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【第1部〜序章編〜】  第16話 白面の魔女狩り②

 私はあれから毎日あの場所に行き、あの3人組が女性達にイタズラをしないかパトロールをしていた。だが中々、彼らは現れなかった。確かにこの通りは、普段から夜間の人通りが少ない。更に深夜になれば、もっと人通りは少なくなるだろう。真夏日である為、まだ19時台は明るい。20時過ぎるとようやく暗味を帯びて来る。21時から0時までの3時間くらいが1番可能性があるだろうとアタリを付けて張った。

 すると、予想通り3人組が現れた。男性が通ると興味無さそうにし、女性が通っても複数であれば名残惜しそうに後ろ姿を見つめ、女性が1人だけで通りかかるのを待っているみたいで、明らかに襲う女性を物色していた。その為、私は彼らの前に姿を現した。

性懲しょうこりも無く悪さをするつもりなの?」

「何言い掛かりを付けてやがるんだ?俺達はただ、この場所にいただけだぜ?」

「俺達が悪さって?何かしてましたかぁ?」

 まだ何もしていない彼らの言い分は正論だ。言い返せず、黙っていた。

「まぁ姉ちゃんが、白面の魔女だって事は知ってるんだ」

 懐から銃を取り出すと、容赦なく引き金を引いた。

「キャアァァ!痛いぃぃ」

 左太腿に当たり、激痛で傷口を押さえて地面を転がった。血が辺り一面に飛び散り染まっていく。実は既に傷はふさがっていた。

パーン!パーン!

 2度引き金を引き、2発とも当たった。右肩の付け根付近と、左のふくらはぎに当たった。

「ぎゃあぁぁぁ。痛い、痛いよぉ」

 実は銃は反動で銃身がブレるのだ。だから余程の近距離でもない限り、百発百中で命中なんてしない。こいつはあまりにも銃を撃ち慣れている。躊躇ためらわず引き金を引いた。人を殺すかも知れないと思えば手が震えるし、躊躇ためらうものだ。つまり、こいつは人を殺した事がある。

「おい、もう止めろよ。やり過ぎだ!こんな美女と1発もヤらずに殺すつもりか?勿体無い」

「まーたお前は女かよ?だまされるな。こいつは俺の目の前で、折れた手足が元通りに治ったんだぞ!」

「見てみろよ!もう傷が治ってるぞ?」

「なるほど、化け物だったか?」

 引き金を3度引いたが、私が貼った障壁によって全て弾かれた。

「チッ。だが、化け物でも流石に頭は急所だろ?死ね!」

 歩み寄り、弾を込め直して至近距離で引き金を引くと、障壁を突き破り、私の頭を貫通して脳髄を飛び散らせた。私を撃ち殺した男は、私を殺すのは惜しいと言った男の肩を叩いた。

「まぁ、確かに勿体無かったよな?1発200万を使っちまったよ。あははは」

「おい、その死体をかついでこい!お前、死姦しても良いぞ。たっぷり可愛がってやれ。あははは。こいつを組織に渡して大金を得るぞぉ。外国に高飛びだ。日本ともオサラバだぜ」

 トランクに押し込まれた時には、すでに私は生き返っていた。いや不死だから、最初から死んでいなかったのかも知れない。私の死体を犯すって?気持ち悪い。どうしよう、今まで会った中で1番の悪党だよ、あいつ。躊躇ためらいもなく私を撃ち殺したよ。くっそー、殺してやりたいけど、人殺しになりたくない。でも、私の攻撃呪文は強力過ぎて絶対に殺しちゃうからなぁ。本当、どうしよう?手加減しなくて良いなら楽なんだけどなぁ。

 それで、私を何処に連れて行くつもりだろう?アジトかな?いや、そう言えば、誰かに私を引き渡すって言ってなかった?誰に?黒幕がいるのね?貫通する弾もそいつらから買ったのね?1発200万だって。凄いねぇ。そんな高価な弾は何発も持ってないでしょう?と言う事は、もう私にダメージを与えられないって事ね?一網打尽にしてやるわ。

 車に揺られながら、かなりの長距離を走っているようだ。私は不覚にも眠ってしまっていた。車が止まったのを感じて、目が覚めた。ヤバい。死んだフリ、そうだ死後硬直が始まってないと怪しまれる。

光気遮断硬化膜キャルスィフィケイション

 包丁くらいなら刺さらなくなる防御膜だ。これで身体が固まってる様に見せかけられないかな?と思っていると、車のトランクが開けられた。

「可哀想にカチンコチンだ」

「それが死後硬直だぜ」

「死姦しようにも、ナニが挿入はいらないんじゃないのか?あははは」

 仲間じゃないのかな?馬鹿にしたような笑い声を浴びせていた。

「よいしょっと。綺麗な死に顔だ。まるで眠っているみたいだ」

 私を抱きかかえて歩き始めた。ガラガラガラとシャッターが開けられる音がする。どうやら何処かの倉庫の様だ。

「おい、るなら早くしろよ!もう来るぞ」

らないよ!」

 そう言うと、私を寝かせて身体を伸ばした。

「ごめんよ。殺すつもりなんて無かったんだ。こんな綺麗な人を殺すなんて…」

 そう言うと私の額に軽くキスをして、涙を流した。

「おいおい、お前、白面の魔女のファンになったのか?アイツらに渡す前に裸くらい見ても良いんだぜ?」

「止めろよ、これ以上死者を冒涜するな!呪われるぞ!けがすなよ!」

「あははは。呪いだってよ?あははは、笑わせるぜ。俺が今まで何人殺したと思ってるんだ?そいつ入れて8人だぜ、8人。それで、俺がいつそいつらに呪われたよ?あははは、呪いたくば呪え!恐ろしくも何とも無いわ!あははは」 

 こいつは本当にクズ野郎だ。ボッコボコにしてやる。すると、シャッターが開く音がした。黒いスーツ姿の男達が6人が入って来た。

「白面は?」

「こちらです!」

「なるほど確かに新聞で見た顔だ。もうお前らに用は無い」

 そう言うと、銃を連続で10発ほど、ぶっ放した。私をさらった3人の男達は、突然の事ですべなく撃ち殺された。

 そこへゆっくりと私が起き上がると、スーツの男達は恐怖で凍り付いた様に動かなくなった。その隙を見逃さず『闇薔薇棘鞭ダークローズウィップ』を唱えて、スーツの男達を文字通り鞭打った。攻撃力はとんでも無く、足を狙い、その足は弾け飛んだ。

「うぎゃあぁぁぁ」

 痛みをこらえきれず、地面を転げ回った。

「この尼ぁー!」

 銃をやたらめったらに、ぶっ放した。転がっている男達をスルーして、鞭を躱した男に向かう。

「私を何処に連れて行くつもりだったの?」

「貴女は死体でも価値がありましてね?裸にして冷凍し、美を愛めでる。そんな酔狂なコレクターもいましてね?白面の魔女と言うプレミアもおまけして、買い手が付いておりましたものを。貴女には死んで頂かねばなりません」

「やってみろ!」

 闇薔薇棘鞭ダークローズウィップを振り回して近づけない様に間合いを取ったが、リボルバーの6連射を受け、6発全てに貫通魔法が付与されていた。

 確実に私の息の根を止めた。上半身がぐらつき、床に倒れ込みかけた時には、傷は治っていた。

「なんですの?貴女は?まさか、不死ですか?あはっ、そうなんですね?くっ、ははは。素晴らしい!人類の夢、不老不死。それが貴女なのですね?ならば、心の臓をえぐり出し、その生き血をすすり、生肝を喰らうと永遠の命が得られると言う。貴女を喰らって、私は不老不死となりましょう」

 ヨダレを垂らしながら、襲って来た。反射的に空を飛んで避けた。まるで予想していたかの様に空に向けて銃を乱射した。6発中5発命中し、いずれも私の防御結界を突き破ったので、貫通弾を使用している事が分かる。地面に着地し、鞭を振るうが避けられた。その間に女言葉を使う男は弾を装填して銃を構えた。

「不死者なら殺せないけど、身動き取れない様にすれば生捕りに出来るのじゃあなくて?うふふふ」

パーン!パーン!

 撃った弾は明後日の方向に飛んだ。

「喰らえ!」

 鞭を振り上げると、背後から弾が貫通しバランスを崩した。

「まだ仲間が?」

 振り向いたが誰もいない。その隙を突かれて羽交締はがいじめにされた。

「跳弾ですよ、跳弾。私レベルになると角度を計算して命中出来ますのよ?ふふふ、貴女、全然力が無いわねぇ?こんなに弱いなら、接近戦に持ち込んだらダメだったんじゃあなくて?」

 ゴキンと音が聞こえ、激痛が走った。

「あぁぁぁ!」

 続けてボキンと音がした。

「ギャアァ!」

 右腕を折り、左腕も続けて折られると、押し倒して馬乗りになった。服に手を掛け引きちぎられると、胸があらわになった。

「安心なさい。私は女なんかに興味は無いから」

 懐から取り出したサバイバルナイフを私の胸に振り下ろした。

「ギャァ!」

 折れた手が回復し、ナイフを持つ手を受け止めたが、力が足りず支えられなくて、勢いそのままナイフが胸に刺さった。それでも渾身の力で、それ以上深く入らない様に抵抗する。

「ははは、無駄よ。無駄!観念して、私に食べられなさい!」

 ナイフを持つ手に体重をかけると、更に深く突き刺さった。

「あぁぁぁ…。ごほっ、けふっ」

 血の泡が喉をふさぎかけ、呼吸が苦しい。手に力を込めるが、身体が麻痺しているみたいだ。意識も飛び掛けて、この手を緩めたら楽になれるのかな?と思い始めた。どんっ。と音がして、馬乗りになっていた男は、前のめりになって転がっていった。

「誰だ!白面の…男?」

 側に落ちていた角材を男に投げ付けたのは、白面の男だった。

(山下…?何でこの場所が?)

「白面は2人いたんですね?男と女」

 立ち上がり、山下に向かって行こうとした隙を突いて、鞭を足に絡め取って引くと転んだ。

「こいつっ!」

 怒りの矛先は私に向いて、振り返って撃った弾は、私の頭を撃ち抜いた。

「瑞稀!」

 駆け寄ろうとする山下に向けて銃の引き金を引くが、カチン、カチンと音がするだけだった。

「チッ、弾切れですか。まぁ良いでしょう。私はこっちの方も得意でね?」

 床に落ちていたサバイバルナイフを拾って構えた。山下もファイティングポーズを取って構えた。

「ふふふ、ボクシングか何かですかね?そんなものがナイフに勝てるとでも?」

完全物理攻撃無効障壁パーフェクトシールド

 山下に障壁を張ったが、ナイフは意に返さず肩をかすめると血がにじんだ。ナイフにまで貫通魔法が付与されている。山下は丹田に力を込めて踏み込み、男の腹に正拳突きを喰らわした。

「ぐはっ」

 内臓を傷付け、口から血を吹いた。カッと力を込めてナイフを山下に繰り出すと、左手で受けてナイフが刺さったが、右手で男を持ち上げ身体を回転させると、そのまま地面に叩き付けた。一本背負いだ。叩き付けられた男はそのまま動かなくなった。傷がすっかり治った私は、山下に駆け寄って飛び付いた。

「格好良い~!助けてくれて、ありがとう。でもどうしてここへ?」

「怒るなよ?瑞稀にGPSを付けてる」

「はぁ?えぇーっ。何それ?」

「山奥の倉庫みたいな所からずっと動かないから、事件に巻き込まれたのか心配になって来てみたんだ。来て良かった」

「うん。ありがとう」

 山下と口付けをして、離れると目線が胸にあるのが分かった。ハッとして、慌てて両手で胸を隠す。胸がはだけて丸見えだったのを忘れていた。

「あははは。もう遅いよ。目に焼き付けたからね」

「もうH~。殴って記憶を失くしてやる!」

「あははは」

 追いかけて走っていると、血で滑って転びそうになり、山下が支え様としたが、一緒に転んで大笑いした。

 私は山下の上になり、目を見つめながら口付けをした。山下が私の背に手を回して反転すると、今度は山下が私の上になった。口付けをしながら、左手で胸を触られた。服は破れ、ブラは剥ぎ取られているので、直接触られた。

「ダメ、ダメもうダメ」

「瑞稀、もう少しだけお願い」

「ダメよ。結婚するまでは我慢してね」

 山下のナイフが貫通して怪我をしている左手に気付いて、回復呪文を唱えて治療した。

「全くもう、怪我してるじゃない」

「こんな痛みよりも、瑞稀を心配する方が上だったから忘れてたよ」

「嘘ばっかり。こんなの痛いに決まってるじゃない」

「惚れ直した?」

「馬鹿…心配させないでよ…」

「心配してくれるんだ?」

「当たり前じゃない!私は山下くんの事が好きなんだから…」

 山下にハグを長めにされた。肩を震わせて、嬉し泣きしていた。

衣装替チェンジ

死者蘇生リアニメーション

 服を着て、地面でのびている男を拘束すると、殺された男達も生き返らせてから拘束した。

 警察にしらせて、取り敢えず事件は解決した。しかし謎は残る。他にも黒幕はいる。貫通魔法を付与した者がいるはずだ。

 山下と私は事情聴取に協力すると、警察署をあとにした。

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