表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妹注意報!うちの妹は、干物ときどき天使!?  作者: こりんさん@クラきょどコミック5巻12/9発売!


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/83

第47話「兄の役目」

 今日も色々あったけれど、無事一日を終えることが出来た俺は、部屋で一人桜きらりちゃんの配信を楽しむ。


 今日も流れるようにゲームで失敗をしては、まるで笑いの神様でも付いているんじゃないかという奇跡の笑いを生み続ける彼女が、今日一緒にいた星野さんだと思うとやっぱり変な感じがする。


 今日は、同じVtuberグループの竹中と大人気レースゲームで競っているのだが、最後の最後で必ずアイテム負けをして、竹中に追い抜かされては惨敗するきらりちゃん。

 そんなきらりちゃんは、現在ネット上ではヤバイ配信者ということで、一部のお笑い芸人にも崇められていたりする程話題だったりもする。

 でもそんなきらりちゃんは、実際に会うと実はとてもシャイで引っ込み思案な女の子だなんて、きっと配信しか知らない人は誰も思いやしないだろう。

 所謂ネット弁慶な彼女は、今日も今日とて竹中に悪態をついては懲らしめられるという、完璧なオチをつけているのであった。


 そんな、今日も安定して笑える配信を楽しめたことに満足していると、突然部屋の扉が勢いよく開けられる。


 その音にちょっとビックリしたのだが、そこには案の定パジャマ姿の楓花が勝手に部屋に入ってくるのであった。

 口にはアイスを咥えており、手にはもう一つアイスが握られていた。


「はい、あげる」

「え、いいのか?」

「あげるって言ってるんだから、いいに決まってるじゃん」


 ――え、何? ツンデレ?


 いつもだったら、絶対に俺用ではなく自分用なのに、今日は何故かすんなりとアイスをくれた楓花。

 そのいつもと違う行動に、思わず身構えてしまう俺……。


 あの食い意地の化身のような楓花が、人に食べ物を譲るなんてどう考えてもおかしい。


「なんだ、熱でもあるのか?」

「は? 何? いらないなら食べるけど」

「いや、悪い。貰うよ」


 俺は慌てて貰ったアイスを咥える。

 その様子を見た楓花は、満足そうに一回頷くと、そのままシャリシャリと自分のアイスを全部食べてしまった。


 そしてアイスを食べ終えた楓花は、いつも通り俺の本棚から漫画を手にすると、そのままその漫画を手に俺のベッドの上で横になる。

 どうやら今日も楓花は、俺の部屋にこれから居座るつもりのようだ。


「――なに、今日も星野さんの配信見てたの?」

「ん? ああ、丁度今終わったとこだ」

「ふーん。面白かった?」

「ああ、今日も面白かったぞ」

「へぇー」


 へぇーってなんだよ――。

 しかし楓花はそれ以降、特に何も語らなかった。


 ちなみに、星野さん=桜きらりだというのは、今日の帰り道二人きりになったところで完全にバレていることが告げられた。

 たしかに特徴ある声ではあるのだが、こういう察しの良さは流石は楓花といったところだ。

 ずっと配信している俺ならまだしも、一緒に数回観ただけで分かってしまったのだから。

 これも自慢のエスパー能力の一つなのかもしれないな……恐ろしい子。


 そんな楓花は、やはりまだ星野さんに対して壁があるというか、今も興味無さそうにする辺りまだ壁があるように感じられた。

 だから俺は、丁度良い機会だと思い本音を聞いてみることにした。


「――楓花はその、星野さんが苦手か?」

「いや、そういうわけじゃないけど……」

「じゃないけど?」

「だってお兄ちゃん、今日は何してるのかなと思ったら女の子と会ってるんだもん」

「いや、それはだから、相談事があってだな……」

「それは分かってるけど……もういいよ」


 そう言って楓花は一方的に話を終わらせると、むすっと膨れながら漫画を読みだした。

 一体何がいけないのかよく分からないが、とりあえず楓花がふてくされているのは明らかだった。


 だから俺は、そんな楓花のご機嫌取りをすることにした。

 怒った楓花を宥め続けて早何年だ……?

 とにかく、この世で俺が一番楓花の扱いに慣れていると言っても過言ではないわけで、こういう時どうしたらいいのかは、もう俺の身体の隅々にまで染みつき過ぎているのだ。


「――楓花、ちょっと隣に来い」

「は? なんでよ」

「いいから」


 俺がちょっと強めにそう言うと、普段は我儘な楓花も若干しおらしくなりながら、言われた通り隣にちょこんと座る。

 それを確認した俺は、とりあえず楓花の頭を撫でてやる。


「そんなに怒るなって。ここは俺と一つ、勝負しよう」

「――別に怒ってないし。で、勝負って何?」

「楓花がこれを見て笑わなければお前の勝ち。で、笑ったら俺の勝ちだ」


 そう言って俺は、目の前に置かれたパソコンで桜きらりちゃんのチャンネルを表示する。

 そして、その中でも一番再生数の多い動画をクリックする。


 そう、この再生数の一番多い動画こそ、笑いの神様きらり様の配信の中でも一番奇跡を起こした配信として有名な動画なのだ。


 マイスペ配信で完全にイキり散らかしたきらりちゃんは、リスナーからの「モンスターが湧くから、頼むから松明をおいてくれ!」という大量のコメントを無視し続けた結果、せっかく集めた資材ごと敵キャラの爆発に巻き込まれて全ロスするという流れるようなオチを生み出しており、最早芸術の域とまで言われる程それは華麗な失敗ムーブをかましてくれるのだ。

 Vtuberファンのみならず、この動画はあらゆるところで話題になった伝説の動画と言われている。

 個人的には、これを見て笑わない人はいないと思える程笑える動画のため、俺はその動画を今回の賭けに用いた。

 すると楓花は、頭を撫でられながらも「かかってこい!」と急に乗り気になったため、こうして二人で一時間弱のその動画を一緒に観ることとなった。



 ◇



「ちょ! あはは! なによこれ、無理だってば!」

「はい、楓花の負けな」


 勝負の結果、やはり最後のオチには耐え切れず楓花の負けに終わった。

 やっぱり何度見ても笑えるその完璧なオチには、流石の楓花も爆笑してしまったのであった。


「イキってみんなのコメントを無視するから、全部振り出しに戻ってんじゃん!」

「ああ、これが桜きらりの人気がある理由なんだよ」

「あの子、実はこんなに馬鹿だったのね」


 お腹痛いと笑いが止まらない様子の楓花に、俺は満足した。

 自分の好きなコンテンツの面白さが、他の人にも伝わる喜び気持ち良すぎだろ。


「うん、今度あった時はわたしもちょっと話してみたいかも」

「だろ? これでいて、実際会うとあれだけシャイなんだぜ? 気になりすぎるだろ?」

「あはは、本当にね」


 こうして、どうやら楓花の中でも、星野さんを見る目を変えてくれたようだ。

 同じ四大美女と呼ばれる似た者同士の二人には、出来ることなら仲良くして欲しいと思っていたから、楓花のその変化に俺は満足する。


「じゃあ、この勝負は俺の勝ちってことで、楓花は罰ゲームな」

「は? 聞いてないけど」

「うん、言ってないからな」

「ずるい!」

「はいはい、じゃあ楓花にはそうだな、ちょっと肩揉んで貰おうかな」


 そう言って俺は、自分の肩をちょんちょんと指さした。

 すると楓花は、ふくれながらも俺の後ろに回って方に手を置く。

 どうやら言われた通り、肩を揉んでくれるようだ。


「良いって言うまで頼むよ」

「やだ、もう無理」


 しかし楓花は、数回肩を揉むともう嫌になったのか、そう言ってそのまま後ろから腕を回して抱きついてくる。


「お、おい、まだ全然揉んでないだろ!?」

「うるさい! こんな美少女が後ろから抱きついてるんだから、むしろ感謝しろ!」


 そう言って楓花は、後ろからぎゅっと俺を締め付けるように抱きついてくる。

 自分で自分を美少女とか言っているのはどうかと思うが、やっぱり今日はいつもと少し様子の違う楓花。

 でもまぁ、そんな妹からのスキンシップ、正直悪い気はしなかった俺は「はいはい、分かったよ」と、そのまま楓花の気が済むまで抱かれていることにしたのであった。



毎日7時・18時の2回更新!

もし良ければ、評価やブクマ頂けるととても励みになります!

評価は下の☆☆☆☆☆を、思われた数だけ★に変えて頂ければ完了です!

よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ