【第5部〜旧世界の魔神編〜】 第3章 魔王ロード
城門をくぐってロードの居城に入った。ここには来た事もあるし、住んでいた事もある。でもあの全ての出来事が、頭を打って気を失っていた間に見た夢とは、とても信じられない。
「着きました。ここからは、徒歩になります」
私は空を飛べるし、Sランクの麻生さんも空を飛べる。山下には飛翔を掛ければ、山下も飛べる様になる。しかし、魔王城の周囲には強力な重力結界が張られ、空を飛んで城内に入る事は出来ない。徒歩や馬車などの乗り物で、地面に足をつけている場合に限り、この結界は作用しない。だから、歩いていて地面に押し潰されると言う様な事は無い。
石畳で舗装された道を歩いていると、直ぐに最後の城門が見えて来た。侵入者を防ぐ為に、幾つもの城門があるのは、どの世界のお城も同じだ。
「私達、本当に来ちゃったのよね。悪魔の住む世界に。しかも魔王に招待されちゃってるわ」
麻生さんは、両腕を胸の前で拳を握り、身を守る様な仕草をしながら、オドオドして歩いていた。山下は、突然襲われても対応しようと、気を張っているのが分かる。
「そんなに緊張しなくても」
私1人だけが楽天的だ。広間に通されると、いた。魔王ロードだ。だがいつになく険しい表情だ。いや、むしろ殺気さえ感じる。
「ようこそ、我が居城へ。そちらの2人は、ただの人間だな?だが、お前は何者だ?私やルゥイの名前まで知っているとは、他の魔王達の間者とも思えんしな?」
途端にロードから、途轍もない戦気が立ち込めた。
「神気を感じる。お前、神か…?」
そうだった。ロードは神々を憎んでいる。剣帝だった父を陥れ、冤罪によって処刑し、母とまだ赤子だった自分を魔界に堕とした神々を憎悪しているのだ。私の側近中の側近だったはずのロードから、初めて殺意を向けられ、冷や汗が流れた。過去2回、夢の中で魔界に来ている。どちらもその時は、私はただの人間としてここに来た。魔獣を追い払う為に見せた神気が仇となった。ロードは私を神だと思っている。実際、神なのだが…。
「待って!争うつもりは無いの。せめて話しを聞いてから、戦うか決めて頂戴!」
私は自分がアナトである事を知った経緯や、何故ロード達を知っているのか話した。最初は馬鹿な話しだと思われていたが、ロードの父母の話しをすると顔色が変わった。ロードしか知らない話しだからだ。ロードは母から剣帝の剣技の記憶を譲られた時に、母の記憶も一緒に受け継いだ。ロードの母を奪う為だけに、ロードの父が天帝によって陥れられた話しは、涙無しには語れない。麻生さんも、貰い泣きしていた。
「…分かった、信じよう。だが、お前が私の味方である証拠が無い!」
魔王ロードは静かに言い放つと同時に、剣を振りかざした。咄嗟に、模倣している剣帝の剣技を繰り出して受けた。
「ほう?確かに剣帝の剣技に見えるな」
魔王ロードの剣技は既に目で追える様な代物では無かった。本能による反射に近い形で、身体が勝手に剣帝の剣技を繰り出して躱せたのだ。髪を掠めて数本が落ち、剣を受け流し、弾かれ、突き、薙ぎ払う。10合も打ち合わない内に限界を感じたが、自動回復が発動し、擦り傷や体力も回復し続けてようやく互角だった。
アナトはランクの上では確かにテンダラース(S10ランク)と高いが、神である事を辞め、地上に降りて人になる道を選んだ為に、肉体的な強さは人間のそれだ。
それに対して魔王ロードは、純粋な神である為、肉体的な強さは人間など遥かに凌駕する。むしろテンダラースで無ければ、最初の一太刀を受ける事すら出来なかったであろう。すでに100合近く打ち合ったが、勝負はつかない。
「やるな」
「はぁ、はぁ、はぁ。流石に強いわね。貴女がいたから、私は魔界を統一出来たのよ」
「ふふふ、あははは。魔界統一か…。そしてゲートを開けるだと?ではやって見せろ!あのゲートの守護者の強さは尋常では無い。魔界を統一し、ゲートを開ける事が出来たなら、我らはお前に永遠の忠誠を誓おう」
「ありがとう、ロード」
「礼を言うのはまだ早い」
魔王ロードはショウ・ルゥイに目配せをすると、奥の部屋に引っ込んでしまった。
「どうなったの?」
「取り敢えずは味方って事か?」
「そうね。ロードは疲れて汗をかいたから、シャワーでも浴びに行ったのよ」
「アナト様、皆様、此方へ」
そう言われると、部屋に案内された。
「あぁ疲れた。精神的に疲れたよぉ。お腹空いたよぉ。お風呂に入って、ゆっくり休みたいよぉ」
「ふふふ、じゃあ麻生さん、一緒にお風呂に入ろうか?それと、ここのご飯は美味しいよ」
「美味しいんだ?楽しみ。てっきり虫とか、見た事も無い生き物のお肉とか、出て来たら嫌だなぁって思ってたよ」
「あははは、私も虫は食べられないよ」
麻生さんと女子会のノリで、一緒にお風呂に入った。
「うわぁ、すっごいスタイル…モデルさんみたい」
「あははは、麻生さんより綺麗な女性なんて居ないですよ?」
「何言ってるの?目の前に居るじゃない?比べられたら恥ずかしい…」
キャアキャア言いながら身体を洗っていると、麻生さんが洗ってあげると言って、背中を流してくれた。お返しに洗い返すと、何だか変な気持ちになって来た。
「はぁ、麻生さん大好き。貴女の青山くんの記憶がそう言わせてるのかな?」
「えっ?」
私は、麻生さんに口付けをしていた。舌を絡めると、麻生さんも絡めて来たので、子宮がゾワゾワした。
「ふふふ、今の青山くんは女の子なのに、何だか変な感じ。でも今の青山くんも愛しい」
麻生さんの身体に湯を掛けて泡を流し、胸を吸いながら押し倒した。胸からおへそ、更に秘部にかけて舌を這わせ、指を入れると、小刻みに荒い息をしていた。そのまま敏感な部分を集中的に舌で舐めながら、指をぐるぐると掻き回す様にしながら出し入れをすると、麻生さんは絶頂に達して放心状態になった。
「気持ち良かった?女の子同士も悪くないね。あははは…あっ、キャア!」
我に返った麻生さんから、今度は責められた。舌を這わされると気持ち良くて、抑えきれない悦びの声が出た。快感が高まるにつれて、まるでAV女優の様なヨガリ声が出る自分に驚いた。気持ち良過ぎて声が抑えられない。口は半開きで、ヨダレが垂れている事にも気が付かなかった。
「はぁ、はぁ、はぁ…うあっ!い、痛い!」
「ごめん。ごめんね、痛かった?そうだよね。まだ処女だったよね?流石に…」
麻生さんに指を半分ほど入れられて、痛くて絶叫した。
「本当にごめんね」
麻生さんと裸で抱き合うと、スベスベしていて気持ち良かった。
「青山くん、本当にヤバいわ。可愛い、美人、綺麗。全て当てはまる。うっとりする。女性がなりたい顔No.1よ」
「あははは、何それ?でもありがとう。褒めてくれて素直に嬉しいよ」
お風呂から上がって寝巻きに着替えると、麻生さんと抱き合ったまま寝た。麻生さんから何度もキスされた。
「何だか私、目覚めちゃいそう、うふふふ」と言って笑ったので、早いうちに元に戻らないと、大変な事になっちゃうぞ?男の私…と心の中で、もう1人の自分に話しかけた。
疲れていたので、その日はぐっすり眠れた。山下は、1人で良く寝れたのだろうか?心細いだろうな?とか思いながら眠りについた。