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【第5部〜旧世界の魔神編〜】  第3章 影の世界へ

 階下に降りて帰ろうとすると、毒ガスに気付いて、皆んなを静止した。毒を浄化する呪文を持っていたので、毒ガスに効くのかは半信半疑だったが、上手くいった。

 女性アナトの姿でいる私を、興味深そうに麻生さんと山下は見ていた。

「言いたい事、聞きたい事があると思うけど、ここを出てから話すね」

 社員達を会社から出すと、報道陣に取り囲まれて、写真を撮られた。

「天に帰られたのでは無いのですか?」

「いつ地上にお戻りになられたんですか?」

 マイクを向けられて質問責めにされたので、空を飛んで逃げた。麻生さんに手を振り、ジェスチャーで「アパートで待ってる」と伝えたつもりだが、伝わったかどうか定かでは無い。

 一足早くアパートに戻った私は、この姿でいるべきか、元の青山にもどるべきか悩んだ。事情を話すなら、この姿のままが良いだろうと思った。しかし麻生さんが帰って来るのは遅く、4時間近く経って山下と一緒に帰って来た。どうやらあの後、記者や警察から1人1人、事情聴取されたとの事だった。

「青山くん、どう言う事なの?」

「神崎さん、どう言う事です?」

ほぼ同時に質問が被った。

「えっと、話が長くなるけど、最初から話すね」

 私は全て話した。頭に響いた声に「魔法が使える様に」と願った。しかし、その能力は女性にならなければ使う事が出来なかった事。またその正体は、項羽の元妻である虞美人であり、唯一神ヤハウェの娘である女神アナトであった事などを話した。

「うーん、とてもにわかには信じられない話だね」

「本当、嫉妬しちゃうくらい美人よねぇ?」

「でも本当なのよ。今度、3人でパーティを組んで魔界に行ってみる?そしたら信じるでしょう?」

 何やら山下は険しい表情をしていた。

「どうしたの?」

「もっと重要な事があるんだけど…」

「何?」

「今の先輩がどうなっているのか?って事です」

「どうなっているとは?」

「男のまま女になっているだけですか?」

「あぁ、そう言う事ね。1つの身体で性別が変わり、記憶も共有されているの。だけど、心が…精神と言うか、感情や性格が別モノで、1つの身体に2人いる感じなのよ。青山瑞稀として麻生さんとお付き合いしている記憶があるけど、今の私は女なので、女性では無くて、ちゃんと男性が好きなのよ。だから入れ替わる度に悩んで、苦しむのよ」

「俺は…神崎さんの事が好きでした…」

「…今の姿の私も、山下さんの事が好きでした」

 目を潤ませて山下と見つめると、キスしそうなくらい顔を近づけていた。麻生さんが「こほんっ」と咳払いをしてたしなめた。

「でも性格も性別も変わるんですよね?それなら、俺と付き合って下さい!」

「山下くん、何を言っているの!?」

「だって今の神崎さんは、先輩とは別人なんでしょう?だったら問題無いです」

「ちょっと待ってよ、だって中身は青山くんだよ?男なんだよ?」

「俺は気にしませんから」

「気にしないって…」

 麻生さんは絶句して口をぽかーんと開けていた。

「えっと…その…考えさせて下さい…」

 私は麻生さんの顔色をうかがって、即答を避けた。

「青山先輩として、麻生さんに遠慮する必要は無いんですよ?神崎瑞稀として、俺の気持ちに応えて欲しい」

 両手で肩を掴まれて、真剣な眼差しで言われた。正直アナトの私は、キュンキュンしてて、即答でOKしたかったけど、事はそう単純では無い。

「ふーん、考えちゃうんだ?て言う事は、付き合っちゃう可能性もあるんだ?」

 麻生さんが珍しく、皮肉めいた事を言った。ヤキモチを焼いているのだろう。少し頬っぺを膨らませているのが、可愛らしい。

 何だか外が賑やかな気がした。すると、部屋の呼び鈴が鳴った。外を覗き穴から見ると、大勢の人だかりがあり、記者らしき人物が呼び鈴を鳴らしていた。

 TVを付けると、私のアパートの外が映っていて、そこから私の部屋をアップで撮影されていた。テロップには、【女神アナトがアパートに潜伏中!?】と書かれていた。

「これって…まさか…」

「あぁ、誰か金を握らされて、記者に喋ってしまったんだろうな?アナト=青山瑞稀だって」

「そんな…」

 私は膝から崩れ落ちた。私の平穏な日常は、これで終わった。きっと政府関係者からは囲われるだろうし、他国からは生命を狙われるに違いない。私の存在は他国にとっては、脅威でしかないからだ。

「どうしよう…」

「…ねえ?魔界があるって言ってたじゃない?」

「うーん、でも危険だからね?麻生さんを危険にさらしたく無いわ」

「無いわって…中身が青山くんだと分かってると、その言葉使いに違和感しか感じないわ…」

「そんな事無いですよ。めっちゃ可愛い。好きです、神崎さん」

「あ、ははは…ありがとう…」

 私は魔界がどれほど危険か話した。それなら、影の世界に行ってみたいと言うので了承した。

『影の部屋シャドウルーム

3人の足下の影に、ズブズブと身体が沈み込んで行く。

「ひゃあ~何だかドキドキするね。ワクワクじゃなくて、少し怖いかも」

「大丈夫よ、私が付いてるから。あっ、麻生さんは空飛ぶ準備しておいてね?いきなり空だから」

「キャアァァァ!そう言う事は、早く言ってよねーーー!!!」

 完全に影の世界に入った麻生さんは、猛スピードで落下して行った。

飛翔レイヴン

 山下に呪文をかけると、全速力で麻生さんを追った。どんどん加速して地表が見えて来た。あわや激突!の寸前に飛翔レイヴンの呪文が間に合って、麻生さんの身体は宙に浮いた。麻生さんは恐怖で気を失っていた。

「麻生さん、麻生さん!大丈夫?」

 身体を揺すったり、頬を軽くペチペチ叩いてみたが目を覚まさなかった。

意識回復コンシャスネスヒール

 魔法で無理矢理に、麻生さんの意識を回復した。

「う、うぅん…」

「良かった。気が付いた」

 ちょうど良いタイミングで、山下も地表に降りて来た。

「はぁ、はぁ、はぁ。空飛ぶの面白いけど、疲れるな」

「慣れたら自由に飛べる様になるよ」

「青山くん、今の青山くんを何て呼んだら良いの?」

「山下さんの様に神崎でも、アナトでも良いよ?」

「じゃあ私は、アナトって呼ばせてもらうね?」

「分かった。改めて宜しくね?麻生さん」

 女性としての私は、麻生さんとは良い友人になれそうだ。

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