第58話「GW開始」
あっという間に週末がやってくる。
つまり今日から、いよいよGWが始まる。
ちなみにGWの約束だが、善は急げということで初日から柊さんの家の別荘へ遊びに行かせて貰うこととなった。
そのため、本当は連休初日ぐらい昼までゆっくり寝ていたい気持ちもあるのだけれど、朝九時に駅前へ集合の約束をしているため、朝早くに起床する。
そして起きた俺は、まず初めに隣の楓花の部屋を訪れる。
何故かと言えば、どうせまだ寝ているだろうからだ。
楓花の部屋へ入ると、案の定楓花はベッドに上で大の字に寝転びながら寝息を立てていた。
枕元にはスマホが投げ捨てられており、恐らくアラームをセットしていたのだけれど、寝ながら止めてしまったのだろう。
よだれを垂らしながら幸せそうに眠っている楓花の姿は、学校でのそれとは全く異なっているのであった。
しかし、今日は予定があるし、どうせ楓花は俺よりも支度に時間がかかるため、俺は楓花の身体を強めに揺すって無理矢理起こしてやる。
「……うー、もうちょっと優しく起こせないのー?」
「お前ちょっとやそっとじゃ絶対に起きないだろ。ほら、遅刻するぞ? それともお前だけ来ないか?」
「うー……いいよ別にわたしが行かなくても……それは駄目! 絶対駄目!!」
いつも通り、睡魔に負けて二度寝しようとする楓花だが、急に我に返って上半身を起こす。
「はい! すぐに支度しますっ!」
「よろしい、早くしろよ」
「ラジャー!!」
びしっと敬礼する楓花。
こうして楓花も寝坊することなく、今日という日のお出かけに間に合ったのであった。
それにしても、楓花が友達と出掛けるなんていつぶりだろうか……いや、もしかしたらこれが初めてかもしれない。
物心ついた頃から楓花は、周囲と馴染めていなかったのか、思えばいつも俺の側にベッタリだったように思う。
まぁ別にいじめられてたとかそういうわけではないし、それどころか楓花はその類稀なる容姿のおかげで幼い頃から人気者だった。
それでも楓花は、そんな同級生達には興味がないのか、常に一定の距離を置いて付き合っていた。
だから今日、こうして友達と一緒に出掛けることになった楓花が見れることが、俺は兄として内心めちゃくちゃ嬉しかったりするのだ。
そしてそれは、楓花に限らず他の三人もきっと同じだろうから、俺は今日から始まるGWが、四人にとって楽しい休日になればいいなと思っている。
◇
「おはようございます。良太さん、楓花さん」
駅へ到着すると、先に到着していた柊さんが声をかけてくる。
大き目の麦わら帽子に、白地に青い花柄のワンピースを着ており、そんな普段の制服姿とは違う柊さんの姿に俺は思わず見惚れてしまう――。
その綺麗な黒髪と相まって、お嬢様という言葉がピッタリくる程、その姿はただただ可憐で美しかった――。
「――良太くん、見すぎ」
「いや、み、見てないから!」
相変らず鋭い楓花のツッコミに少したじろぎつつも、無事に柊さんと合流することが出来た。
ちなみに今日の楓花はというと、白のシャツにスキニージーンズという動きやすい服装をしているのだが、それでもそのスタイルの良さから、その大人っぽい服装もかっこよく完璧に着こなしているのであった。
本当に、今朝のゆるキャラからの振れ幅がエグい。
ちょっと意識すれば、これ程ちゃんとするのだから、普段からこうあって貰いたいものだ……。
そんな四大美女が二人、私服姿で一緒にいれば嫌でも目立ってしまう。
周囲を見回せば、二人の姿に釘付けになってしまっている人が沢山いるのが分かる。
まるで芸能人が現れたかのように、その容姿だけで注目を浴びてしまうのだからやっぱり凄まじい……。
「あ、あの! 遅くなりましたぁ!」
そして少し遅れて、星野さんが小走りでやってきた。
星野さんは、白のブラウスにサックスブルーのロングスカートを合わせており、シンプルながらも女の子らしくて可愛らしい服装をしていた。
そんな星野さんを一言で例えるなら、清楚の一言に尽きる。
元々ハーフで、お人形さんのような美しさを持つ星野さんだからこそ、その私服姿は似合い過ぎてて完璧だった。
「あ、あの、変……でしょうか……?」
「い、いや、そんなことないよ。めちゃくちゃ似合ってるし、可愛いと思う」
「そ、そうですか。えへへ」
俺が褒めると、本当に嬉しそうに微笑む星野さん。
そんな美少女の純真無垢な微笑みは、思わず崇めたくなってしまうぐらい聖女様をしているのであった。
「遅れました」
そして最後に、駅の改札から出てきた如月さんが合流する。
如月さんは、黒のレースの付いたブラウスに白のパンツを合わせており、そのカジュアルな服装はとてもよく似合っていた。
特徴的なその銀髪に白い肌は、カジュアルな服装と意外としっくりくると言うか、そのギャップみたいなものも如月さんの魅力を引き立てているように感じられた。
そして、俺の視線に気が付いた如月さんは、じーっと俺のことを無表情で見ながら近づいてくる。
「――どう? 似合うかしら?」
少しだけ恥ずかしそうに、そんなことを聞いてくる如月さん。
だから俺は、心の底から「もちろん」と答えると、嬉しそうにふんわりと微笑む。
その微笑みは最早反則級に可愛くて、思わず目を逸らしてしまうと、またしても楓花がそんな俺を睨みつけてくるのであった。
こうして、ついにこの町の四大美女が私服姿で合流した。
そんな圧倒的美少女である四人が揃えば、最早必然とも言えるだろう。
まるで客寄せパンダがごとく、気が付けば周囲には人だかりが出来てしまっていた。
そのほとんどが、芸能人か何かと勘違いしている様子だった。
しかしその中には、たまたま居合わせたであろう同世代の男の子達が、驚愕の表情を浮かながらそれはもう分かりやすく驚いていた。
四大美女がGWに集結しているのだ、あんな風に驚くのが当たり前と言えるだろう。
「では、揃いましたし行きましょうか」
「どうやって向かうの?」
「車を用意してあるので、それで向かいましょう」
そう言って歩き出す柊さんに、俺達は言われたままついていく。
すると駅の駐車スペースに、一台だけ明らかに高級そうな大きなワゴン車が止まっていた。
「あら、お友達揃ったかしら?」
「ええ、お母さん。車の中で紹介するわ」
そして、そのワゴン車から一人の女性が降りて来たかと思うと、俺達に向かって「どうも、麗華の母です。今日はよろしくね」と自己紹介してくれた。
どうやら今日は、柊さんのお母さんの運転で目的地まで向かうようだ。
それにしても、第一印象は綺麗なお姉さんだなといった感じで、最初は柊さんのお姉さんかと思った。
でもまさか、それがお母さんだとは誰も思わなかったようで、俺に限らず他三人もその美しさにとても驚いていた。
このお母さんから柊さんが生まれたというなら、それはもう納得するしかなかった――。
こうして荷物を荷台に乗せると、車の中へと乗り込む。
助手席には柊さんが座り、残りの四人が後部座席へと座る形となったのだが、何故か他の三人は顔を見合わせながら中々乗り込もうとはしない。
「どうした? 乗らないの?」
そんな彼女達を不思議に思いつつ、俺はそう声をかけながら先に乗り込むことにした。
すると普段は控えめな星野さんが、まるで俺から離れないように続いて車に乗り込んでくるのであった。
そして、そんな星野さんに楓花と如月さんの二人が慌てて続く。
さっきの間は何だったんだという感じだが、結果一番後ろの席には俺と星野さんが一緒に座り、その前列に楓花と如月さんが座る形となった。
心なしか、楓花と如月さんは不満そうな表情を浮かべており、それに対して星野さんは、まるで勝ち誇るかのように大層ご満悦な様子だった。
「では、向かいましょうか」
そして、そんな俺達を前から面白そうに眺めていた柊さんの一言で、車は発進する。
こうしていよいよ、俺達のGWが始まるのであった。
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