第63話「順番」
それからも続いたババ抜き対決。
しかし俺は、その後は一位でもビリでもないという、何とも面白みのない鳴かず飛ばずの結果で終わった。
そうなると、四大美女と呼ばれる四人の美少女達による罰ゲームという名の滅ぼし合いになったわけだが、如月さんの三回回ってワン、柊さんの語尾に『ピョン』、そして楓花の腕立て三十回と、中々普段は拝むことの出来ない彼女達の姿や言動を楽しめたのは良かった。
ちなみに星野さんはというと、顔に出過ぎるというハンデを克服すべく、二戦目からはずっとニコニコ微笑んでいたおかげで、心を読まれることなく無敗を誇っていた。
そんな星野さんとビリにならない俺に対して、残りの三人は露骨に不満そうにしていたのだが、こればっかりは勝負だから仕方がなかった。
そうこうしていると、あっという間に夜の九時を回っていたため、盛り上がったトランプ対決は終了となった。
「では、そろそろお風呂にしましょうか。よければ良太さん、お先にどうぞ」
「ん? ああ、じゃあ遠慮なくそうしようかな」
柊さんの提案に、断る理由のない俺は、言われた通りありがたくお先にお風呂を頂くことにした。
まぁよくよく考えれば、彼女達の入ったあとのお風呂はちょっと気を使うし、ここは先に入らせて貰うのが正解だった。
こうして俺は鞄から寝間着を取り出すと、お風呂場へ向かう。
柊さんに言われた通り、廊下の一番奥の扉を開けると、そこには俺の想像の三倍は広いお風呂場があった。
ちょっとした温泉みたいになっていて、これなら全員一緒にでも入れそうだなと思いながら、俺はそんな広々としたお風呂を独り占めして堪能したのであった。
◇
お風呂から上がると、四人は何やら相談しているようだった。
一体何事だろうと近付くと、一斉に四人ともが俺の方を振り向く。
「……な、なに? どうした?」
そんな四大美女全員から、同時に向けられる謎の圧。
慣れている俺でも思わず怯んでしまうのだから、初見の人間なら泡吹いて倒れるんじゃないかってのは流石に言いすぎ――でも無いのかもしれない。
「だから、ここは妹であるわたしが次に入るのが順当でしょ?」
「わたしも早く汗を流したいです」
「わ、わたしもっ!」
「どうしましょうかねぇ」
なるほど、一体何事かと思えば、次にお風呂に入る順番を決めていたようだ。
――そんなに揉めることでも無いと思うけどなぁ……。
それでも、そんなちょっとしたことでも思い思いに話し合っている彼女達の姿を見ると、何だか良いなって思えた。
境遇が同じだったこともあるけれど、きっとそうじゃなくても彼女達の相性が良いのだろう。
「では、四人で一緒にお風呂入りませんか?」
「え、やだよ狭いじゃん」
「そんなことないですよ。ね、良太さん?」
「ああ、うん。広くて快適だったよ」
「ということなので、行きましょう」
そう言って出て行く柊さんに従うように、残りの三人も慌てて続く。
こうして、結局最後は四人仲良く一緒にお風呂に入るところも、やっぱり相性が良いよなと俺は笑って四人のことを見送ったのであった。
◇
それから一時間ちょっと経っただろうか。
お風呂から上がった四人が部屋へと戻ってくる。
「お待たせしました」
最初に戻ってきたのは、柊さんだった。
まだその綺麗な黒髪は乾ききっていないようで、その濡れた艶やかな髪と、お風呂で少し火照った様子の柊さんの姿は、何て言うか言葉で上手く言い表せない程ヤバかった。
大和撫子ここに有り! って感じだ。
「さっぱりした」
「そうですね、ふふ」
次に戻ってきたのは、如月さんと星野さんだった。
この二人も柊さん同様、お風呂上りということもあって普段以上に色気が増していて、とにかくヤバかった。
もうヤバいという感想しか出て来ず、軽く語彙力が消失寸前なのだが、ヤバいもんはヤバいんだから仕方がない。
そんなタイプの違う美少女三人のお風呂上がりの姿に、俺はもう目の保養を飛び越えて最早尊さすら感じられた。
「――良太くん、みんなのこと見すぎだから」
そして最後に、そんな言葉と共に部屋へ戻ってきたのは楓花だった。
「み、見てないだろっ!」
「ふん、どうだか」
慌てて俺は否定したものの、正直今回のはガッツリ見ていたから分が悪かった。
ちなみにそんな楓花はというと、流石に兄妹ということもあり安心の見慣れたものだった。
しかしそれでも、他の三人と並ぶ楓花を見ていると、やっぱり自分の妹ながら、彼女達と同じ四大美女の一人なんだなということを分からされてしまう。
決して見劣りしない自分の妹に、何だか普段とは違う感覚を抱いていると、そんな楓花は俺の元へトコトコと歩み寄ってくる。
「――だから見すぎだって」
「あ、ああ、すまん。つい――」
「ついじゃないし、セクハラだから」
そう言うと楓花は、俺を監視するように隣にくっついて座ってきた。
お風呂上りのため、楓花から香る甘いシャンプーの香りが鼻孔を擽る。
そんな普段と違う状況のせいか、俺は何故か相手は妹だというのに少しドキドキとさせられてしまう。
「お、おい楓花、近いぞ」
「別にいいじゃん。いつもこうしてるんだし?」
全然離れようとしない楓花に困る俺。
そして当然のように、人前でくっつく俺達兄妹二人に対して、詰め寄ってくる他の三人。
「二人共、くっ付き過ぎ」
「良太さぁん……」
「本当に、ご兄妹仲が宜しいですね」
「へんっ、兄妹だからこれが普通なんですー」
こうして、再び言い合いを始める四人。
その結果、俺はお風呂上がりの四大美女に取り囲まれながら、目のやり場に困るどころか、目のやり場がなくなってしまうのであった。
時計を見ると、夜の十一時を少し回ったところ。
もうすっかり夜中ではあるものの、どうやらこの宿泊このまま終わりそうにもないことを、俺は何となく悟ったのであった。
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