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【第5部〜旧世界の魔神編〜】  第3章 未来を知る者

「今日は、会社から出られないんですよね?」

「いつの間に知ったの?山下くんに聞いた?」

「あぁいえ、こんな事件があったんだし、そうなるかな?って思ったんです」

「ふふふ、じゃあ今夜はここでゲームしない?」

「あっ、良いですね。ちょうど誘おうと思ってた所です」

 まだ頭が痛いって事にして、医務室のベッドでゴロゴロさせてもらう事にした。スマホでニュースを見て、麻生さんと感想やこれからの生活の不安を話したりした。

「麻生さん、一緒に暮らしませんか?」

 返事を聞く前にキスをした。何度も軽くキスをしながら、ディープキスをすると、胸に触れてみた。柔らかい。形の良いバストだ。我慢出来ずに押し倒すと、背中を手でタップされた。

「ダメよ、会社だし…それに、シャワーを浴びてからじゃないと…」

「愛してます、麻生さん…」

唇を重ねて起き上がった。

「シャワーを浴びたら、一旦休憩室に行って晩御飯を貰いに行きませんか?」

「うん、そうしよう」

麻生さんと別れて、男性用シャワー室に向かった。個室のシャワーに入って服を脱いで、蛇口を捻った。

『女性変化』

 鏡に写った自分の姿は、夢の中で見ていたアナトそのままだった。夢であって、夢では無い。未来を知るから、麻生さんの好意も知っていた。麻生さんと付き合う事になるのは、ずっと先の事だから、未来を変えた事になる。それに、白面の魔女になるはずだ私は。同じ道を歩けるし、違う道を歩く事も出来る。

 そう言えば、1年もしないうちに戦争が始まるはずだ。そして戦火はやがて世界中に広がる。あの時は自分がアナトだと知らなかった。でも今は違う。ステイタスには、「アナトの生まれ変わり」「唯一神の娘」などの称号が増えている。勿論、『模倣ラーニング』も最初から持っているので、確実に未来は変わっている。あと、一応念の為に確認すると、ちゃんと『聖女』の称号はあった。ここまで読まれた読者なら言わずとも分かる事ですが、この称号があると言う事は、処女であると言う事だ。

 日本は、中国から「五路の計」で同時に5箇所の都市に侵攻され、対応が後手に終わる。同じてつは踏まない。攻め込まれた日と時間は把握している。私の神の力で必ず阻止して見せる。髪を洗いながら、そう決意した。

 シャワー室から出ると、休憩室に向かった。確かコインが無くても災害時には、ここの自動販売機は無料開放されているんだっけ?そう思い出すと、100%のオレンジジュースのボタンを押した。そう言えば、女性になった自分は山下とぶつかって出会うんだっけ?そうならなかったから、未来が変化してしまったな。女性の私が、山下と付き合う事にはならない未来になるかも知れないな、と思った。

 麻生さんがシャワーを浴びて休憩室に来ると、自動販売機で同じくオレンジジュースを出して隣の席に座った。髪からは良い匂いがしていた。

「会社のシャンプーにしては、良い匂いですね?センスが良いのかな?」

「ふふふ、嫌だぁ。これは自前のよ。時々シャワーを浴びて帰る事があるから、置いてるのよ」

「そうだったんですね?どおりでセンスが良いなぁと思いました。あははは」

「褒めても何も出ないよ?」

「後でイチャイチャさせてもらいますから」

「青山くんのH!」

顔を赤らめて舌を出された。仕草も可愛いなぁ。

「先輩、お邪魔でしたか?」

対面に山下が、缶コーヒーを持って座った。

「そう思うなら、他にも空いてるぞ?席は」

「もう、青山くんったら…」

「大丈夫ですよ、麻生さん。先輩なりのジョークですよ?はははは…」

 確か未来で見たときは、ここで山城にも会ったんだっけ?と、周囲を見回したが姿が見えなかった。

「先輩、誰か探しているんですか?」

「え?あぁ、山城の姿が見えないな、と思って」

「山城?山城って誰です?」

「ん?私の同期の山城慎吾だよ」

「誰ですか?先輩の同期にそんな人はいませんよ。頭を強く殴られていたから、誰かと記憶がごっちゃになってるのでは?」

そんな訳ないだろうと、麻生さんを見ると、麻生さんも知らなさそうだった。

(そんな馬鹿な…確かに山城は存在していた。未来が変わったのが原因なのか?)

 考えても答えは出ない。私のランクは人類最高のSSSトリプルエスランクだったはずだが、テンダラース(S10ランク)になっていた。称号が『唯一神の娘』となっており、アナトであると認められているから、このランクなのだろうと思った。少し頭を冷やしたいから屋上に行って来るよ、と麻生さんに言ってその場を離れた。

 屋上に出て誰もいない事を確認すると、『女性変化』『衣装替チェンジ』と連続で呪文を唱えて、女性になった。

「夢の中で女性だった時の方が長くて、こっちの姿の方がすっきり来るな」

 呟いて下を見下ろすと、ネオンの灯りが綺麗だった。能力を得た者達が暴れていなければ、もっと灯りが点いていたはずだ。

「風が涼しくて気持ち良い」

身体を傾けて目線を逸らすと、屋上のドアが開いて山下が上がって来た。

「山下くん…」

「えっ?何処かでお会いした事がありましたっけ?」

急に声を掛けられて、山下は驚いて答えた。

(しまった。まだ出会ってないはずの私が山下を知っているのは、おかしいんだ)

「あ、あははは。女性社員が山下さんの噂をしていたので…。すみません、失礼します」

「待って!」

右手首を掴まれて話しかけられた。

「あっ、すみません。思わず掴んじゃって。そ、その凄く綺麗な女性ひとだなと思って。名前を教えて頂けませんか?」

「はい。神崎、神崎瑞稀です」

「神崎さん?良い名前ですね」

「ありがとうございます。それでは」

逃げる様にその場を離れた。男子トイレの前で周囲を素早く見渡し、誰も見ていないのを確認すると、「大」の方に滑り込んだ。

『女性変化解除』『衣装替チェンジ』と唱えて元の姿に戻ると、麻生さんの待つ医務室へと向かった。

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