【第5部〜旧世界の魔神編〜】 第1章 ダンジョン⑥
ここは、私自身が創り出した世界の中だと言うのは、衝撃だった。とても信じられないが、事実だと認めざるを得ない。今、手を繋いで飛んでいる巧も、NPCキャラクターの1人なのだ。よく出来ているなぁ、と感心しながら巧を見つめた。
「そんなに見つめられたら照れるよ。あははは」
「ふふふ、照れちゃうの?」
ゲーム内のキャラクターでも、巧には違いない。愛しさが込み上げて来る。それに、本当は独りぼっちだ、などと考えたら寂しさで切なくなるので、考えない事にした。
「で、結局どうするんだ?」
「うん、生き返らせる事が出来るけど、キュクロープスが八つ当たりで殺されると知ってて見殺しには出来ないし、アポロンの子供も見殺しには出来ない。もし間に合わなくても、アポロンを説得して目の前で子供を生き返らせてあげたら戦わなくて済むんじゃない?」
「なるほど…」
そう上手く行くと良いな?そう巧の顔に書いてあった。
「オリンポス山が見えて来たね」
「神々の総本山だ。必ずしも友好的だとは限らないからな。気を引き締めよう」
繋いでいた手を、強く握りしめて来た。
オリンポス山頂部は、最高峰ミティカスの標高2918mだが、勿論こんな山頂に来ただけでは神々には会えない。ここから上空にあるゲートを潜って、西洋天界に行くのだ。東洋天界へ行くには、須弥山を登る必要がある。
オリンポス山の山頂から、手に魔力を込めて手探りでゲートを探す。ゲートが目に見えないのだから、この方法しかない。3時間くらいやってて、まだゲートが見つからず、段々イライラして来た。
「何なのよ!いつもならもっと早く見つかるのに!」
「あははは、怒らないで。瑞稀!」
巧に気を使わせてしまい、私は溜息をつくと、根気よく探し始めた。それから更に2時間後、探し始めてから5時間経過して、ようやくゲートの反応があった。
「はぁ、はぁ、やっと見つけたわ…」
ゲートに魔力を込めると、ゲートの輪の中の空間が割れ、破片が割れた鏡の様に飛び散りながら、光の粒子となって消えて行った。現れた空間は、神々の世界へと繋がる異空間だ。巧と手を繋いだまま、ゲートを潜った。ゲートを抜けると、懐かしくもある天界に出た。
「飛ばすよ」
全力で飛んでいると、2本の槍を携えた男が向かって来た。
「うわぁ!相変わらず、超イケメンね、アレース」
「アレース?あぁ、軍神アレスの事かな?」
「そうね。日本ではアレスの方が有名ね。アレースの愛人がアプロディーテで子供を5人も生んでるけど、その中ではエロスが有名よね」
「エロス?」
「日本ではキューピットの名前で有名だよ」
アプロディーテは、ヘパイストスの妻でありながら、アレースを含む5人もの浮気相手の子供を生み、更に美少年を虜にして愛人として囲い、7股をかけていた。
アレースを無視して巧と会話していると、我慢出来なくなって、怒鳴って来た。
「やたらと詳しいが、何しに来た!ここを簡単に通れると思うなよ?」
「アレース、私よ、私。分かる?私よ?」
「オレオレ詐欺みたいだな」
巧は半笑いして私を見た。
「もう、茶化さないで」
私はむくれて、頬を膨らませた。
「誰だ?見た事も無いわ!」
「何言ってんのよ?私、アナトよ。ほら?良く見て!」
「アナトだと?アナトなら追放されたはずだ!よくもオメオメと戻って来れたな!」
そう言うなりアレースは、双槍を繰り出して攻撃して来た。
『暗黒薔薇鞭』
槍よりも鞭の間合いの方が長い分、有利だ。しかし、想像もしない槍の使い方で攻撃をされた。アレースは、わざと片方の槍を鞭に絡め取らせ、もう片方の槍を投げ付けて来たのだ。鞭を取らせまいと踏ん張っていた私は、予想外の攻撃に対処出来ず、まともに喰らい胸に風穴を開けると、血の泡を吹いて倒れた。
「トドメだ!」
鞭に絡まっていた槍を引き抜くと、首を貫いた。
「瑞稀!」
アレースは振り向きざまに、巧の喉と胸を貫いた。
「苦しいか?今、楽にしてやろう」
腰に差していた短剣を取り出すと、巧の首を斬り落とした。
「ほら、お前の男だ」
黄昏の生命が発動し、HP1で耐えていた私の目の前に、巧の生首を見せ付けて来た。
「うっ、う…うぅ…、巧…」
巧が殺されたショックで、戦意を喪失して私は泣き出した。
「アナト、こうして見るとアプロディーテにも劣らぬ美女だな?俺もあいつの浮気相手の1人だった。お陰で最近はご無沙汰なんでな。彼氏の生首の前で、お前と愉しむとしようか?」
何故か受けたダメージが、全く回復しない。ゲーム内では、不老不死が効かない。黄昏の生命のスキルのお陰で死ぬ事は無いが、HP1なんて瀕死の状態だ。私は抵抗する事も出来ずに、アレースに力づくで凌辱された。
「はぁ、はぁ、はぁ…。最高だ。アプロディーテより良かったぜ。あいつはビッチ過ぎる。お前の方が断然良いな。今からお前は、俺の女だ」
私はアレースの屋敷に連れ帰られ、有無を言わさず何度も犯された。HP1から回復しないなら、回復魔法で回復しようとしたが、魔力が0だった。それならと、『魔力吸収』を唱えてアレースから魔力を奪おうとしたが、アレースには魔力が無かった。
それから私は奴隷の様に首輪を付けられて繋がれ、暴れる私の両手足を括り付けて凌辱し続けた。
「はぁ、はぁ…気持ち良い。最高だ、アナトは。可愛い、可愛い。あぁ、イきそうだ」
アレースは、容赦なく私の膣内に精を放った。
「もう嫌だ!」
私は舌を噛みちぎって死のうとしたが、直ぐに舌が繋がってHP1で耐えた。自殺する事も出来ない。絶望で泣き続けた。
「そんなに泣かれると萎えるだろ!俺はお前を、俺の女にしたいんだよ!ただの性奴隷に成り下がりたいのか?」
「誰がお前なんかに!巧を殺したお前なんかに!許さない!絶対に私は、お前を許さない!」
「そんなに睨むなよ」
アレースは再び私を凌辱し始めた。
「身体はお前の好きにすれば良い。心まで奪われたりはしない!」
悔しさで涙が止まらなかった。
「なぁ、俺の女になるなら、彼氏を弔わせてやろうか?」
「……」
「良いのか?あの生首、腐って来たぜ。見せてやろうか?弔わなくて良いのかよ?」
「卑怯な…」
アレースは立ち去り、再び戻って来ると巧の髪の毛を掴み、生首をぶら下げていた。
「どうする?弔ってやりたくないのか?」
腐り始め、変わり果てた巧の生首を見ると心が張り裂けそうだった。
「うぅ、うっ…巧…ひっく…」
「俺の女になるなら、大人しく咥えるんだ。ちゃんと舌を使え。歯を立てたら、お前の目の前で男の頭を砕くぞ!」
私は泣きながら舌を這わせて口淫し、アレースが満足するまで続けた。精を口の中に放たれると、「飲め!」と強要され、大人しく従った。
「がはははは。一生大切にしてやる」
首と手足の鎖を外され、自由を許された。屋敷の外には結界が張られ、出る事は出来なかった。巧を屋敷の隅に埋めて弔った。アレースは、大切にすると言う言葉通りに何不自由ない暮らしをさせてくれた。屋敷の外に出ること以外は。
キュクロープスの兄弟はどうなったのだろうか?と情報を集めると、ゼウスの雷霆によってアポロンの息子が亡くなってしまい、怒りの収まらないアポロンは、キュクロープスの兄弟を見るも無惨に、嬲り殺しにしたそうだ。私が間に合っていれば…そう思い、懺悔して涙を流した。