第64話「部屋割り」
「そろそろ眠くなってきたな……」
欠伸をしながら、俺は呟く。
すると俺の欠伸は伝染し、他のみんなも欠伸をかみ殺していた。
「そうですね、今日は朝から行動していたし疲れましたね。そろそろ休みましょうか」
そんな柊さんの提案で、少し早い気もするけれど、今日のところはそろそろ休むこととなった。
正直、昼からBBQとか色々やったおかげでクタクタだったから、今なら三秒で寝れる自信がある。
「よし、じゃあ俺の部屋はどこかな」
「良太さんは、二階の一番奥の部屋を使って下さい。母のいる部屋と二部屋あるので、部屋割りしましょう」
そこで俺は、この別荘の大体の間取りから、嫌な予感がして質問することにした。
「――えっと、二階って全部で三部屋?」
「ええ、そうですよ」
ニッコリと微笑みながら即答する柊さん。
つまり、柊さんのお母さんが一室使っているから、残りは二部屋。
そして奥の部屋を俺が使うとして――。
「なので、良太さんはお一人と相部屋して頂く形になりますね」
まるで俺の考えを先読みするように、柊さんはそう補足してきた。
――待て待て待て待てっ!!
話が違う。ちゃんとそれぞれ部屋があるって言っていたじゃないか。
「ちゃんと別れて寝る分の部屋はありますよ?」
そしてまた、そんな俺のクレームすらも柊さんに先回りされてしまう。
もしかしたら柊さん、メンタリストか何かかもしれない……。
もしくは前世が〇休さんだ。
「成る程、話は分かったぁ!!」
すると突然、何かを察したように楓花が立ち上がる。
「ここは、妹のわたしが良太くんと相部屋するから、他の三人はもう一部屋使うとよろしい!!」
そして何故か勝ち誇ったかのように、そう宣言をする楓花。
まぁ百歩譲って相部屋しなければならないとしたら、それが順当と言えるだろう。
しかし、勝手に決められるのが気に食わないのだろうか、星野さんと如月さんはそこか不満そうな表情を浮かべる。
そして柊さんだけは、そんな楓花を見て楽しそうにコロコロと笑っているのだが、それでも今回の柊さんは同意しなかった。
「ブラコン? 恥ずかしくない?」
「そ、そうです! 民主主義に乗っ取って、ここは公平にジャンケンすべきですっ!」
如月さんと星野さんの抗議に、楓花は顔をしかめる。
「は、はぁ? 恥ずかしくないし、それを言うなら兄妹でもない相手と寝る方が恥ずかしいでしょ!」
そしてここで、楓花から年に一回あるか無いかの正論パンチが飛び出す。
その正論に、如月さんと星野さんは言い返せず、ぐぬぬと言葉が詰まってしまっていた。
「でも、それじゃ面白くないじゃないですか」
こうして楓花の正論パンチで幕を下ろそうとしていたこの不毛な争い。
しかし、まさかの柊さんから一石が投じられたのであった。
「いや、こういうのは面白いかどうかじゃなくて」
「良太さんにも聞いてみましょうよ。どうです? 公平にジャンケンで部屋分けしたいと思うんですけど?」
急に話を振られた俺は困惑する。
どうと言われても、こんな四大美女の誰かと俺が必ず一緒の部屋で寝るだなんて、そんなの…………、
「はい、ジャンケンにしましょう」
俺が即答すると、楓花はまるで信じられないものを見るかのように俺を睨みつけてくる。
しかし残りの三人は、嬉しそうにハイタッチをしていた。
まぁ、正直に言って下心が無いと言ったら嘘になるが、こういう場面ではこういうゲームは付き物なのだ。
だから、そんな普通の男女がするような遊びを、特別な彼女達にも楽しませてあげたい。
そんな名目のもと、俺はまさに一石二鳥の提案を二つ返事で飲み込んだのであった。
――まぁ、いざとなればここで寝ればいいしな。
俺だって、いざこんな美少女と一晩共に過ごすなんて考えただけで無理そうなのだ。
だからここには丁度手頃なソファーもあるし、一晩過ごすには十分だと思った俺は、眠たさで思考が低下していたこともありそんなに深くは考えていなかったのであった。
◇
「ジャンケンポン!」
四人のジャンケンが行われる。
みんな何を思っているのかは分からないが、並々ならぬ気迫が感じられた。
それが俺と相部屋になるためだったら光栄な事だが、仮にもし逆の意味だったらと思うと中々ダメージがでかい。
そして、普通に考えてそれは後者の方が濃厚であり、今更ながら何故俺はこんなゲームを受け入れてしまったのかと少し後悔してしまう。
――やっぱりソファーで寝るかなぁ……。
そんなことを考えながら俺は、その気まずいジャンケンの行く末を見守った。
「っしゃあ!!」
そしてジャンケンの結果、勝ったのは楓花だった。
結局俺の相部屋は楓花に決まり、それであれば俺としても気兼ねが無いなとほっと胸を撫でおろす。
「まぁ当然よね! わたしならこの間も一緒に寝たし、良太くんも平気でしょ?」
しかし楓花は、恐らく無自覚だとは思うがとんでもない言葉を口にする。
たしかにこの間は一緒に寝たけれど、それは本当に睡眠を取るための寝るであって、変な意味の寝るでは断じてない。
それでも、さっきの言い方だとそうは聞こえたかもしれないし、実際他の三人のリアクションからして非常に不味い感じだった――。
「ふ、楓花さん?」
「ふえぇ……」
「ギルティ……」
三人のリアクションが、楓花の思っていたそれじゃないことに首を傾げると、ようやく自分の生み出した誤解に気付いたのか顔を真っ赤にする。
「ね、寝たって言ってもそれは! ちょ、ちょっと添い寝しただけであって、変なあれじゃないからっ!」
そして、慌てて訂正をする楓花。
その言葉で無事誤解は解けたのだが、尚も顔を真っ赤にする楓花は俺の方を睨みつけてくる。
「そうだよねっ! 良太くんっ!」
「あ、ああ、勿論」
「そ、それじゃ行くよ! み、みんなおやすみっ!!」
そして楓花は、そう言って俺の腕を掴むと、そのまま照れ隠しをするように二階の部屋へと引っ張るのであった。
そんな楓花の反応が少し面白くて、俺はみんなから十分離れたところで楓花にだけ聞こえる声でそっと囁く。
「あの夜はどうも」
「シャラップ!!」
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