第53話「どうなる」
道中、俺は若干の気まずさを感じながらも、無事に喫茶店の前までやってきた。
本当にここまで連れて来てしまったのだが、本当に良かったのだろうかと今更になって少し不安になってくる。
しかし、ここで俺が少しでも不安そうな態度を見せてしまっては、きっと彼女はもっと不安になるに違いない。
だから俺は、極力普通を装いながら彼女に声をかける。
「どうする? このままみんなに紹介しちゃえばいいかな?」
「え、ええ――。でも、初対面なのだけれど大丈夫かしら」
案の定、不安がる彼女――。
それは無理もなく、俺だって逆の立場なら不安に違いない。
だから俺は、さもこれから待っている子達はみんなフレンドリーで良い奴さ! ハハハ! という欧風のノリを意識して返事をする。
「あはは、大丈夫だと思うよ」
うん、我ながら自然に出来た――はずだ。
実際は、フレンドリーで良い奴というのは間違ってはいないが、この野生の女神様同様、全員クセの塊みたいな人しかいないのだが……。
とりあえず、ここで立ち話しをしていてもきっと良いことなんて何一つないだろうと、もうここまで来た以上店内に入る以外の選択肢はないと腹を括った俺はそのまま店内へ入る。
一瞬彼女が何か言いたそうな顔をしたことには気が付いたのだが、申し訳ないのだけれど無視をさせてもらった。
「あ、どうも」
「お疲れ様です、良太さん」
いつもの席へと向かうと、そこには星野さんと柊さん二人の姿があった。
そして二人は、俺の連れて来た野生の女神様の姿を見て驚いているのが分かった。
予め連れて行くことは宣言していたのだが、心構えをしていても驚く存在。
それこそが四大美女たる所以なのである。
それは四大美女同士でも例外ではなく、その証拠に女神様の方も二人の姿に驚いているのが分かった。
お互いの姿に驚き合う美少女達。
そして、それに挟まれた俺はまさしくハーレム状態――なんてことは当然なく、軽くパニック状態だ。
――さて、これからどうしたらいいんだぁ……?
完全にノープランだった俺は、とりあえず座って会話をするしかないよなと促すタイミングを窺う。
しかし、そんな俺達に背後から声がかけられる。
「……ねぇ、どちら様?」
不機嫌そうなその声が、誰の声かなんて振り返らなくても分かった。
振り返ればそこに立っていたのは、やっぱり楓花だった。
楓花は腰に手を当てながら、それはもう分かりやすく不機嫌そうに女神様を見ている。
予め連絡しておいただろ……と思いつつも、そう言えば楓花だけは反応がなかったことを思い出す。
ハンカチを握りしめていることから、どうやら一人だけトイレにでも行ってスマホを見ていなかったのだろう。
とりあえずこれじゃ埒が明かないと思った俺は、再び普通を装って答える。
「ん? ああ、お前達に用があるらしくて連れて来たんだ」
何も嘘を付いていない。彼女がここにいるのは、楓花達に用事があるらしいから連れて来たのだから。
ここで下手に嘘をついてバレた時のことを考えれば、こういう時は絶対に素直に答えた方がいいのだ。
「ふーん、そう。何か用ですか?」
すると楓花は、俺から彼女へターゲットを移す。
一体何の用といった感じで、尚も不機嫌そうに質問する楓花。
そんな謎の圧を向けられた彼女は、出会った時の無表情はどこへやら驚いているのであった。
「――え、えっと、あなた達はその……四大美女と呼ばれている方々で合ってますか?」
「は? 四大美女?」
「え?」
何を言ってるんだというように返事をする楓花に、予想が外れたように驚く彼女。
しかし、彼女の思っている通り、こちらの楓花はこれでもその四大美女と呼ばれる美少女の一人で合っている。
合っているのだが、そういうのに全く興味のない楓花は、もうそう呼ばれていることなどは頭の中から綺麗サッパリ消えてしまっているのだろう。
何を言ってるのというように、小首を傾げる。
まさかの当事者の無自覚には、質問した側も驚くしかないだろう。
だからここは、楓花によってこじれた状況を整理するため咄嗟にフォローに回る。
「ごめん、こいつはそういうのに疎いというか何というか……貴女の認識で間違いないよ。三人共そう呼ばれています。――それで、そろそろ自己紹介して貰ってもいいかな?」
「え? そ、そうですか。では――わたしの名前は如月愛花。東高に通う一年生で、皆さんと同じく四大美女の一人です」
俺の言葉に、ほっとする如月さん。うちの妹がすいません……。
こうして如月さんの自己紹介が済んだところで、星野さんと柊さんは受け入れるように微笑んでくれた。
しかし、楓花だけは事情が汲み取れない。
自己紹介をされても、そもそも四大美女なんて自覚のない楓花は、何故か俺の方をチラチラ見つつ尚も警戒の姿勢を崩さない。
「……あの、何だかよく分からないんだけど、それで用とは?」
「ああ、ごめんなさい。一度、貴女達に会ってみたかっただけなんです。そしたら、彼がここにいるって案内してくれたので……」
探る探る話す如月さんの説明を受けて、楓花は俺の方を向く。
そして目を細めながら、それはもう呆れた様子で口を開くのであった。
「――本当に、良太くんは次から次へと」
「いや、困ってるみたいだったから話を聞いてみただけだよ。そんな怒ることでもないだろ」
「ふんっ」
何がそんなに気に食わないのかよく分からないが、不貞腐れてそっぽ向く楓花。
でもまぁ、如月さんのことを嫌っているわけではなさそうだ。
何はともあれ、こうしてこの町の四大美女がついに集結したのであった――。
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