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【第1部〜序章編〜】  第15話 白面の魔女狩り①

「おはようございます、麻生さん」

「おはよう、青山くん」

 笑顔でお互い手を振り合う。心が通じ合っているみたいで幸せを感じる。今の私に見える景色は、全てバラ色に見えた。リア充って、こう言う感じだったんだ?とようやく理解出来た。自分とは一生縁が無いと思っていたリア充生活。1日でも長く感じられます様に、と毎日祈っている。

 麻生さんと一緒に出勤し、テンションが上がったまま仕事をするとはかどる。お昼を一緒に食べて、午後の仕事もテンション高目でこなす。帰りも一緒に帰り、毎回では無いけど食事をして帰る。麻生さんは、おごられそうになると、「そんな事いつもやってたら続かなくなるよ?割り勘で良いよ。その代わり、特別な日にはご馳走してね?」と言った。これだけでも、麻生さんの性格を推し量るには十分だ。顔良し、性格良し、スタイル良しと3拍子揃っている。最高の彼女だ。私には勿体無いほどの彼女だ。

「生涯大切にする」結婚もしていないのに、心に誓った。

 麻生さんと別れて帰ると、女性になって山下のアパートに向かった。録画していた華流ドラマを一緒に観る約束をしていた。観ていたドラマの中で理解出来ないシーンがあった。まだ子供である皇太子に仕える奴婢ぬひの男の子は、皇太子と同じくらいの年齢で12歳前後くらいだろう。前王朝の公主(お姫様)が遊牧民の王に嫁いでおり、前王朝を滅ぼした今の王朝に復讐する為に、クーデターを計画する中で、埋伏の毒として皇太子の元で仕えさせていたのだ。

 ヒロインは皇太子の従姉であり、その恋人は遊牧民の王の義理の息子(血が繋がっていない)だ。皇太子に仕える奴婢の男の子が、ヒロインをおびき出し、忍び込ませていた兵士達が連れ去った。

 それを取り戻す為に恋人は、兵士達を殺し、ヒロインは、皇太子の従者だから殺すと後々面倒な事になると言って救ったが、奴婢の男の子は「兵士を殺した言い訳をどうする?お前達が犯人だと言いふらしてやる!」と言って逃げると、ヒロインの恋人が、男の子の逃げる背中を狙って弓矢で射殺したのだ。

 ヒロインの恋人は男主人公だ。何の躊躇ためらいもなく子供を殺したのだ。例え子供であっても悪事に手を染めた者は容赦しないと言うことだ。ヒロインも子供だから見逃してあげて、とは言わない。殺されるのは当然だとばかりの態度を取るのだ。確かに言いふらされると、ヒロインが処刑される恐れがあった。

 しかし、それにしても、である。殺す以外の方法があったのでは無いだろうか?日本であれば、例えドラマであっても子供を殺したりはしない。例えがあれですが、例え反社会的勢力の方々でも、子供は見逃す。日本人と中国人の考え方の違いをドラマから感じ取れるシーンだ。

「ちょっとひどくない?本当に主人公の2人なの?子供は見逃してあげましょうよ。信じられない」

 私はいきどりを感じて、興奮した様子で山下に熱弁した。

「あははは」

「何がおかしいの?」

「えっ?いや、仲の良い会社の先輩と似ているなって思ってね。先輩もそうやって納得いかないシーンを語るんだよ」

「へ、へぇ…そうなんだ(だって本人だし)」

「この間のプールにも来てたんだぞ。麻生さんの彼氏だ」

 麻生さんの彼氏…良い響きだ。それにしても、中々鋭いな。警戒心も緩々だったから、同一人物だと尻尾を掴まれない様にしなくちゃ。

「ドラマ観て怒ったりしないで」

 背後からハグをされ、そのまま胸を触られた。

「もう、エッチなんだから止めて」

「男なんだから、しょうがないよ」

 正面に向き直されると、口付けをされてベッドに押し倒された。服の上から胸をまさぐる様に触られ、今度は服の中に手を入れて下着の上から触ろうとして来たので、押しのけた。

「はい、もう終わり」

 服の乱れを整える。

「もう遅いから泊まっていったら?」

「えー、だって襲われそうだもん」

「しないって約束だろ?」

「そうだけど…」

 近頃は謝れば済むと思って、1度は胸を触って来る様になった。これを許すと今度は直接触ろうとして来るだろう。1つ許すとそれだけでは満足せずに、徐々にエスカレートしていくのは目に見えている。

 だって私は、本当は男なのだから気持ちが分かる。私だって、麻生さんにも同じ事をしようとするだろう。今はキスもまだだけど。

 山下とこんな関係を続けていてはダメだと思っている。しかし、女性化した時の私の心は女性となり、山下が恋しくてたまらなくなる。もはや理性だとか理屈だとかの次元ではない。好きなものは、どうしようもないのだ。もう自分でも神崎瑞稀を抑える事が出来ない。記憶は共有されているが、完全に別人だと言える。

 私は山下のアパートを出ると、考え事をしたくて珍しく歩いて帰った。いつもは影の中を飛んで帰っているので、新鮮な感じがした。

 女性の時の自分は逆に男の時の自分の事を考える。山下と違ってあまりにも奥手すぎて、付き合ったものの、麻生さんの方が何も手を出されない自分に魅力が無いのか?と勘違いしないか心配した。女性の方から積極的に行って、はしたない女だと思われたく無いので、相手から積極的に押されると、内心嬉しくて受け入れる場合もある。だから男性は積極的な方が良い。

 近年の結婚率減少の要因の1つは、草食系男子と呼ばれる風潮にも問題があると感じる。女性は男性からのアプローチを待っているのに、肝心の男性からはアプローチをされないから、カップルが成立しない。

 そう言う自分も麻生さんから告白して欲しい空気を出されて、勇気を振り絞ったなぁ。人の事は言えないわ、と笑った。

 ふと、何かの気配を感じ、立ち止まって振り返った。しかし、誰もいない。歩き出すと間違いなく、誰かの気配を感じる。まさか付けられている?ストーカー?今度は少し早歩きをした。付かず離れず距離を保たれている。もう間違いないと、確信して反転して走った。

 すると、1人では無くて男が3人いた。

「何か用ですか?」

「美女に声かけられちゃったよ」

「馬鹿、見つかったの間違いだろ?」

「自分から声かけて来るなんて、自意識過剰だな。溜まってるんなら、俺達が相手してやるぜ?」

 男達は話ながら移動し、私が逃げられない様に取り囲んで来た。私は近くの壁に貼ってあった張り紙が目に入り、それをチラリと見た。そこには「チカンに注意!」のポスターが貼ってあった。後で分かった事だが、最近この辺りでは、婦女暴行未遂や強制猥褻等の事件が多発していたらしい。

 男の1人が背後から羽交締はがいじめにしようと飛び掛かって来たが、上空に飛んでかわした。

「こいつ飛行スキル持ちか?」

 Sランク以上は飛行能力を持っているが、日本ではSランク1人と白面の魔女の合わせて2人しか確認されていない。だからSランクだとは思わず、飛行スキル持ちだと考えたのだ。まさか目の前の私が白面の魔女だとは思っていないだろう。

「降りて来い!」

 怒鳴った相手を『光の拘束ライトバインド』を唱えて動きを封じた。

 パーン!と音がすると、胸から血を流していた。地上に落下して激しく身体を叩き付けられると、手足があり得ない方向に折れ曲がっていた。動かなくなった私を見て彼らは死んだと思い、拘束されている仲間を見捨てて走って逃げて行った。残された仲間を、殺人犯に仕立て上げるつもりかも知れない。そう思うと憐れみを感じたが、犯罪者には違いない。

 私は身体状態異常無効スキルがあるので、直ぐに身体が自動で回復する。普通なら即死する様な目に合っても、不死のスキルで死ぬ事はない。拘束している男のポケットの中から、スマホを取り出して通報した。この時になって男は、私が白面の魔女である事を知った。

 通報して逮捕された犯人は、数日もすると刑務所から出て来た。私が現行犯で捕まえたのに、証拠不十分だそうだ。納得がいかない。

「有難う御座いました、兄貴」

「あの女、死んでなかったんだな?」

「はい。どうやら白面の魔女の正体だったみたいですぜ」

「だろうな。死体があったとニュースにならず、白面の魔女がお前を突き出したそうじゃないか。推測はつく。だが、これはチャンスだ。あの女は、犯罪組織の邪魔ばかりしているから、闇であの女は高額の懸賞金がかけられているんだ。しかも、情報提供だけでも良いと来てる。俺達は、あいつの顔を見てるからな。何処に住んでるか探るんだ」

「大丈夫ですか?あの女はSランクと言う噂じゃないですか?」

「なんだお前、女なんかにビビってんのか?」

「女なんか無理矢理、犯しちまえば言う事を聞く様になるさ。動画をばらかれたいのか!って脅してな」

「それに、この弾がある。こいつには貫通魔法が付与されている。1発しかないが、これで200万もするんだぞ。防御魔法でも防ぐ事は出来ない。いざとなったら、こいつで終わりよ」

「へぇ、この弾が200万もするんですかぃ」

「念の為に組織に連絡をしておけ!ここに連絡先が載ってる」

 男達は、大金を手にしたら何をするかと、楽しそうに酒を飲んでいた。

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