【第1部〜序章編〜】 第1話 頭の中に響く声
その日、全ての人類の脳裏に神々の声が響いた。
「求めれば能力を与えん!」と。主人公・青山瑞稀は、優しさだけが取り柄の冴えないサラリーマン、32歳独身、彼女いない歴32年のドーテーだった。
神々から与えられた能力を悪用した犯罪に巻き込まれて重傷を負う。気を失いかけながら、「チート能力」を望む。
目が覚めても、何の変化も無い自分にハズレスキルだったとガッカリするが、「女性変化」と言うよく分からないスキルが付与されている事に気付く。
思い切って「女性変化」のスキルを使うと、何と全世界でたったの3人しかいないSSSランクだった。
しかし、女性に変身している間しか、チート能力を使う事が出来ないのであった。
異世界転生ならぬ、「性別転生」となった主人公の活躍をお楽しみに!
ちょっぴりHなリアルファンタジーです。
第1部は序章編。→死んで転生するまで
第2部は魔界編。→転生後は魔界へ
第3部は神国編。→神に攫われて神国へ第4部は西洋の神々編。→復讐の幕開け
第5部は旧世界の魔神編。→誕生の秘密へと続いて行きます。
第6部はアイドル編。→タイトル通りアイドルになり、無理矢理に枕営業もやらされながら成長し、トップアイドルに登り詰める様子をご覧下さい。
第7部は虞美人編。→ネタバレになるので、敢えて伏せます。なぜここで虞美人目線での項羽と劉邦の話なのかと。第8部への布石である為、飛ばさずにお読み下さい。
第8部は龍戦争編。→ドラゴンは、ようやくここで登場します。天龍国でドラゴンと戦い、冥界(あの世)では第六天魔王・織田信長と戦います。そして大魔王サタンが…。
第9部は巨人の王国編。→今度は巨人族との戦争に。
第10部は完結編。→感動のエンディング。
最後までお楽しみ下さい。
その日、全ての人類の脳裏に直接声が響き渡った。その声は、壮麗かつ尊大な威厳が感じられながらも穏やかで、聴く者は心が奪われ耳を傾けた。
事実、仕事中の者も授業中の者も手を止め、また歩行者だけでなく、運転手でさえも時間が止まったかの様に足を止めて、その声に聴き入った。不思議な事にそれは、言語が異なる人類全てが同じ言葉の意味として理解した。言葉の意味を要約すると、「望んだ能力を与えよう」と言うものだった。
初めこそは聴き入っていた者も、頭の中で鳴り響くアラームの様に何度も何度も繰り返されるうちに鬱陶しく感じ、イライラする者、周囲の友人や知人に確認し、皆が同じ症状である事に安心する者など様々だったが、やがて耐えられなくなった者が「願い事はこの声を止めろだ!」と怒鳴った。すると、先程まで鳴り響いていた声が嘘の様に止んだのだ。それに倣って同じ願いをした者も少なからずいたが、違う願い事をした者もいた。
しがないサラリーマンの私はちょうど昼飯時で、会社近くの公園のベンチでいつもの様に、少し固くなってきた胡桃パンをかじっていた。頭に響く声を聴きながら、どうしたものかと、ぼーっとしていると、宙に浮いたり飛んだりしている子供達の、不思議でどこか幻想的でもある光景が目に入った。彼らは純粋な心で高く飛べたらとか、空を飛びたいと願ったのだろう。
本当に願い事が叶うんだ?と、理解するのに時間はかからなかった。「声を止めろ!」と願った者は、自分は何て愚かな願い事をしてしまったのだろうか、と後悔していた。
それからは酷いもので、人間の欲深さ醜悪さにはつくづく嫌悪する事になる。ある者は、目の前で大金を出して見せ、またある者は金銀財宝を山の様に積み重ねて見せた。更にある者は、女性の時間を止めて身体を触ったり、手から炎を出して街路樹に火をつけて回る者、通りにある宝石商のガラスケースを爆破して宝石や貴金属類を強奪する者などが現れた。こうなって来ると辺りは騒然として、彼方此方で悲鳴が上がった。
私は残りの胡桃パンを口一杯に頬張り、慌てて会社に向かって走り出した。
(苦しい)
走り出して直ぐに息が上がった。運動らしい運動なんて、高校卒業してからは記憶に無い。しかも30代前半のおっさんサラリーマンだ。息が上がるのも無理は無いと、自分で自分を慰めるとどこか可笑しくなり、笑みが溢れた。
(私って、意外に余裕があるな?)
息が切れて立ち止まった瞬間に目の前が真っ暗になって地面に倒れ込んだ。
(痛っ、何?殴られたのか…?)
遠のく意識の中で、誰かが私のポケットの中をまさぐっているのを感じた。
「しけてるなぁ、おっさん!これっぽっちかよ!」
若い女性の声と、遠ざかる足音を耳にしながら、私は意識を失った。
目が覚めると、口の中は血と土の味がして、辺りの焦げ付いた臭いが鼻を突いた。かなりの時間、うつ伏せに倒れていた様だ。
(痛っ)
頭に手をやると乾いた血が、手のひらに付いた。こうなる前に起こった出来事を思い出し、ポケットの中に手を入れると、やはり財布が無くなっていた。どうやら頭を殴られて、財布を盗られたみたいだ。頭を摩りながら辺りを見回すと、公園近くにあったはずの商店街が崩れ、まるでテロで爆破事件でも起こったかの様な有様だった。
辺りは既に薄暗くなって来ており、目を凝らすと大勢倒れて動かない人達が見える。よろめきながらその人達の下へ向かい、声を掛けながら揺さぶった。
(し、死んでる…)
腰が抜けた様に力無く、その場に座り込んだ。私は死んでると思われて襲われなかったのだろうか?いや、正確には襲われて気を失っていたのだが…。こんな状況下でもさっきからずっと変わらずに、頭の中に声が響いている。
「望んだ能力を与えよう」と。
私は頭の痛みで再び意識を失い掛けながら、心に強く念じた。(力をくれ!)と。
第1章の序章編は最初は短編小説でした。一見するとTSジャンルかと思わせておいて、第2章で違う事が分かるのです。更に第4章において主人公が何者であるのか分かるのです。敢えてこの後書きでネタバレにも近い事を書いたのは、何だよくあるTSかよ?と、ここで読むのを止めてしまう人がいるのを防ぎたいからです。神や悪魔が出て来て面白くなるのは2章からだけど、序章編を読まないと流れが分からなくなるのです。第6章のアイドル編の様に、5章までの流れから普通にアイドルになる話って何?どうやってそんな話になるの?と、全て繋がっています。伏線は全て回収して行くシステムなので、後からアレってここに繋がるんだ?と楽しんで頂けたらと思います。また、作者が歴史好きである為、中国史(中国語)や日本史がちょいちょい出て参りますので歴史好きな読者の皆様だけでなく、あまり得意で無い読者の方も楽しんで頂ければと思います。
かなりの長編なので、ブックマークをして是非最後までご覧下さい。また、まぁまぁ面白いな。と思われましたら星の評価も併せてお願い致します。X(旧Twitter)のフォロワーも宜しくお願い致します。