ルナリエ せきがえ
まだ夕方ということで、深くはしない。
肌を合わせたぐらいで切り上げた。
夕食の時間にはエレフセリアの家へと帰る。
状況的には『レマル・ティコス』かとも思われるが、急すぎるので断念だ。
30人にも及ぶ団体での利用には予約が必要だからな。
オレは『カレン』または『クレーマー』などと言われたくないのだ。
ヘタにゴリ押しして『ハルカ』が、この世界での『飲食店で無茶な要求をする人』を表す言葉になるとか嫌すぎる。
ただし、夕食の前に一仕事しなくてはならない。
『軍神の魂』が終わった直後、再始動時にやろうとしていたことが手付かずのまま放置されているのだ。
まずは、これを片付けなくてはならない。
「全員いるな?」
ダイニングに立って、見渡す。
ミーレスたちはもちろん、シュミーロ以下の職人組とアダーラ組、ルナティクスとパーネインも揃っているのを確認した。
もちろん、オレの後ろにはルナリエとダヴェーリエ、そしてリェータもいる。
「テーブルとチェアをリビング側に集めてくれ」
とりあえず指示を出す。
テーブルを二人で一つ、チェアは一人二脚ずつ運ぶのを見守った。
終わるのを待って、治療院の二階へ。
テディリアーナとクレミーの部屋を仕切りで区切って作ったあとの空間から、置きっぱなしにしていたテーブルとチェアを運び出してくるのだ。
買ったものの配置もしないでいたダイニングテーブル二つと、チェア12脚である。
幸いと言っていいのかどうか。
これまではルナティクスやパーネインがダイニングの席に着くことがほぼなかった。
少なくとも食事時にはいないことが多かったので問題にしなかったのだが、今後はいる可能性が高い。
キッチン前のカウンター席も使ってなんとかもたせてきたが、さすがにそろそろちゃんとするべきだろう。
しかも、今日からはルナリエたちも加わるのだ。
既存のテーブルでは完全に足りなくなる。
見た目の統一感のため、新規テーブルの天板にも大理石を貼った。
明かりを反射して明るくなるだろう。
「12人掛けをキッチンのカウンターと平行に置く。6人掛けをその前に二列で縦においてくれ」
メインとなるテーブルを横にして、対面式のテーブルが二列並ぶ。
なんというか、結婚式の新郎新婦が座る席と、新郎側と新婦側の親族が座るテーブルといった形だ。
まず、12人掛けテーブルのキッチンを背面にした右から3番目にオレが座る。
これをメインテーブルとする。
同席する面子は――。
オレの左右には当然に、テディリアーナとクレミーの『帝国側の嫁(見做し婚)』。
正面が『アルカノウム連合副会長』のマティさん。
その左右に『迷宮アドバイザー』リティアさんと『人型演算装置』パーネイン。
クレミーの横にルナリエ、ダヴェーリエの『ラリベア王国側の妻』。
テディリアーナの隣はルナティクス『竜の人2』。
リティアさんの横にリーバとシュミーロ『カワベ工房の職人』。
パーネインの隣にはレジングル『竜の人1』。
――と、各種代表者を集める。
オレから見て右側――リビングがある側――の手前のテーブルは『家族席1』。
座るのはミーレス『筆頭奴隷』、シャラーラ、アルターリア『魔導士にして精霊使い』、リリム『精霊使い(木属性)』、フェリシダ『メイド長』、メティス『治療院の治癒魔術士』だ。
――奴隷または元奴隷の中でも序列上位の者。
同じ列の奥側テーブルが『家族席2』。
ナシィーラ、エレクシア、アロガシア。
――奴隷または元奴隷の中でも序列下位の者。
浴室側手前のテーブルが『家族席3』。
アダーラ、クレア、マローネ、シェリィ、リェータ、戻ってくればトロネット。
――『家族認定』待ちの者たち。
最後、浴室側奥が『ゲスト席』。
ガトーシャ、アリシィア、ミンク、ユトア、厨房担当。
――カレーショップ551の関係者となる。
妖精たちの大部分はウッドデッキ。
絹依さんはカウンター席だ。
来客が来た場合はメインテーブルを空け、オレと客、客と関わりの深い者が座る。
席を空けた者たちは普段の席次に準じて、『家族席1』から『家族席3』まででズレるものとしよう。
『家族席4』は固定。
『家族席3』にも収まらなかった者はカウンター席かリビング行きとする。
もちろん、場合によっては『家族席4』のガトーシャたちに『ラリベア』の店へ戻ってもらうこともあり得る。
ただ、ガトーシャたちについては、雇い入れた村娘たちに店で賄いを出すことになる。
我が家で食事をする機会はあまりないはずだ。
そうだとしても、一応数に入れるとして――。
恐ろしいことに空席が5席しかない。
トロネットを考えれば4席だ。
ダイニングテーブルを買い足したばかりのはずなのに。
この時点でもう逼迫しているとか!
マジで恐ろしくなるね。
席の指定が終わり、それぞれが席に着いた。
フェリシダと絹依さん、クレミーが配膳を始める。
その間に、オレはクラン編成を行った。
1:オレ、ミーレス、シャラーラ、アルターリア、ナシィーラ、メティス、レジングル。
2:アダーラ、クレア、クレミー、マローネ、シェリィ、リリム、ルナティクス。
3:リティア、フェリシダ、テディリアーナ、シュミーロ、リーバ、マティ、パーネイン。
4:ダヴェーリエ、ルナリエ、リェータ、エクレシア、アロガシア。
5:雫、風花、凍呼、焔、畝里、四葉、結羽姫、絹依、守楽、トロネット。
6:レミー、ララー、タリア、シーラ、スー、ジル。
7:ダラー、レーア、クミン、ロネ、エリィ、イムル、ルティ。
8:ティア、エリダ、リアナ、ユミー、パドラ、マイ、パルネ。
4を挿入したのだ。
そこで、気が付く。
施設警備員も増やせると。
「明日はダヴェーリエ、ルナリエ、リェータ、エクレシア、アロガシアのレベル上げと、戦闘能力の確認を行おうと思う。無理はさせないが、各自そのつもりでな」
アロガシアは無理かもしれん。
未だに口もまともにきけず、部屋の隅で縮こまっているからな。
それならそれでもいい。
急ぐ理由は全くないからな。
夕食を食べ終えた後は恒例の風呂だ。
「こ、これは――」
初見のルナリエが絶句している。
自慢の大露天風呂だからな。
さもあろう。
歳を重ねてどっしりと根性が座っているダヴェーリエは、さっそくジェットバスで背中と腰をほぐしている。
リェータはサウナが気になるらしく、リティアさんに使い方を聞いていた。
エクレシアは宿敵(?) シャラーラに背中を流されている。
なんかガチガチ震えていたが・・・まぁ慣れるだろう。
アロガシアは――隅で体を洗っている。
こちらも前はまともな服さえボロボロにするような奴だったことを思えば、順応し始めていると言っていい。
とはいえだ。
シャラーラたちのときと比較するとダメダメだろう。
慌ただしくて、新規の奴隷および嫁の順応がまったく進んでいないと感じる。
早急な順応策が必要だ。
「明日からも頑張ろう」
湯面を波立たせないようルナリエが静かに歩み寄ってくる。
その裸体を眺めながら、呟くオレなのだった。




