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異世界で家を買いました  作者: 葉月奈津・男
『恵』編
12/404

ミーレス11 新居

25/6/22。

ごちゃごちゃしていた文面を読みやすく。

ところどころ、に訂正を。

書き直しました。

 

 家具もベッドもないので、今日はマクリアに戻りメルカトルの離れに帰ることにする。

 マクリアの町は日が傾いていた。

 もう夕方に近い。


 エレフセリアではそれほどでもなかった。

 エレフセリアはマクリアの少し南にある感じなのだろう。

 何時間もの違いはないが、多少の時差はあるということだ。


 距離にすると何百キロくらい違うんだろ?

 答えを知っても、ふーんでしかない疑問がわいた。


 おぼろげに山形と青森なんて考えてはいるが、秋田と福島の距離感かもしれないし、よくわからない。

 少し考えてみたが、やめる。不毛だ。

 そんなことより・・・。


「あー、なんだな。ミーレス」

 向かいのベッドに腰かけているミーレスに声をかけた。


「はい、なんでしょうか?」

 迷宮の探索メンバーを増やすことについては言質を取ってある。

 だが、いろいろ聞いてみたところでは治癒魔法士というのは迷宮に同行しないらしい。

 治癒に特化しているので連れて行っても戦闘の役に立たないのだとか。


 治癒魔法よりも、薬を常備するかほかの回復系のスキル持ちを同行させた方がいい。

 それが、冒険者の常識であるようなのだ。

 もちろん、大きな怪我の場合治癒魔法士の出番だが、そんな状態になったら戦闘続行は無理。

 迷宮から脱出することになるわけで、治療はそれからでいい。

 だからこそ迷宮の外に治療院を構えることになるわけだ。


 それはいいが、問題として。

 メティスは役に立っていない。

 ミーレスがそう思うようだと困る。


「メティスのことだが、実は非常に役立っているということを知っておいてほしい」

「えっと。お役に立っているのですか、メティスは」

 予想どおり、ミーレスはいぶかしげに眉を寄せた。


「これを見ろ」

 論より証拠。


 オレはズボンの裾をまくって、昼前に負っていながらかすり傷だと放置しておいた傷を見せる。

 同時に、右手を傷の上に掲げて・・・。


「・・・ぁ・・・えっと。治癒魔法? ですか」

「そうだ」

 傷が完治したことを確認して、裾を戻しながら答える。


 メティスが所有奴隷になった時、オレはすかさずパーティに入れて、編成画面を開いた。

『パーティ効果は個人の能力をパーティ全体に広げられる』のなら、その効果範囲をもう少し広げたら?

 能力の波及範囲をオレ一人に向けさせる代わりに、効果の度合いを大きく出来たら?

 その結果がこれだ。

 他にも二、三調整が必要だが、それは説明しなくてもいいだろう。


「メティスのおかげで、オレは治癒魔法を使えるようになったわけだ。・・・安い買い物だったよ」

「それは良かったです。おめでとうございます。ご主人様」

 パァッと明るくほほ笑むミーレスを思わず抱き寄せた。


「ありがとう。オレのこともメティスのことも、よろしくな」

「はい」

 もう、本当にかわいい。

 食べちゃいたい。


 しかし、襲い掛かるわけにはいかない。

 オレはそんな鬼畜じゃない。

 でも・・・。


「あ、あの・・・」

 見つめているとミーレスが、何か言いかけた。


「も、もしかしたら、ご存知ないかもしれないので、申し上げますが」

 視線をあちこちにさまよわせながら、とても言いづらそうに。


「うん、なに?」

「奴隷には、二種類あるのです」

 奴隷の種類?


「それは、確かに知らないな。どういうものなの?」

「一つが、仕事をさせるためだけの『労働奴隷』、借りた金を返せなかったとか税金が払えなかったとかで奴隷に落ちた人たちです。この人たちは基本的に金額と労働条件が確定したあと、期間を区切って自由を奪われた、という存在になります」

 わからなくはない。

 職業選択の自由とか、居所変更の自由とかを奪われた、という意味での奴隷。


「ただ、奴隷に支払われる給金などたかが知れていますので、通常は一度落ちると生涯奴隷でいることがほとんどです」

 そうだろうな、とは思う。

 そもそも、そうやって自分を買い戻せるような算段が付くようなら、奴隷になんか落ちないだろうし。


「二つ目が、『商品奴隷』です。そのままずばり、『商品』としての奴隷。奴隷と奴隷の間に生まれた子供とかが多いのですが、多額のお金を必要として自ら自分を売った人などがそうなります。あとは、今ではほとんどありませんが戦争での捕虜とか」

 自分という存在を丸ごと金に換えた、または人権そのものを否定され認められていない人間、というところか。


「『商品』ですから、物です。買い手に処分権が100パーセント渡されることになります。つまり、店で買った陶器のお皿と同じ。大切に100年使おうと、買ったその場で投げて割ろうと自由、ということです」

 また、極端な。


「もちろん、基本的にであって限度はあります。『商品』とは『資産』ですので、年に五万ダラダの『所有税』が掛けられ、適正な『資産管理』が求められます。・・・殺すとか、目的なく手足の切断などはできないのです」

 極端でなく、事実だった!?

 目的があれば、手足の切断もオーケー!?


「実際過去にはありました。医師が外科手術の研究目的で切っては繋げ、繋げては切るを繰り返したのです」

「ゆ、許されるんだ?」

「そのことを知った市民たちが、その医師を気味悪がって避けるようになったために自滅したそうですが、法的にはお咎めがありませんでした」

 声まで青ざめせて問うと、冷静に返された。


「わたしは、いえ、わたしも、ですね。『商品奴隷』です。・・・その、好きなようにしていただいていいのですよ?」

「え?」

 ちょっと待ってほしい。


 それは、オッケーサインですか?

 一般論ですか?


 しょせん男なんて、それが目的でしょ? という軽蔑のお言葉ですか?

 混乱して、まじまじと見つめてしまう。

 上目遣い、うっすらと紅の差した頬、うるんだ瞳、もじもじと揺れる身体・・・。


「えーっと・・・」

 オッケーサインかな?

 騙されてる?

 押し倒した途端、グサッとか?


「・・・その、筆頭、としては、あとから来た子に、その・・・先を・・・」

 先を越されたくない、か。

 女の矜持の問題らしい。


「あ・・・うん、言いたいことはわかった・・・と、思う」

「で、では・・・」

 さっ、と立ち上がるミーレス。

 オレは、両手を胸元で開いて、止めた。


「ムリ、してるよね?」

 カタカタと震えている肩や、足を見ればわかる。

 未開拓領域への突入の時か、と熱くなっていたオレだけどサーッと熱が冷めてしまった。


「もう少し、そういうのはなしでいいと思うよ?」

 やさしく言ってみる。


「で、ですが・・・ご主人様は、その、我慢・・・してます、よね?」

 う。

 バレバレだったか。

 余裕ぶった対応をしてはみても、日々視姦していたことに気付かれていたとあっては形無しだ。


「それはまぁ、否定しないけど」

 認めてしまう。

 でも!


「さっき、メティスにも言ったけど、嫌がっているのを強引にってのは好きじゃない。今のミーレスに手を出すのは、ダメだ」

 強く言い切る。

 半ばは、自分に言い聞かせるためだ。


「そう、ですか」

 その夜、オレは毛布をかぶって寝た。

 ミーレスが、視界に入らないように。




 翌朝。いつものように迷宮を探索し、朝食を取ってから引っ越す。

 荷物はリュックと頭陀袋が一つずつ、楽なものだ。


 メルカトルのところには一応引き払うと告げておいた。

 本人が留守だったので使用人に言付けを頼んだのだが、話を聞いた使用人は困っていた。

 一節単位で借りていたので、その分はどうするのか、という問題があるからだ。


 もちろん、オレはそんなことでケチケチしたりはしない。

 残りの日数分を日割り計算で返せとか言うつもりはなかった。

 そう伝えてもらう。



「今日のところは家具を置くところを軽く掃くだけにして、あとは何日かに分けて全部綺麗にいたします。お任せください」

『家』につくと、ミーレスがすぐにそう言ってきた。


「ああ、そうだな」

 掃除はミーレスにやってもらえばいいだろう。

 相手は奴隷で、オレは主人。


 その線引きをあいまいにするのはよくない。

 とはいえ、まずは掃除道具から買いそろえないといけない。


 生活するためには家具も必要だ。

 今日は買い物の日だな。




 夜が明けたばかりのはずだが、町の店は営業を開始していた。

 こちらの世界の店は始まるのが速い。

 時計というと日時計の世界だ。

 日が昇れば開店、沈めば閉店という感じが最も多い。

 あとは店主が起きだした時間で、となる。


 かく言うオレ自身、朝飯前に迷宮へ行くなんてことをしている。

 元世界なら惰眠をむさぼっていただろうに。


 理由はある。

 朝が早いというよりも、夜が早いのだ。


 スイッチひとつで昼間並みの明るさが確保される世界ではない。

 暗いのでできることがかなり限られる。

 だから寝るしかない。


 21時には寝てしまう。

 そうなると8時間たっぷり寝ても、朝4時に目が覚めるわけだ。

 だから、朝食前に迷宮へとなるのである。


 雑貨屋でミーレスに選ばせて、箒やタオルなどを買い込んだ。

 洗剤のようなものはないらしい。


 それと最低限の家具、ベッドとクローゼットを買う。

 ベッドはゆったりサイズを二つ。

 クローゼットも一番大きくて丈夫そうなのが三つ必要だ。

 オレはどうでもいいが、ミーレスの服は増えていくだろう。


 それと、家具屋に置いてあった物の中で一番大きくて頑丈そうな12人掛けのダイニングテーブルと椅子のセットも買った。

 三人しかいないのに、と思わないでもないが状態のいい中古が目に入ったのだから仕方がない。

 目に入って吟味に入ったところで、店主から拝み倒されて買ってしまった。


 あとは、キッチンで使う食器棚、もちろん食器も買う。

 それとオレ用に戸棚を一つ。


 家具はあとから荷車で運んでくれるそうだ。

 ミーレスはそのまま先に家に帰し、オレは調理器具や日用品、桶、水がめなどをそろえにいく。


 一応、どんなものが必要かは聞いておいた。

 洗濯や掃除、トイレに使う水は桶。

 飲料水は水瓶に汲んでおくものらしい。

 桶は木製で、木質によってはヤニが出る。

 かめは焼きものだからヤニが出ないが重くて運びづらい。


 適材適所、ということだ。

 溜めておくための高さが一メートルくらいのが二つと、井戸で水を汲んで運ぶための小さなかめがいくつか必要となる。


「それでは水を汲みにいってきますね」

「あー。うん。そうだな。暇を見つけて汲んどいてくれるか」

「はい。もちろんです」

 ミーレスが小さめの瓶の一つを持ち上げた。


「じゃ、オレはちょっと街を見て回ってくるよ」

「はい。行ってらっしゃいませ」

 掃除はミーレスに任せて、オレは快適な異世界ライフのためにある道具の開発に乗り出した。


 ずばり、『どこでも壁掛け』だ。

 今のように、二点を結ぶだけのものではなく、正真正銘の『どこでも』をだ。


『移動のタペストリー』の魔法の理論はわからない、わからないが条件付けについては理解した。

 魔法陣の形状が、入り口と出口で同一になる。


 つまり、二点のこちらと向こうに同じ魔法陣を置くことで、この二枚のタペストリーは『一枚のタペストリーの表と裏である』と空間に錯覚させているのだと思う。


 この世界に来てから、オレはすでに何枚もの『移動のタペストリー』を通ってきた。

『鑑定』の能力に気付いてからも。


 その経験から、一枚のタペストリーがあれば、すべてのタペストリーに移動が可能との結論を得た。

 それを実証する。


 使う魔力は、どこに行くのであっても量は変わるにしても質に違いはない。

 だから、これはこのままでいい。


 問題は、こちら側のタペストリーと目的地のタペストリーとの魔法的な差異を0とすることができるかどうか。

 もし、これが成功するならば、今後は冒険者ギルドまで歩く必要がなくなる。


 オレは、心の中ですでに移動部屋と名付けた部屋に向かった。

 玄関の外から見て右側の小部屋だ。

 中から見れば左。

 玄関だと万が一来客があったりすると面倒なことになりかねないし、土足で寝室に入るなんてとんでもない。

 ダイニングはミーレスにぶつかる可能性がある。

 この部屋が最適解だろう。


「いってみるか」

 盗賊からいただいたタペストリーを壁に掛ける。

 一応入ってみると、当然行きつく先は廃坑だ。


 小部屋に戻って、設定値の変更を行う。

 向かうのはエレフセリアの冒険者ギルドだ。


 設定項目は細かい上に内容が理解不能、だが並びと数字は脳内にメモしてある。

 メモの通りに数値を変えて、いざ足を踏み入れる。

 一瞬の暗闇、そして明るくなる。


「・・・成功、だ」

 あっけないほど簡単に、移動は成功した。

 戻るときは、こちらのタペストリーの設定を行く先のものに変えればいい。

 変えるといっても、魔法陣に数値を誤認させるだけでタペストリーに描かれた魔方陣を描き変えるわけではない。

 変更はあくまでも一時的なものなので、一度通り過ぎると自然に元に戻る。


「よし、戻れた」

 移動部屋に戻れたのを確認して、次は帝都。


「成功」

 さらに、マクリア。


「成功」

 ついでに、マクリアの迷宮。


「成功だ」

 すべて成功した。


 これで、一度通ったタペストリーになら・・・って、『どこでも』じゃねぇじゃん!

 一度は通常の方法で移動する必要があるようだ。


 いや、まぁ、しかたない。

 ともかく、移動手段は確保した。



「ああ、街を見て回るんだったな」

 再び、エレフセリアの商人ギルドへと飛んだ。



 エレフセリアの商人ギルドに移動、街の中をぶらついて、ギルドから家に帰る。

 ちゃんと移動部屋に戻ってこられた。


 大きな家具。木製のロッカーを引きずって。

 なんのためかといえば・・・、


 ここは移動部屋だ。

 当然、迷宮にもここから移動するし、戻ってくるのもここだ。


 だから、装備品を置く棚が必要だと思ったのだ。

 だから買ってきた。


 上下二段、左右五列のロッカーを。

 あとで、ミーレスに装備品の手入れに必要な道具なんかを聞いて、ここに置く。

 収納スペース兼メンテナンス兼移動部屋とするつもりだ。


「あ」

 家具の下についていた泥が床についた。

 引きずって持ってきたせいだ。


 床を拭きながら、思い出す。

 そういえば、足元になにか敷く物が欲しいと思っていたんだったと。

 今は使い古しの手拭いを敷いてあるだけだ。


 買い忘れてしまった。

 まあ急ぐことでもあるまい。



「ただいま、ミーレス」

「おかえりなさいませ、ご主人様」

 家に帰ったオレをミーレスが迎えた。

 拭き掃除の手を休めて、頭を下げる。

 もちろん、メイド服だ。


 実際に着ていた服なのだし、これで働いていた経験がある。

 堂にいったものだ。


「そういう挨拶って、メルカトルの商館で習ったの?」

 侯爵の家で習ったのかとも思うが、『商品』だったというなら、事前に仕込まれていたのではないだろうか。


「はい、そうです。おかしいでしょうか」

「いや、素晴らしい」

 やはり奴隷商人のところで覚えたようだ。


「メティスの猶予期間が終わったら、研修に出すというのもいいかもな」

「・・・そうですね。いいかもしれません」

 ミーレスさん、声の温度が下がってますよ?


「そ、そろそろ家具が到着していい時間じゃないか」

 まずい、とすぐに話題を変える。


「そうですね。ちょっと見てきましょう」

 ミーレスもそれに乗ってきた。

 家具は昼ごろに届けるという約束だ。

 そろそろだろう。



 家具はすぐに来た。

 馬に引かせた馬車二台に品物を載せている。


 二台分も買ってたっけか?

 ・・・ああ、ベッドとダイニングテーブルを一緒には積めないか。


「お買い上げありがとうございます。ご購入いただいた品をお届けにまいりました」

「悪いな。中に置いてくれ」

「こちらでよろしいですか。部屋までお運びしますが」

「ここでいい」

 玄関ホールに運び入れてもらう。

 商売上の人間とはいえ家の奥、特に寝室になど入れたくない。


 各部屋に運ぶのはオレとミーレスで何とかなるだろう。

 戸棚とクローゼット、食器棚は二人いれば十分運べそうだ。


 ベッドもマットレスを別にして運べば問題ない。

 一番大きいダイニングテーブルを動かすのは隣の部屋までだ。


「それでは軽く拭きますね」

「そうだな。椅子から拭いてもらえるか。隣の部屋に持っていって食卓にする。順次片付けていこう」

「わかりました」

 家具屋が帰ると、まずはミーレスに椅子を拭いてもらい、オレが隣の部屋に運ぶ。

 テーブルは、オレとミーレスでゆっくり移動させた。

 テーブルと椅子がなくなってスペースができると、ミーレスが戸棚とクローゼット、食器棚も軽く布で拭いた。


「食器棚はキッチン、戸棚とクローゼットは二階でいいか」

「そうですね。それでいいでしょう」

 少ないが家具を置いたことで一階は住居らしくなった。

 一応人の住める場所になっただろうか。


 二階を寝室と定める方針は変わらない。

 ミーレスと二人でベッドを運ぶ。


 ベッドとマットレスで四往復。

 分離してなので、それぞれはそう重くもなかった。


 日本で売られているベッドの三分の一ほどしか、マットレスは厚みがなかったのだ。

 戸棚とクローゼットは入口側の壁に端から並べた。

 いずれメンバーが増えれば、そのたびに横に並べていくことにする。


 二階は家の広さそのままの広い部屋だ。

 ただし、間仕切りが可能だ。


 階段の横の壁に支柱やら板やらがしまわれている。

 どこかで仕切ってミーレス用の部屋を作ればいい。

 仕切り板を出そうと、オレは手を伸ばし・・・。


「え?」

 止められた。

 ミーレスが、オレの腕をつかんでいる。


「必要ありません」

「いや・・・でも・・・」

「いりません!」

 なにか、言葉が強い。

 目も、真剣だ。


「ベッドも、一つでいいです」

 そこまで言われれば、いかに鈍感な朴念仁のオレでも言おうとしていることに気付かないわけがなかった。


「言ったよね、オレは・・・」

 もう一度、説明しようとしたのを、止められた。


 口を、口で。

 目の前に、赤くなったミーレスの顔がある。


 え? キス?

 思考停止に陥りそうだ。

 いや、実際に陥りかけた、完全に陥る前にミーレスが離れてくれたのでなんとか踏みとどまれたが。


「ご主人様は、強引にするのは好きじゃない、と仰いました!」

 そのとおり。

 うなずく。


「わたしが、したいのなら、かまわないということでしょう?」

 ・・・・・・。

 思考がフリーズした。


 え?

 女の子の方から、頼まれる?

 そんなのありか?


 元世界にいたときなら、隕石の直撃を受けてなお奇跡的に無傷で助かる、そんなレベルの奇跡が起きでもしなければあり得ないシチュエーションだ。

 フリーズぐらいする。


「わたし、奴隷になってからずっと、そうなったときのために心の準備をしていました。そうなったときに無様に泣き喚いたりしないように。覚悟を決めていたんです」

 心の準備。

 つまり、『その』行為を求められることを想定して、どのように受け入れるかシミュレーション――妄想――していた、と。


「ご主人様との生活が始まってから、夜が来るたびに今か今かと・・・」

 それは・・・確かにつらいかも。


「商館で習ったのは、挨拶だけではありません。・・・ご奉仕の方法と、その、その行為で自分も快楽を得る技術をも教わりました。もちろん、処女ですよ? でも、身体はもう快感を知っていて・・・それで・・・」

 ああ、『商品』だっけ。

 理性的に考えようとして、失敗する。


 決壊した。

 オレの理性の防波堤が。

 こんな可愛らしい恰好、羞恥に燃える顔、もじもじクネクネするスタイル抜群の身体。

 すぐ横にベッドもある。


 これで手を出さずに乗り切れるようでは、男の子失格だ。

 オレは、メイド服姿のミーレスに抱き付いた。


 そのままベッドに押し倒す。

 いろんな意味での新生活が、スタートした。




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