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【第5部〜旧世界の魔神編〜】  第3章 浮気の清算

「ひいぃぃ、もう、もう勘弁して下さい。お願いします!お願いします!もう2度とこんな事はしませんからぁぁぁ」

「…今日はお前をいたぶる為に来たんじゃない。お前にレイプされて妊娠して出来た子供が、今日流れたんだ…」

「流れた…?は、ははは、よ、良かった…ですね?」

「良かった…?そう…良かったんだ…これで…でも麻生さんは女医だ。全ての生命に向き合う素晴らしい女医さんだ。お前にレイプされて出来た子供でも、堕ろしたく無いと言ったんだ。どんな理由があれ、生命は生命だってな…。生まれて来る子供には罪は無いって。その為に、自分の幸せをも捨てようとしたんだ。お前は、ただ快楽の為に麻生さんを犯しただけだろう。その為に、どれほど彼女を傷付けたか理解出来るか?彼女を愛する者達が、どれほど悲しんだか理解しているか?本当はお前を切り刻んで殺してやりたい。だが、麻生さんが前を向いて歩き始めるには、お前が逮捕されたニュースが必要だ。亡くなった子供に免じて生命だけは助けてやる」

そう言うと、私は男のモノをメスで切り落とした。

「ぎゃあぁぁぁ!!」

 性犯罪者の再犯率は15%と一見低く見えるかも知れないが、これは再犯者のおよそ7割を占めることから、極めて高いと言える。性的嗜好、快楽を知った者は、その衝動を止める事は出来ない。それならば、矯正してしまえば良い。これでもう2度と性犯罪は犯せない。もう2度と、麻生さんの様な被害者が、こいつから生み出される事は無くなったのだ。


 麻生さんをレイプした犯人を警察署の前に置き去りにし、男が全てを自供してから1週間が経った。その男が何者かによって矯正されていた、と言うニュースを聞いた麻生さんは、もうこれで襲われる心配は無くなったと思ったのか、その場でしゃがみ込んで号泣していた。

 あの事件以降、麻生さんは私と同棲している。1人でいるのが怖いみたいだ。毎晩の様に彼女から求められて抱いた。しかし、眠っていると、毎晩悪夢でうなされていた。泣きながら絶叫して、飛び起きた事もある。彼女の中に深く刻み込まれたトラウマは、一生消える事は無いだろう。

 彼女を支えたいと思い、プロポーズして指輪を見せると、「本当にこんな私で良いの?」と泣かれた。直ぐにOKして貰えるかと思ったが、「考えさせて」と言われた。

 確かに、私以外の男に抱かれたと言う事実は、私の心の中に激しい嫉妬の感情を生んだ。しかしそれを彼女ぶつけても、どうしようも無い。それに、自殺を繰り返し兼ねない脆さが見えた。だから必要以上に彼女には優しく接した。それが、彼女の良心を苦しめているのかも知れない。

 私は麻生さんへの嫉妬を、セフレ関係が続いている元人妻へと向けた。麻生さんには出来ない激しいHを彼女には行い、性の捌け口にした。お尻に入れてみたのも彼女が初めてだ。外に連れ出して、誰かに見られるかも知れない、と言うスリルを味わいながら行ったHは、最高に性的興奮を高めてくれた。しかし行為が終わると虚しさで心が支配された。彼女にも「ごめん。本当はもっと大切にしてあげたいんだ」と呟くと、「分かってるから大丈夫」と言われた。

 彼女から、「私の事、好き?」と聞かれた事もある。「好きじゃなかったら、抱いたりしないよ」と言うと嬉しそうに微笑んだ。実際、麻生さんと付き合っていなければ、私はきっと彼女の再婚相手になっていただろう。麻生さんが他の男に抱かれたショックは、彼女を抱く事によって、私も他の女を抱いているから、おあいこだよね?と思い、少しだけ心が癒された。彼女を抱くほどに癒され、そして麻生さんに対しては、後ろめたい気持ちが増した。

 ある日、元人妻の彼女のアパートに行くと、麻生さんがいた。

「えっ!何で…?」

 頭の中が真っ白になった。

「ごめんね。青山くん、驚いた?実はずっと前から気付いていたの」

麻生さんは、彼女に正座したまま向き合うと、頭を下げると土下座をする格好を取った。

「勝手なお願いですが、どうか青山くんと別れて下さい。青山くんにプロポーズされました。受け入れるつもりですが、貴女との関係まで受け入れるつもりはありません。私達は、前を向いて進みたいのです。どうか青山くんと別れて下さい」

「麻生さん…」

今日この事態を招いたのは、私の不甲斐なさだ。

「本当に、ごめん。申し訳なかった。私と別れて下さい」

自分も彼女に土下座をしてお願いした。

「酷いわ。これでは、2人の幸せを壊しているの、私じゃないの。分かったわ、と言うしかないじゃない?」

耳が痛かった。ただ項垂うなだれて聞いていた。

「ふぅ~。貴女が麻生さんね。事件の事は彼から聞いてたわ。同じ女として、許せない事件よね。どれほど貴女が傷付いた事か。でもね?青山さんも、傷付いていたのよ。貴女が事件に巻き込まれた悲しみ、嫉妬してやり場の無い怒りと悲しみを、貴女にぶつける事が出来ない優しさ。それは、私が貴女の代わりに、全て受け止めていたのよ。私も青山さんの事を愛しているの。貴女さえ居なければ、青山さんは私のものになる、そう思った事もあるわ」

彼女は肩を震わせて泣いていた。

「私の前の夫はね。DVが酷い男だった。ギャンブル依存症で、パチンコに負けては不機嫌になって帰り、私に当たって暴力を振るわれていたの。とうとう娘にまで暴力を振るう様になったの。それでもしつけだと言われれば何も言い返せなかった。夫が怖かったのもあるわ。でもある時、具合が悪くなってパートから早く帰って来た事があったの。そしたら夫と娘は全裸で口淫させられていたの。娘はまだ4歳よ!それでもう一緒には暮らせないと感じ、親と弁護士を交えて夫に離婚届を渡したの。了承しなければ、未成年への性的虐待で、このまま弁護士と警察に行くってね」

大きく深呼吸して話を続けた。

「離婚届が受理され、私は逃げる様にその土地から離れたの。一からやり直そうとしたわ。でも、極度の人間不信と男性恐怖症になっていたの。でもね、青山さんと出会って私は救われたわ。損得無しに、援助だってしてくれた。いつだって私達母娘おやこを気遣ってくれた。だからもう一度、前に進もうと考える事が出来たの。青山さんには感謝しかないわ。こちらこそ今まで、ありがとうございました」

そう言うと、彼女も土下座をした。3人とも号泣して、別れた。

「青山くん、ごめんね。私は自分の事しか考えてなかった。青山くんも傷付いてたんだね。私だけ先に死んで、遺された青山くんの気持ちを考えもしなかった。そうだよね、例え無理矢理とは言え、他の男の人に抱かれたんだもの。脅されてたとは言え、スキルを使われる事なく、自分の意思で抱かれていたわ。これも浮気と同じよね?もしも、やり直せる機会が貰えるなら、お互い様だと思って忘れる努力をしよう」

「麻生さんと結婚したいって、気持ちは変わりませんから。」

 私と麻生さんは、困難を乗り越えて前に歩き始めた。これからも困難は山の様に立ちはだかる事だろう。その度に傷付き、それでも立ち上がらなければならない。生きている限りは、この苦痛は続くのだ。


 実はこの話には続きがあり、ある日『魔法箱マジックボックス』の中に何が入っているのか漁っていた。すると、中から1つの魔道具マジックアイテムが出て来た。それの効果は、一度だけ、起こった事象を無効に出来ると言うものだった。最初は何の事か分からずに放置していたが、もしやと思い「麻生さんがレイプされた事を無効に」と願った。すると、麻生さんの記憶からあの事件は消えた。記憶だけでなく、犯人も逮捕されたと言う事実は無くなっていたのだ。パソコンに入っていた麻生さんのメールも、あの被害動画も消えて無くなっていた。だが、犯人は犯行を繰り返し、いつかまた麻生さんをターゲットに選ぶかも知れない。だから、秘密裏に処理した。これに絡む事が全て無かった事にされた為、実はあの元人妻との関係はまだ続いている…のは秘密だ。

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