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三題噺もどき2

わたしの朝

作者: 狐彪

三題噺もどき―さんびゃくきゅうじゅうよん。

 


「ん……」

 鋭い光に刺され、目が覚める。

 ゆっくりと瞼を上げると、丸くくりぬかれた光が、床に落ちていた。

 その欠片が、私を叩き起こした。

「……」

 まだ少しぼんやりとする視界。

 寝起きは悪くないが、どうしてか視界も思考もゆがむ。

 だがまあ、それも一瞬のことなので、すぐにはたと気づく。

 現実に帰ってきたのだと。

 夢はもう終わったと。

「……っ」

 そういえば、やけに視界が高いと思った。

 ベッドの端の方に座り込んで寝ていたらしい。

 身体が軋み、節々が痛む。

 だから床に落ちているはずの光が見えたんだろう。

「った―!」

 それに気づいたくせに、なぜか思いきり頭を上げてしまった。

 天井が低いこの部屋では、頭をぶつけるのなんて分かりきっていたのに。

 狭さもあるので、ベッドなんて言ってみたが、ちょっとしたソファの上に寝ているだけで。ベッドなんて程立派なものじゃない。

「……」

 望んでこの部屋で寝ているが、こういう時は少し後悔する。

 まぁ、でも。たまに寝落ちしてしまった時ぐらいだし。数えるほどしかこういうことはおきない。

「……」

 幼い頃はよくここでかくれんぼをしたりしていた。

 でも毎回同じ場所に、この部屋に隠れるものだからそうそうに見つかっていた。

 子供ながらに、面白い気分はしなかったが。変えようと思わないあたり頑固な奴だったんだろう。

「……んしょ」

 ベッドの上に寝転がる。

 目は覚めたが、なんとなく動きたくない。

 そろそろ他の皆はおきただろうか。

「……」

 耳をたててみると、下で誰かが歩いている音がする。

 この足音は、母だろうか。

 あの人最近、健康サンダルというかダイエットサンダルというか。よくわからない形状のものを履いているので、ものすごく足音がうるさい。

「……」

 時間が分からないが…もうじき他の人も起きてくるだろう。

 携帯はリビングに置いてあるし、時計はこの部屋には置いていない。

 ま、何かあれば呼ばれるかもしれないだろう。

「……ぉ」

 外から訪れる光の中に、小さな影が混じった。

 なぜか毎日のように窓際にとまる小鳥だ。

 餌をあげるわけでもなし、迎え入れるわけでもなし。

 それなのにいつも同じ小鳥がそこに来る。

「……」

 じぃと、その小鳥を見てみる。

 目が合っているのかいないのか。

 きょときょとと、頭を動かしながら、こちらを見ている。

 何も考えていないように見えるけど、実際どうなのだろう。

 鳥頭なんて言うけれど。

「……おはよ」

 聞こえるはずもなく、分かるはずもないだろうが。

 口を小さく動かしてみる。

 変わらず動いている小鳥。

 が、次の瞬間、何かに満足したように、飛び立つ。

 ほとんどそれと同じタイミングで。

「――!!おきてるー?」

 階下から、母の声が聞こえた。

 もうそろそろ下に降りるとしよう。

 朝から大声を出させて申し訳ない。

「んー」

 返事が聞こえたかどうかは知らないが、適当に返す。

 ゆっくりと上半身を起こし、頭をぶつけないように立ち上がる。

「んしょ……」

 床にある扉を慎重に持ち上げ、ゆっくりと下へと降りる。

 朝からこんな肉体労働をしているとか、どんなだわたし。

 梯子降りるなんてそうそうしない。

 せいぜい二段ベッドの上に寝ているやつぐらいしかこんなことしない……。

 とか考えただしたら案外いそうだ。

「……ふぁ」

 漏れたあくびを噛み殺す。

 今日も現実を生きるとしよう。





 お題:屋根裏部屋・小鳥・かくれんぼ

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