少女より可愛げあるじゃん」
「そ、そうかな?」
「少なくとも俺はそう思うけど」
「でもせめて平均点くらいは取っておかないとみかけだけのバカって思われそうじゃない?」
まあ普段の冷泉寺は頭良さそうな雰囲気だけは纏わせているからな。成績が公表されないのをいいことに誤魔化してきたツケが来たってことか。
「もしそんなに勉強が苦手なら俺が教えてやろうか?」
「山吹くんは勉強ができるの?」
「一応この小テストで両方とも80点以上は取ってるけど?」
「ぜひともよろしくお願いします」
これが俺と紅葉の馴れ初め。
まさかこれ切っ掛けで、付き合って最終的に結婚するとは思ってもみなかったけどな。