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異世界で家を買いました  作者: 葉月奈津・男
『恵』編
10/404

ミーレス9 装身具

25/6/22。

ごちゃごちゃしていた文面を読みやすく。

ところどころ、に訂正を。

書き直しました。

 

「えーと、聞いていいかな?」

 朝食を食べ終えたオレは体を休めながら、前から少し気になっていたことを聞くことにした。

 マクリアの街で一番早く店を開けるレストランでのことだ。


「もちろんです。なんでしょう?」

「それ、なんなの?」

 彼女の首元を見つめて聞いた。


 あまりに異質な黒々とした首輪だ。

 白い首の半分以上が、その鉄で覆われていて見ているだけで息苦しくなる。


 タグを確認すると『隷属の装身具』と名前は出るし、その能力も『奴隷を縛るもの』とは読み出せるのだが、それ以上はわからないのだ。

 なにか、魔力がこもっているようで、それ以上の情報を読もうとすると文字化けばかりで意味をなさなくなる。

 聞くべきかどうか散々迷っていたのだが、聞かないことには何もわからない。

 いったい、どんな答えが返ってくるのか。


「これ、ですか」

 鉄の首輪に指で触れて、ミーレスはわずかに首を傾げた。


「わたしに関していえば見せしめという意味合いが強いかと。あとは、よくは知らないのですが、奴隷であることを周囲に知らせるためのものだそうです。そうしないと、トラブルのもとになることもありますから」

 見せしめ、というのは初めから言っていた「問題を抱えている」というもののことだろうな。


 これは、実際に問題になるまで聞かないと決めている。

 それよりも、トラブル?

 周囲に知らせる必要がある?

 どんなことが考えられるだろうか。


「主の代理人を装って財産を横領したりできなくする目的があります」

 ああ、なるほど。


 盗賊の懸賞金をもらった時のようなことだ。

 照魔鏡を見ないとミーレスが奴隷かどうかはわからない。

 あの場面では身分確認が必要だったから不可能だが、身元確認されずミーレスがオレのかわりに金を受け取ることが出来るとしたら?

 オレはミーレスを信じられるが、他の奴らは?

 ミーレスは信じられても、ほかの奴隷は?

 そういうことが、『この人物は奴隷』とはっきりとわかるようなら防げるわけだ。


「それと、これは模造品なのでそんな能力は付随していませんが、通常品ですと奴隷の居場所を主が把握できるようになっています。高度なものになると奴隷に罰を、つまり苦痛を与えたり、主の意のままに操れるようになるものもあると聞きます」

 GPSでの追跡が可能な動物の首輪とか、SF映画の囚人がつけさせられる電気ショック付きの手錠、ファンタジー世界の意識を乗っ取れるサークレットのようなものか。


「もしかして、それ神様が作った代物だったりする?」

 なんとなく予感がした。

 模造品とか言ってるし。


「はい。迷宮で手に入る『ドロップアイテム』の一つです」

 やっぱり。

 神様ってやつはほんとにろくなことを考えないのが多すぎる――元世界での本や映画を見ての、オレの偏見だ――と思う。


「帝都に専門店があります」

「まぁ、オレには用なんてないけどな」

 ミーレスのことは信用しているし、これから手に入れるだろう奴隷たちともちゃんと信頼し合える関係を作っていくつもりだ。

 神様のおもちゃになんか用はない。


「そう、ですか・・・ですが。いえ、そうですね。結構高額だそうですし、必要というわけでもないですし」

「?」

 あれ?

 奴隷を縛り付けるためのものの話をしているはずなのに、なぜか物欲しそうな表情と言動のような?


「んーと。もしかして、ミーレスにとってもメリットがあったりするものなの?」

 そんなバカな、と思うが話を聞いただけのオレの解釈が、実際にこの世界で生きてきたミーレスのそれとではずれているかもしれない。

 なにしろ『異世界』なのだ。価値観が違っていて当然、確認すべきだろう。


「詳しくは知らないのですが、主との絆が高まるようなものもあるそうです。ただ、そういうものは非常に希少で高いとか」

「帝都に行くぞ」


 スチャッ!

 オレは即座に立ち上がった。


 キビキビと歩く。

 歩きながら、代金に丁度の貨幣を用意する。

 ミーレスが慌ててついてくるし、店員も投げるようにして支払った貨幣を必死に数えている。


「あ、ありがとうございましたぁ!」

 店員の挨拶が背中を追いかけてきたが、もはやどうでもいい。


 ミーレスとの絆が高まる?

 そういうものがあるのなら、話は別だ。

 意識を乗っ取るとか洗脳と同義なのかもしれないが、それは実際にものを見て調べればいいことだ。




 マクリアの商人ギルドから入って、帝都の冒険者ギルドに出る。

 そしてそこから歩く。


 移動料は取られるし、時間がかかる。

 何とかならないものか。


 奴隷用装身具の店、というものの場所はリティアさんが調べてくれた。

 なんでも、奴隷を買えるような金なんてないくせに、そのオプションにはやたら詳しい同僚がいるのだそうだ。


 どこの世界にも、フェチやマニアの種は尽きない、ということだな。

 連れてったら便利かも、とか言われたが断った。


 どのみち『鑑定』ができるわけではないだろう。

 あくまでも、過去の装着者の情報から抽出した都市伝説でしかない。

 それなら、自分で調べる方が安全だ。



「ここか」

 帝都の東部区画外縁。

 中心部から見て、東の端。街壁に寄りかかろうとしているかのような位置と状態で、その店は建っていた。


「いらっしゃいませ」

 傾いた店の扉を押して入ると、びしっとした感じの男性店員に出迎えられた。

 背広ではないのに背広に見える。

 なにか、銀行員のような印象だ。


「当店では、奴隷用の装身具を扱っております。業界でも老舗の一つと自負いたしておりまして、必ずやご希望の商品をご用意させていただけるかと」

 折り目正しく、挨拶された。

 思わず気圧されてしまいそうな、礼儀正しさだ。


 奴隷用の装身具、なんて元世界でなら確実にいかがわしさ爆発の店だと思うのだが、ひどく正当なものの感じがする。

 ちらっと店内に目を走らせるが、商品らしきものは見当たらなかった。


「どんなものがあるんですか?」

「どのような、と申されてしまいますと答えに困ります。用途、使用する者の種族などなど分野は多岐にわたっておりますので、すべてを網羅するとなりますと時間がかかってしまいます」

「あー、そうか。それはオレが悪いな」

 ファッションブランドの店に行って、「センスのいいものをくれ」とでも言っているようなものだ。

 服が欲しいのか、バックか、靴かぐらい言えよ、ということ。


「オレが見せてほしいのは・・・女性用だ」

 ミーレスを指し示して言う。

 男性店員は、「そうでしょうとも」というように大げさに頷いて聞いている。


「苦痛を与えるとか、意のままにしたいわけじゃない」

「懲罰用ではなく、愛玩用でもなく、封縛用でもない、と」

 理解していますよ、とばかりに大きく頷く。

 そのうち首が取れやしないかと不安になるほどだ。


「利用目的を教えていただけますか? 彼女の」

 他に何かなかったかと、検索ワードを考えていると逆に聞かれた。

 利用目的?


「肉体労働、家事全般、性的なご奉仕・・・いろいろとございますが?」

 性的?!

 ついつい食指が伸びそうになったが、踏みとどまる。


「彼女は迷宮探索のパーティメンバーだ」

「さようでございましたか。だいぶ絞れてきたようです。では、いくつか見繕ってまいりますので、そちらでお待ちください」

 商品のある場所に誘導するのではなく、商品の方を持ってくるタイプの販売形式のようだ。

 元世界で、父と絵画の展示会について行った時も、こうだった。

 テーブルに座らされ、お茶を出されているうちに絵画が何点か持ってこられていて、一点一点見せられたものだ。

 思った通り、「そちら」には丸テーブルと椅子が置いてあり、優雅な物腰でティーポットからお茶を注ぐ女性スタッフがいた。


「どうぞ、ごゆっくりと御寛ぎくださいませ」

 ティーカップをテーブルに乗せると、軽く礼をして女性スタッフが立ち去る。


「なにか、思っていたのと違います」

「ああ、そうだね。オレもまったく同じ感じを持っていたよ」

 紅茶に口を付けながら、待つことしばし。

 男性店員が高価そうな装身具が満載のワゴンを押して、戻ってきた。


「お待たせいたしました」

 一礼して、席に着く。


「お客様には、こちらのようなものがお勧めでございます」

 サラリと手に取って見せてきたのは、真ん中にサファイヤだろうか、大粒の青い宝石のついた銀色のティアラだ。


「『監視するする額冠(青)』。装着したものの記憶を十日間保存しておき、あとで主人が再体験できるというものです」

 一瞬にして気分が悪くなった。

 監視カメラで他人の行動を録画しておいて、それをVRで再現して体験する?

 奴隷が自分のいないときに何をしているのか見たいというやつか、他人になってみたい性癖のあるやつになら面白いのかもしれないけど、オレの趣味じゃない。


「または、こちらの『伝心の腕輪』」

 次に取り出したのは、金無垢で細かな文様が彫り込まれただけのブレスレットだった。


「主人の考えを奴隷の頭に直接伝えます――いえ、操るわけではございません」

 オレの表情に注意しているのだろう。

 眉をひそめたオレに、店員は慌てて手を振った。


「戦闘中、指示を出すときに声では間に合わないことがございますでしょう? 『下がれ!』というような」

 それは確かにあり得る。


「ピンチの時、声が出せないということもあります。そんな時には便利なものかと」

 それもありうる。


 毒を受けたとか、傷を負ったとか。

 そんな時に息も絶え絶えに、血を吐きながら、声を出すのはきついだろう。

 または敵に気付かれずに撤退を命じたいとき、声で気づかれる可能性があるときとか。


「それは使えそうだ」

 身を乗り出す。

 以心伝心。

 絆が高まるというのも間違いではない機能かもしれない。


「ただ、こちらにはリスクもございます」

 眉を下げ、困り顔で店員が言葉を続けた。


「これはこちらの指輪とセットになっております。指輪を主の方につけていただき、この指輪を介して意志を飛ばすというもの」

 非常に細い金色の指輪を見せて、店員は解説を加えた。


「そのため、逆流することがございます」

「逆流?」

「装着した奴隷が死んだとき、その苦痛や恐怖が主人の頭に流れ込むのです。そのショックで命を落とすこともないわけではありません。命は無事でも指が吹き飛ぶこともございます」

「ああ、そういうことか」

 そんなことはどうでもいい。

 どのみちミーレスが死ぬような状況なら、オレも際どいだろう。

 それがなくても死ぬような場面に違いないから問題ない。


 オレには問題ないと思えることだが、一般的には違うのだろう。

 店員はオレの答えを聞かずに別のものを手に取った。


「ですので、わたくしどもといたしましては、能力がそれよりは落ちますが、こちらをお勧めしたい」

 そう言って出してきたのは、宝石そのものだった。

 丸くカットされた米粒大のサファイア、そんな感じの蒼色の宝石が二つ。

 装身具としての機能が付いていない。


「『伝声のジェム』でございます。能力といたしますれば、文字通り声を伝えます。伝心が意思を飛ばすのに対して、声を飛ばすものと言えます」

 伝心が「後ろに下がる動作のイメージ」をそのまま伝えられるのに対して、伝声は伝えたいことを「危ない、後ろに下がれ」と言葉にしないといけないというわけだ。


『伝心』の劣化版と言えそうだ。

 コンマ何秒の差だろうが、そのコンマ数秒が戦場では生死を分けるのではないだろうか?


「このジェムタイプは逆流を起こしません。また、どのようなものにもつけることができます。こちらのネックレスなどにつけてはいかがでしょうか」

 重そうな金のネックレスを手に持って、押し付けてくる。


 そうか。

 なぜジェムを勧めたかが分かった。

 こうして、高いだけで実用性のない装身具とのセット販売なのだ。

 腕輪の方には主人に覚悟がいる。

 そう伝えたあとで、似たようなことができる劣化版を高額な工芸品付きで売る。

 見事なビジネスだ。


「ご主人様。それならば、この首輪にもつけられます。それでよろしいのではないですか?」

 ミーレスも気が付いたようだ。

 そう、それでも用は足りるだろう。

 しかし・・・。


 目を彼女の首に向ける。

 重そうだ。

 そのうえ美しくない。

 あの鉄の上に宝石など付けたところで、重苦しさが消えるとは思えない。


「腕輪のほうの値段は?」

「3万ダラダになります」

 意外に安い。

 十分の一説が正しいなら、30万円。

 宝飾品とすれば低価格帯の商品だろう。


 あ、いや、そうか。

 需要が低いのだ。

 買い手がいなければ相場は下がる。

 おそらく痛めつけるタイプとか操るタイプなんかの方が需要は高いのだ。


「ジェムのほうは?」

「ジェム単体ですと、6千ダラダになります」

 六万円。

 こちらは割高感があるな。

 リスクが少ない割に役立ちそうな機能を持っているから、買い手はつくと。


「ジェムを鎧とかに付けることはできないんですか?」

 ふと気が付いて聞いた。

 高そうな工芸品なんて買わなくても、そうすればいいのでは?


「それはできません。ジェムは装身具であって、装備品ではありません。装備品につけようとしますと、ジェムの持つ魔力と装備品の魔力とが反発しあう、または干渉しあうことで不安定になります。おすすめはできません」

 魔力か。


「ということは、腕輪にジェムを付けるのもダメなんですね」

 オレの設定値変更能力で魔力0にすれば問題ないような気がしないでもないが、リスクはないほうがいい。


「そうなります」

「うーん」

 ちょっと考えてしまう。

 心情的には腕輪一択だ。


 ただ、『伝声』も惜しい。

 指示を飛ばす速度では劣るとしても、イメージでは細かな指示はできない。

 言葉での指示ができるというのは大きい。


「二つ以上の装身具を付けさせることはできるんですか? たとえば、同じ指に違う能力を持つ指輪を重ねてはめるようなことが」

「それは可能でございます。理論上は体につける余地がある限りは幾つでも、お付けいただけますし、能力は百パーセント発揮できます」

 ボディピアスなんてつけようと思えばどこにでも付けられるからな。


「ただし、同じものを複数付けても効力が二倍になるというようなことはございません」

「それは効力が強まりはしない。つまり二個付けたからと言って効果範囲が広がるとか、それこそ『伝心を二つ付けると操れるようになる』みたいなことはない、ということですよね」

「はい。さようでございます」

 男性店員は表情筋一つ動かさずに質問に答えを返してくるが、オレが考えているのはそういうことではない。


「では、彼女に伝心と伝声を付けさせて、他の奴隷にも同じものを付けた場合ならどうでしょう? 機能に影響は出ませんか?」

「それならば、影響が出ることはございません。・・・いえ、厳密には出ますか」

 おっと?


「どんな?」

「伝声を使う時。一人であれば、声を伝えようと考えるだけでよいのですが、複数になりますと『誰に』を特定する必要が出てまいります。その分、時間的にわずかではありますが単体使用の場合よりも遅れが生じることになると思われます」

 なるほど、ね。

 それは当然そうなるだろう。


 でも、彼も言うようにそれは「わずか」だ。

 しかも、複数いるうちの一人にだけ声をかける場面というのはそう多くあるまい。

 たいていは全員に対して一律に声を届けることになるはずだ。

 それならば、問題はない。


「両方もらう。だけど、ジェムを付けるのは伝心と対の指輪と同じくらい細い指輪にしてもらいたい。それだといくらになる?」

「『伝心の腕輪』のセットが3万ダラダ。『伝声のジェム』が6千ダラダ。ジェム用の指輪が二つで2万8千ダラダ。合わせまして6万4千ダラダではありますが、これからもごひいきいただけますようにとの願いを込めまして、6万ダラダでお譲りいたしましょう」

 男性店員が、素晴らしい営業スマイルになった。

 どちらか一方、3万ダラダ前後の売り上げと計算していたのが倍の売り上げになったのだ。

 営業スマイルにも気合が入ったのだろう。


「ジェムのほうをすぐに準備してまいります」

「わかった」

 ワゴンを押して引っ込んでいくのを見送り、懐の金貨袋から金貨を六枚出してテーブルにのせた。


「あの、ありがとうございます。わたしのために高価なものを使わせていただいて」

 ミーレスが頭を下げてきた。


「使わせていただいて・・・?」

 買っていただいて、じゃないのか?


「高価なものは奴隷の持ち物とは認められません。主人から借りている、そう扱われます」

 奴隷は道具か物、人権がないからな。

 着せ替え人形にどんな高価な服を着せてみたところで、人形自体に所有権はないようなものなのだ。

 奴隷制度が社会に認知されている世界であれば、それが当然ではあるのだろう。


「そっか。でも、気にするな。オレの宝物をより美しく飾ろうってだけだ。礼には及ばないよ」

「いいえ。そう思っていただけるだけで、奴隷には過ぎた幸福です」

 大真面目な顔で言ってくる。


 んー・・・そうなんだろうけど。

 なにか違う気がする。

 オレにはミーレスを奴隷として扱う気なんかない。


 いや。

 奴隷じゃなかったら、オレのパートナーになんてなってくれるはずもない女性だ。

 そういう考えは無意味だな。

 頬を染めて、嬉しそうなことを救いとしておこう。


「その首輪は、外してくれ。オレ好みじゃない」

 首輪を外せという部分で、なにか反論しそうになったミーレスだが、好みじゃないの部分で反論を諦めたようだ。

 ゆっくりと外していく。


 白くて細い首元が露わになる。

 艶やかさに、ゾクッとした。

 着ていた服を目の前で脱ぎ捨てられたような、そんな気になる。


「お待たせいたしました」

 ちょっとドキドキしてしまって困っていると、男性店員がグッと品数の減ったワゴンを押して再登場した。ワゴンの天板には柔らかそうな布を敷いた上に、腕輪と指輪のセットと、サファイアの指輪二つが載せられている。


「左腕を出して」

 男性店員に支払いを済ませて、ミーレスに言う。

 彼女は静かに左腕を、オレのほうに伸ばしてきた。

 白くて細い腕、きめ細かな肌に金色のブレスレットをはめる。


 次に、左手の薬指にサファイアの指輪をはめてやった。

 こちらの世界には結婚指輪の風習がないのだろう。

 左手の薬指にはめても、ミーレスの表情は変わらなかった。


 でも、それでいい。

 わざわざ意味を教えて、恐縮させることはない。

 オレだけがわかっていればいいことだ。


「オレの指には、ミーレスがはめてくれるかな?」

「もちろんです」

 突き出した腕をそっと取り、ミーレスがやさしく指輪をはめてくれた。


「二つとも薬指でいいよ」

 金の指輪をはめ、もう一つはどうしようかと迷ったミーレスに伝える。


「わかりました」

 指輪はこれからも増えるだろう。

 下手にあちこちにはめるとどれがどれかわからなくなるかもしれない。


 ミーレスの左腕には金のブレスレット。左薬指にはサファイアの指輪。

 オレの左手薬指には金の指輪とサファイアの指輪。

 これらが、永遠の絆をもたらしますように。



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